玉木雄一郎氏「賃上げが最大の節税になる」消費税廃止と新法人税体系の中身
【本稿のポイント】
・玉木雄一郎氏は、党代表選で掲げる経済政策の柱として、消費税の廃止と法人税の抜本改革を一体で示した。
・売上から人件費と国内投資を差し引いた額を課税ベースとし、賃上げと国内投資を最大の節税誘因にする構想である。
・消費税と法人税を合わせた税収規模を、新しい法人税体系でどう確保するかが最大の焦点となる。
国民民主党代表選に立候補した玉木雄一郎代表に、Japan In-depth編集長・安倍宏行が聞いた。3期目を目指す玉木氏が経済政策の目玉に挙げたのは、消費税の廃止と新しい法人税体系をセットにした、税制の一体改革である。狙いは、人への投資、すなわち賃上げと、国内への投資を企業に促すことにある。
本編動画
https://www.youtube.com/watch?v=nkK7wfzhp6A
■なぜ成長しても働く人の手取りが増えないのか?
成長の果実が、働く人に回っていないからだ。玉木氏は日本の最大の課題を二つ挙げた。一つは、経済が成長しても、その果実が「頑張って働いている人にちっとも回らない」こと。生産性は上がっているのに、その分が労働者に還元されず、内部留保や自社株買い、海外投資を通じて外へ向かう。玉木氏は、株主の約4割は外国人だとも指摘した。もう一つは、投資といえば海外投資ばかりで、国内投資が伸びないことである。
日本銀行が2026年8月14日に公表したリサーチラボ論文「生産性向上が賃金上昇に反映されなかったのはなぜか:わが国のデフレ期からの教訓」も、デフレ期に名目賃金の硬直性が強まり、生産性の上昇が賃金に反映されなかった経緯を分析している。玉木氏はまた、GDP(国内総生産)が伸びてもGDI(国内総所得)が伸びていないと述べた。内閣府の2026年4-6月期GDP1次速報では、実質GDPが前期比プラス0.3%と3期連続のプラスである一方、実質GDIは同0.0%だった。
■法人税をどう変えるのか?
売上から人件費と国内投資を差し引いた額を、課税ベースにするという構想だ。玉木氏は「極めてシンプル」だとして、法人税の体系を抜本的に変えることを挙げた。人件費控除と国内投資控除を設ければ、賃上げをすればするほど、国内に投資をすればするほど税負担が軽くなる。玉木氏は番組で「賃上げが最大の節税になる」と述べ、国内投資も同じく最大の誘因になると語った。
最低賃金1500円といった目標を個別に積み上げるのではなく、企業が自ら賃上げに動く仕組みに変える、という発想である。投資先についても、東京や大都市ではなく群馬県や三重県といった地域に向かえば、地方に産業と雇用が生まれる。玉木氏は、投資や取引の仕向地(目的地)によって課税対象を分ける「仕向地主義キャッシュフロー課税」という考え方を挙げ、エストニアなどに例があると説明した。国内への投資であることがきちんと証明されれば、その分を控除できるようにする、という制度設計である。
円安が続くいまは、かつて円高を理由に海外へ出ていった生産を国内に戻す好機でもあるという。賃上げが企業の成長につながり、成長がまた賃金を押し上げる。地方にも産業と雇用が生まれ、高い賃金を得られる場所ができる——玉木氏が描くのは、そうした循環である。
■なぜ消費税とセットで論じるのか?
消費税は、人件費を差し引けない税だからだ。玉木氏は、消費税の納税義務者が法人であることを踏まえ、消費税を「第二法人税みたいなもの」と表現した。人件費を控除できない税である以上、消費税が残ったままでは、賃上げを促す税制にはならない。だから現行の法人税と現行の消費税を「セットにしてガラガラポン」し、法人税体系を根本から見直すべきだ、というのが玉木氏の主張である。
玉木氏は、消費税がもともと売上税と呼ばれ、売上を課税標準とする法人税の性格を持っていたことにも触れ、シャウプ勧告以来の税制改革が必要だと述べた。世上で語られる「消費税廃止」という言葉だけが独り歩きしがちだが、玉木氏の構想は減税単体ではなく、消費税と法人税を一体で組み替える税制改革である点に特徴がある。
■財源はどうするのか?
同じ規模の税収が得られる新しい法人税体系をつくる、というのが玉木氏の答えだ。番組で玉木氏は、消費税が約25兆円、法人税が約15兆円で「合わせて40兆円ぐらい」と述べ、その規模の税収が得られる新たな法人税体系を構築すると説明した。財務省の租税及び印紙収入額調によれば、令和8年度予算額は消費税が26兆6880億円、法人税が20兆6960億円である。減税なのか、税収中立の組み替えなのか。制度設計の中身が、この構想の評価を分けることになる。
■高市政権と何が違うのか?
投資を増やして成長させるという点は同じで、違うのは成長した果実の行き先だ。玉木氏は、投資を増やしてGDPを1000兆円に伸ばすという方向は高市政権と同じだとしたうえで、いまのままでは「穴の空いたバケツ」で、成長しても果実が海外へ、あるいは株主や内部留保へ流れ、働く人に回らないと語った。
そのうえで玉木氏は、個人の手取りと国全体の手取りの双方を増やす必要があると述べる。個人については、インフレで名目所得が増えると税負担が自動的に重くなるブラケットクリープを是正し、インフレに連動する形で所得税・住民税を減税する。国全体については、エネルギー、食料、半導体、医薬品といった分野の生産基盤を国内に戻し、対外的な過度な依存を小さくする。物価が上がるのに景気が悪いスタグフレーションは「治療の難しい病気」であり、そうなる前に手を打つ必要がある、というのが玉木氏の危機感である。番組で玉木氏は、タクシー運転手から「給与明細を見て夢を語れるような社会にしてほしい」と言われた話も紹介した。
本編動画
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◆番組で語られたそのほかの論点
・[0:34]〜 出馬の決意 国民民主党を「政権を担う政党」へ
・[1:40]〜 統一地方選で自治体議員700人、2028年7月の参院選へ
・[6:41]〜 党員・サポーター組織の何が問題か
・[14:27]〜 外交 択捉へのプーチン大統領上陸に、日本は何をしたか
・[18:10]〜 ICC・赤根所長への米制裁 日本がまずやるべきこと
・[22:12]〜 来年4月の食料品消費税引き下げを「悪法」と呼ぶ理由
・[27:34]〜 自民党は割れるのか 政界再編と連立の条件
・[32:45]〜 中道・立憲・公明の3党合流をどう見るか
【よくある質問(FAQ)】
- GDI(国内総所得)とは?
- 実質GDPに交易利得・交易損失を加減した指標で、輸入価格の変動などによる所得の海外への流出入を反映する。内閣府の国民経済計算(GDP統計)で四半期ごとに公表されている。
- ブラケットクリープとは?
- インフレで名目の所得が増えると、実質の所得が変わらなくても適用される税率区分(ブラケット)が上がり、税負担が自動的に重くなる現象。玉木氏は番組で、これを「ステルス増税」と呼んでいる。
- 国民民主党代表選には誰が立候補しているのか?
- 玉木雄一郎代表と橋本幹彦衆議院議員の2人。Japan In-depthチャンネルでは橋本幹彦氏にも同じ質問を当てた回を配信している。
関連リンク
・「国民民主党代表選 主張大公開!!」ゲスト:橋本幹彦(Japan In-depthチャンネル)
写真)玉木雄一郎衆議院議員 2026年8月21日
ⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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