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.国際  投稿日:2026/11/5

米中間選挙は「Class of 2026」を生むのか――1974年との不気味な相似


執筆:宮家邦彦( キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2026#44

2026年11月2-8日

 

【本稿のポイント】

・米中間選挙、1974〜76年の選挙サイクルと2026〜28年のサイクルが「不気味なほど似て」おり、当選した若い議員たちは後世「Class of 2026」と呼ばれるだろう。

・ロシアの独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」が11月9日をもって活動を停止した。

・トランプは、中間選挙後に対イラン再攻撃をしてもイランは譲歩せず、湾岸アラブ諸国のタンカーや関連施設を大規模攻撃するだろう。

米中間選挙で「トランプ不信任」が鮮明になる中、1974〜76年の選挙サイクルに重なるという筆者の既視感、ロシアの独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」の活動停止、そして選挙後の対イラン再攻撃の行方まで、今週の注目点を、キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問の宮家邦彦氏が読み解く。

本原稿はエジプトからドバイ経由成田行きエミレーツ航空の機上で書き始めた。出張中の機上で原稿を書くのは久し振りだ。そもそも、カイロを訪れたのも実に久し振り、先方の招待なので言い方は難しいのだが・・・、47年前の1979年にアラビア語研修先として初めて訪れた「第二の故郷」の街は随分「綺麗」になったなぁ、と感じた。

2011年の「アラブの春?」革命(?)の痕跡は皆無だった。ピラミッド近くに日本の援助で建てた「新」エジプト博物館の巨大さにも驚嘆したが、一番の働き者が夜中でも町中を黙々と進む「ロバさん」たちであることも含め、変わっていない部分も少なくない・・・。やはり今回ばかりは「センチメンタル・ジャーニー」になってしまった。

それはさておき、今週筆者が最も注目するのは勿論、米国の中間選挙。エジプトから帰国した11月3日火曜日は休日、4日水曜日は米国での開票速報、ということで今週の原稿は木曜日の朝一番ということになってしまった。でも、その分、中間選挙に関するとりあえずのコメントが書けるということで、ご理解願いたい。

ここからは中間選挙について。11月2日までに報じられた「見通し」についてはNYTの記事が結構よく纏まっていたので、まずは要約の上ご紹介しよう。

1.民主党が過半数を獲得した場合、トランプ大統領をどう抑制できるか?

– 下院(民意の監督機構):政府に対する調査権や証人喚問(Subpoena)の権限を得る。高官や大統領本人の弾劾手続きを進めるかどうかの判断を迫られる。

– 上院(人事の抑止力): 上院の過半数を得れば、閣僚や連邦裁判官の指名承認を阻止できる。

– 法案審議の主導権: オバマケア(医療保険制度)の補助金再開などの法案を主導できる。大統領が拒否権を行使したとしても、民主党には政治的アピールとなる。

2.連邦政府が気に入らない選挙結果を覆すことは可能か?

– 憲法上の権限: 憲法上、選挙の管理権限は連邦政府ではなく「州」にあり、連邦政府が自らの意に沿わない結果を覆すことはできない。

– 介入の限界: 2020年にトランプ氏がジョージア州の選挙管理官に票を探すよう圧力をかけた試みは失敗した。同様の訴訟は最高裁に至っても失敗に終わるだろう。

3.選挙結果は関税政策やイラン問題に影響を与えるか?

– 関税政策:議会の勢力図に関わらず現在の政策は大きく変わらないが、中国側による対抗策により、関税政策自体の有効性は疑問視されている。

– イラン問題・軍事行動: 大統領は議会承認なしでも中東に部隊を留め置ける(戦争権限分解議の可決試みも拒否権を覆す票数が足りず象徴的行動にとどまる・・・)。

4.民主党の中間選挙勝利は2028年大統領選の勝利を意味するか?

-中間選挙は現職大統領の「不信任投票」であり、民主党自体の全国的なブランド力や評価が大きく上がった訳ではない。2026年に勝利しても民主党の課題は残る・・。

以下は筆者の個人的コメント:

この感覚は既視感(デジャブ)に近い。当選したテキサスのタラリコ上院候補の「愛と希望」に満ちたスピーチを聞き、とっさに1976年の大統領選挙のことを思い出した。ミネソタ大学で政治学を学んでいた筆者は、同州内の大統領選挙や下院議員選挙キャンペーンでボランティアとして参加していたからだ。

当時の民主党候補はジミー・カーター、南部バプティストのピーナッツ・ファーマーであり、敬虔でスキャンダルや汚い金とは無縁の男が彗星のように現れ大統領選挙に勝利した。この政治過程を実際に体験した私には、今回の中間選挙が、米国では数十年に一度となる大きな政治的転換点になり得るかもしれない、と直感した。

当時米国の内政はウォーターゲート事件で揺れていた。大統領選の2年前の夏、当時のニクソン大統領は議会による大統領弾劾の動きの前に、辞任を発表した。その数か月後に行われた中間選挙では、多くの新人議員、改革派の若いエネルギーにあふれた人々が多数当選し、「1974年組Class of 1974」と呼ばれた。

これと同様、恐らく後世の歴史家は、2026年の中間選挙で当選した若い議員たちをClass of 2026と呼ぶに違いない。筆者の既視感の理由は、1974~76年の選挙サイクルと2026~28年の選挙サイクルが、相互に不気味なほど似ていると感じたからだ。ではこの二つの中間選挙はどこが同じで、どこが違うのか・・・・。この続きは今週のJapanTimesに書いたので、ご関心ある向きはご一読願いたい。

さて次は、吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週は同研究員がまとめた「『私たちは殺された』、ロシアの老舗独立紙、ついに活動停止へ――ロシア・メディアより」を以下の通りご紹介する。ロシアの「ジャーナリスト」の悲哀と限界を知ることができ、実に興味深かった。

ロシアのメディアを取り巻く環境が、一層悪化している。「ノーバヤ・ガゼータ」は、1993年に創刊されたロシアを代表する独立系新聞だが、ついに11月9日をもって活動を停止することになった。同紙編集部は「私たちは殺された」と題する声明を発表した。

同紙はプーチン政権への批判を続け、2021年には当時のドミトリー・ムラトフ編集長がノーベル平和賞を受賞。その一方で、アンナ・ポリトコフスカヤ氏ら6人の記者・関係者が殺害されるなど、厳しい歴史を歩んできた。

2022年のウクライナ全面侵攻後は、当局の規制を受けて紙媒体による新聞の発行を停止。それでもウェブサイトなど国内での報道活動を続けてきたが、今年に入り家宅捜索や「外国の代理人」指定など圧力が強まっていた。

ロシア国内の大手メディアの多くが同紙閉鎖の事実を淡々と伝えるなか、目を引くのは、普段は政権に従順な「ヴェドモスチ」紙と「コメルサント」紙の異例ともいえる対応だ。

「ヴェドモスチ」紙は、「ノーバヤ・ガゼータ」の政権を厳しく糾弾する声明へのリンクをあえて掲載し、11月2日には同紙の創刊以来の歴史を振り返る記事も掲載した。「コメルサント」紙も声明をPDFで掲載したほか、同紙を「伝説」と評し、その終焉を惜しむ論評まで発表した。両紙の現政権に対する精一杯の抵抗なのかもしれない。

以下に、「ノーバヤ・ガゼータ」編集部の声明と「コメルサント」紙の論評の要旨を紹介する。

*なお、本コーナーでも時折紹介する「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」は、2022年に国外に脱出した「ノーバヤ・ガゼータ」の元記者らがラトビアを拠点に設立した別のメディアである。

◆「『私たちは殺された』――活動終結の声明」、10月30日付「ノーバヤ・ガゼータ」(※一部要約)

  • 私たちは殺された。11月9日、私たちは30年間暮らしてきた家の明かりを消し、サーバーを停止して、ここを去る。新聞はもう存在しない。ロシア当局と治安機関が、編集部を活動停止に追い込んだ。
  • 私たちの同僚6人は、現政権下で、責務を果たしたがゆえに殺害された。
  • 今、編集部の立ち退きを命じられ、読者からの寄付を受け取るためのシステムも停止された。銀行側は規則に基づく対応だと弁明するが、それはあらゆる組織の内部に入り込んだFSB(ロシア連邦保安庁)が押しつけた規則だ。彼らは、この国を自分たちの所有物だと考えている。
  • そして今、すべてが終わった。私たちは「キルゾーン」に追い込まれたのだ。
  • これは、私たちだけの出来事ではない。この国も社会も、私たちと同じようにとどめを刺されようとしている。国家を私物化し、権力を簒奪したFSB、法務省、検察などの手によって、軍事独裁体制がほぼ築き上げられた。
  • この国では人権と自由が根絶され、それらを守ろうとする行為が犯罪とみなされる。憲法第29条の「検閲は禁止される」という規定など、今や悪質な冗談ではないか。自らの信念を持つことが国家反逆罪とされる。しかし、本当の反逆とは、国家が自らの憲法を裏切ることではないのか。
  • 私たちは、この何年間も、まさにこのことを書き続けてきた。書くことができる限り。だからこそ、私たちは殺されたのだ。

◆「使命は果たし得なかった――外国の代理人に指定された『ノーバヤ・ガゼータ』が活動停止を発表」、10月30日付「コメルサント」(※一部要約)

  • 今回の活動停止は予想できたことだったが、それでもなお意外なものだった。予想できたのは、既に媒体登録の取り消しやウェブサイトの遮断、「外国の代理人」指定、家宅捜索、刑事事件の立件、編集部の立ち退きが続いていたこと。そして何より、今は2026年の秋だということだ。(注:現在のロシアでは、独立系メディアへの弾圧が常態化していることを皮肉った表現)
  • それでも意外だったのは、30年以上の歴史を持つ新聞は、その国の歴史的風景の一部でもあるからだ。「ノーバヤ・ガゼータ」紙は長年、ゴルバチョフ元ソ連大統領の庇護を受け、創刊20周年にはメドベージェフ大統領から激励の言葉を贈られた。プーチン大統領も、ムラトフ編集長のノーベル平和賞受賞を祝福していた。
  • そして何より、編集部には殺害された同僚たちの肖像写真が掲げられていることを人々は覚えている。これは単なる新聞ではない。伝説なのだ。
  • ジャーナリズムは、真実を明らかにする使命を持った、ロマンに満ちた職業に見えるかもしれない。しかし現実には、社会は自分たちにはどうすることもできない真実から目を背けようとする。
  • だが、「ノーバヤ・ガゼータ」は、まさに映画やドラマに描かれるような新聞だった。家族のような編集部、徹夜の取材、危険な調査報道。記者たちに重要な使命を担っているという実感を与え、多くの人々を鼓舞してきた。
  • もちろん、同紙にも批判すべき点はあった。しかし、今となって人々の記憶に残るのは、最も重要なことだけだ。ポリトコフスカヤとシチェコチヒン(注:前者は射殺され、後者は毒殺が疑われる同紙の記者)。ノーベル賞と外国エージェント指定。ウェブサイトの遮断と媒体登録の取り消し。
  • 2026年秋、同紙は活動を終えた。そして、伝説として残った。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

11月3日 火曜日 トルコ大統領訪韓、韓国大統領と会談

 チリ大統領訪伊、伊首相と会談

 リトアニア大統領訪独、独首相と会談

11月4日 水曜日 イスラエル大統領、各政党党首と協議開始

 南アフリカ地方選挙

11月5日 金曜日 オーストリア首相訪中、中国国家主席と会談

11月6日 土曜日 ニュージーランド総選挙

 ローマ法王、ウルグアイ、アルゼンチン、ペルー歴訪開始

11月8日 月曜日 第31回国連気候変動会合(トルコ)

 G7外相会合(フランス)

最後はガザ・中東情勢だが、最大の関心事は米中間選挙後の対イラン攻撃再開の可能性だろう。それにしても、今回の選挙でこれほど明確に「トランプ不信任」が示されるとは思わなかった。

11月3日夜のFOXニュースとの電話インタビューでも、トランプ氏はかなり「弱気」に聞こえた。相当ショックだったのだろう、「そんな状況で本当にイラン攻撃を再開できるのかね?」と思わせるような弱弱しい声だったが、果たしてどうか?先週、先々週も書いた通り、「イラン再攻撃」をやっても、イランは譲歩しない。それどころか、「待ってました」と湾岸アラブ諸国の原油・天然ガスのタンカーや関連施設を大規模攻撃するだろう。やはりトランプ氏には「名誉ある降伏」くらいしか出口はないのだが、その「名誉」すらなくなりそうな勢いである・・・。

それでも、どちらかに賭けろと言われれば、当然、「再攻撃は断行する」に賭けるだろう。なぜか?それは舞台が中東だからである・・・。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

(本稿のポイント・リードの文責:Japan In-depth編集部)

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写真:Democratic Candidate For Senate In Texas James Talarico Holds Election Night Event In Austin
出典:Brandon Bell / スタッフ / GettyImages




この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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