李在明大統領の支持率30%台、進むレイムダック化(上)
執筆者:朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
■本稿のポイント
・リアルメーターが9月21日に発表した調査で、李在明大統領の支持率は34.8%、不支持率は63.4%。
・支持率回復を狙った内閣改造で、法務部長官候補に金勝源氏、性平等家族部長官候補に龍慧仁氏という疑惑を抱える議員を指名したことが世論の反発を招き、支持率低下を加速させた。
・李大統領は9月18日の記者会見で「すべて私の至らなさのためだ」と頭を下げたが、政府の進む方向は変わらないと強調、金勝源氏の任命についても結論を示さなかった。
韓国の李在明大統領の支持率が急落、政権のレイムダック化が進んでいる。朝鮮半島情勢を長年分析してきたコリア国際研究所所長の朴斗鎮氏は、9月の世論調査で支持率が34.8%にとどまるなか、8月30日の内閣改造での長官候補の指名と、9月18日の記者会見での発言が、国民の反発をさらに強めたと指摘。支持率回復を狙った人事と会見が、なぜ逆効果になったのかを読み解く。
◆なぜ李在明政権はレイムダック化しているのか?
韓国政権は、李在明大統領の急激な支持率低下でレイムダック化が進んでいる。李大統領の支持率は、不動産政策や証券市場「賭博化」政策に続く自身の裁判取り下げを狙った人事政策などで急激に低下し、政策推進動力と方向性を失いつつある。
9月21日発表のリアルメーター調査によると、李在明大統領の支持率は34.8%、不支持率は63.4%に及んでいる。世論調査の中には支持率が30%ギリギリのものもあり、20〜30代の支持率では20%を切る状況となっている。
またニューデイリーの依頼でリサーチウエルが9月20〜21日に行った調査では、支持率が20%台直前の30.6%にまで低下し、強力な支持基盤であった40代50代ですら支持率が30%台半ばにまで落ち込んだ。
李大統領の支持率が8週連続で低下する中、与党の中からも李在明に対する弾劾という言葉まで出始めている。李在明の子飼いと言われている元総理で現在共に民主党の党首である金民錫(キム・ミンソク)ですら、盧武鉉大統領弾劾時の様相に似てきたと吐露している。
◆なぜ長官人事が支持率急落を招いたのか?
李大統領の支持率低下は、支持率回復を狙った最近の内閣改造で、国民感情を逆撫でする人事を強行しようとしたことで加速した。
法務部長官候補に「李在明大統領裁判の公訴取り下げ」を叫ぶ金勝源(キム・スンウォン)共に民主党議員を任命しようとしたことや、性平等家族相候補に議員と長官の兼職に固執し、政治資金法違反疑惑を始め様々な疑惑に満ちる極左少数党の龍慧仁(ヨン・ヘイン)議員を任命しようとしたことで世論の猛烈な反発を浴びた。
法務部長官候補の金勝源議員は、李大統領の「公訴取り下げ」を強く主張していただけでなく、新型コロナ治療薬の開発会社であるジェネンセル(GENENCELL)の臨床試験計画を迅速に処理するよう食品医薬品安全処(食薬処)に不正な請託をして株価操作に関連した問題、配偶者が代表を務める団体等で政府補助金を高額給与に当てていたとされる疑惑、セクハラの隠蔽や飲酒運転、脱税疑惑などさまざまな疑惑を抱える人物だった。だが、李大統領はそれを知りつつも自身の「裁判取り下げ」を狙い金議員を法務長官に任命しようとしたのである。
この内閣改造ではまた、極小政党である「基本所得党」(共に民主党が極左勢力を引き入れるために作った比例衛星政党)の党首である龍慧仁(ヨン・ヘイン)議員を性平等家族部長官候補に指名したことも火に油を注いだ。
龍慧仁議員は、議員職を維持したまま長官に座ろうとした兼職固執問題、党の最高委員に夫を据え、「特別党費」として約3億ウォンを党に納付した後、その資金を再び夫の給与として支給した政治資金法違反疑惑、所属していた労働党内で発生した性差別・嫌がらせ被害者を「被害を主張する者」などと表現し2次加害を加えた疑惑、公務ではないにもかかわらず、国会議員の地位を利用して金浦空港の貴賓室(VIPルーム)を利用した職権乱用問題などで青年団体や、市民団体からも猛烈に批判されていた。
結局この長官候補議員2名は、自ら辞退する形で候補から降ろされたが、李大統領の手前勝手でズサンな人事が、今一度国民の前にさらけ出される羽目となった。
◆9月18日の記者会見はなぜ反発を強めたのか?
李在明大統領は9月18日、秋夕(中秋節に一年の収穫に感謝し、先祖供養のために家族・親戚が故郷に集まる行事)前に世論を好転させようとして青瓦台(チョンワデ、大統領府)迎賓館で記者会見を開いた。
彼はまず、支持率の下落について、「地方選挙後、突然、国民の失望と懸念に直面し、戸惑ったことも事実だ」とし、「すべて私の至らなさのためだ」と頭を下げた。しかし、「私と政府は過程や方法に不十分な点があったのであって、われわれが進む方向が変わったわけではないと断言できる」と強調し開き直った。
また、「改憲での再任による長期執権疑惑」に対しては「憲法改正による私の再任は憲法上不可能であり、私自身も再任を考えたことがないと、これまで数回いくつかの経路を通じて明らかにしてきた」とし、「再任しないと約束するべきという要求は、まるで私が再任を構想していたものを断念するという構図を作ろうとする政治的攻勢だ」と語った。しかし与党「共に民主党」がそれを推進しても断固反対するとは言わなかった。
そもそもこの「憲法改正による再任疑惑」は、趙正植(チョ・ジョンシク)国会議長が7月28日の記者懇談会で「現職大統領の再任改憲問題などは結局、主権者である国民の世論と国民の選択の問題だ」と発言したことから急浮上した事案だったので、李大統領が「与党が再任を進めても断固阻止する」と言ってこそ断念の意思が本物であると認められるのだが、李大統領はそう言わなかった。
そして特に問題となったのは、焦点であった金法務部長官候補について、『国民の目線』で考えると言及したものの、「まだ最終的な結論を出していない」とし、「慎重に決定する」とだけ述べ、彼の任命を断念するとは語らなかったことだ。
(下)に続く
【よくある質問(FAQ)】
Q1. レイムダックとは何か?
A. 任期の終盤や支持率の急落などによって、指導者の政治的な影響力が弱まり、政策を推し進める力を失った状態を指す言葉。英語の「lame duck(足の不自由なアヒル)」に由来し、日本語では「レームダック」とも表記される。
Q2. 韓国大統領の任期は何年で、再任(連任)はできるのか?
A. 大韓民国憲法第70条は、大統領の任期を5年とし、重任できないと定めている。また憲法第128条第2項は、大統領の任期延長や重任変更のための憲法改正は、その改正を提案した当時の大統領には効力がないと規定する。このため、連任制を導入する改憲が行われても、現職の大統領には適用されない。
Q3. 韓国の長官(閣僚)はどのように任命されるのか?
A. 行政各部の長である長官は、憲法第94条により、国務委員の中から国務総理の提請(推薦)を受けて大統領が任命する。任命前には国会で人事聴聞会が開かれるが、国務総理や大法院長などと異なり、国会の同意は任命の要件になっていない。
Q4. 青瓦台(チョンワデ)とは何か?
A. ソウル市鍾路区にある韓国大統領の執務施設。2022年に尹錫悦大統領が執務室を龍山に移し、一般に開放されたが、現在の大統領府の公式サイトは所在地を「ソウル特別市鍾路区青瓦台路1」としている。
(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)
■シリーズ・アーカイブの紹介
本連載は、朝鮮半島の政治・外交・安全保障を専門とするコリア国際研究所所長・朴斗鎮氏によるコラムです。韓国・北朝鮮の権力構造を独自の視点で読み解き、日本のメディアでは見えにくい朝鮮半島の実像に迫ります。
トップ写真)第81回国連総会で一般討論演説を行う韓国・李在明大統領
出典)Photo by Ryan Murphy/Getty Images
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この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長
1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統

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