緒方林太郎氏「売る人が泣く」 食料品の消費税1%、仕入税額控除を問う
執筆者:安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
- 志士の会の緒方林太郎衆議院議員は、食料品の消費税1%で最も気がかりなのは仕入税額控除だと語り、きちんと差し引けなければ「売る人が泣く」と述べた。
- 緒方氏は、税率が下がっても買い手は安くなった実感を持ちにくく、給付を担う自治体の事務負担も「とんでもない」ものになると見ている。
- 政府の大綱は、簡易課税の特例や本則課税へ移りやすくする措置を盛り込み、自治体の事務費とシステム改修費を制度の導入時に全額国費で措置するとしている。
志士の会の緒方林太郎衆議院議員(福岡9区)は、食料品の消費税率を1%に下げる政府案で最も気がかりなのは「仕入税額控除」だと語り、仕入れ分の税をきちんと差し引けなければ「売る人が泣く」と述べた。臨時国会が召集された翌日の10月6日、編集長の安倍宏行が聞いた。
▼動画はこちら Japan In-depthチャンネル「志士の会、始動 何を目指す!?」(2026年10月6日配信)
緒方林太郎氏は食料品の消費税1%の何を懸念するのか?
最も気にしているのは、仕入税額控除である(18分8秒〜)。売上で受け取った消費税額から、仕入れなどで支払った消費税額を差し引く仕組みだ(国税庁)。緒方氏は、これをきちんと差し引けなければ「売る人が泣く」ことになると語る。
政府の大綱(2026年9月15日閣議決定)は、2027年4月1日から2年間、現行の軽減税率の対象となっている飲食料品(以下、食料品)の消費税率を1%(国税0.78%と地方消費税の合計)とする。緒方氏自身は、先の総選挙で消費税減税に反対だと訴えて戦った(25分11秒〜)。
小規模事業者の申告負担はどうなるのか?
緒方氏は、政府が入れようとしている調整の仕組みを「むちゃくちゃ複雑ですよ」と語る(19分5秒〜)。仕入れにかかった費用を税の申告で全部処理できない事業者が「ものすごくたくさんいるはず」で、小規模事業者にとっては「地獄」だと評した(20分7秒〜)。
大綱は、簡易課税制度(売上高をもとに仕入れ分の税額をみなしで計算する、中小事業者向けの仕組み)を使う事業者が食料品を売る場合、仕入控除税額を売上税額と同額にする特例を設ける。実際の仕入高に税率を掛けた額を差し引く本則課税へ移って還付申告ができるよう、届出書の提出期限を後ろ倒しにし、「2年縛り」も適用しない。支援の具体的な内容は予算編成の過程で具体化するとされ、国税庁と財務省の特設サイトは、掲載内容は法案が成立した場合のものだと断っている。
緒方氏はもともと軽減税率に賛成ではない。税はシンプルでなければならず、ここまで複雑にすれば「脱税的なことができるとっかかりになりそうで、嫌なものを感じる」と語った(20分52秒〜)。自身がかつて赴任していたフランスで見た実例については、動画で確かめてほしい。
税率が下がっても店頭の値段は下がるのか?
緒方氏は、税率が下がっても、買い手が安くなったと実感しにくくなりかねないと見ている(22分37秒〜)。客から「なんで安くならないの」と言われても、「原価のコストがこれだけかかっている」と言ったところで客はそう思わないだろう、と緒方氏は指摘する (19分5秒〜)。高市早苗首相が国会で、税が下がっているのに値段を下げなければ客から厳しい目線が向く、という趣旨の発言をしている事も問題視した。(20分7秒〜)。
仕入れ価格はすでに上がっており、税率が下がる前に今のうちに値上げしておこうという動きも当然あると緒方氏は予測する。そうなると、消費税が8%から1%になっても、手元に入るものが安くなったと実感できない可能性がある。そこは政府がコントロールできない問題だという。
所得に応じた給付で、自治体の負担はどうなるのか?
緒方氏は、残る1%分の給付に伴う地方自治体の事務の増大は「とんでもないものがある」と語る(23分5秒〜)。基礎自治体は今の政権について物を言わないだけで、「もういい加減にしてくれ」と思っているはずだという(23分34秒〜)。自民党内にも「おかしいな」と思っている人がいるはずなのに、そうした声が出てこないとも語った。
大綱によると、政府は食料品の消費税1%相当分の範囲で、所得に応じた給付「就業者負担軽減支援金」を2027年4月から導入し、市町村長が認定して支給する。費用は3分の2以上を国が負担し、残りを都道府県と市町村が半分ずつ負担する。事務費やシステム改修費は、制度の導入時に全額を国費で措置する。
志士の会とは何か?
志士の会は、衆議院で泉健太議員(京都3区)と緒方林太郎議員(福岡9区)の2人が組む会派だ(衆議院の会派別議員一覧、2026年9月28日現在)。会派とは、議員が議院の中で組む団体を指す。緒方氏は北九州市生まれで、当選5回(衆議院の議員プロフィール)。10月5日に召集された臨時国会では、消費税の法案、衆議院の定数、国会改革の3つが大きなテーマになると見ている(4分59秒〜)。
本稿で扱ったのは、約47分の配信のうち消費税をめぐる部分にとどまる。緒方氏は、泉氏との会派結成の経緯、落選した人たちの「旗頭がほしい」という声、野党第一党をめぐる力学、衆院定数削減、地元・福岡県議会の問題についても語った。語り口まで含め、動画でご覧いただきたい。
▼動画はこちら Japan In-depthチャンネル「志士の会、始動 何を目指す!?」(2026年10月6日配信)
◆番組で語られたそのほかの論点
- 臨時国会が開幕 高市首相の所信表明をどう見たか(0分11秒〜)
- 閣僚をめぐる問題 事実関係の説明を(1分42秒〜)
- 泉健太氏と志士の会 結成はどちらから持ちかけたのか(5分45秒〜)
- 落選した人たちを訪ね歩いて聞いた、旗頭を求める声(6分16秒〜)
- 中道改革連合で解消されなかった問題(11分58秒〜)
- 野党第一党となる国民民主党をどう見るか(12分57秒〜)
- 野党第一党の政治力学 2012年と2017年の総選挙(14分15秒〜)
- 国会の外で動き出す、財政の健全化を考える人たち(24分15秒〜)
- 衆院定数削減をどう見るか(27分3秒〜)
- 定数削減は憲法改正とも絡む 鳥取県の例(28分14秒〜)
- 福岡県議会の問題 地元の議員はどう見るか(36分59秒〜)
- 2人だけの会派が注目される理由(45分25秒〜)
【よくある質問(FAQ)】
- 簡易課税制度とは何ですか?対象になる事業者は?
- 簡易課税制度は、中小事業者の納税事務の負担に配慮して、売上げに係る消費税額をもとに仕入れに係る消費税額を算出できるようにした制度です。基準期間(個人は前々年、法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税期間が対象で、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。卸売業は90%、小売業は80%など、事業区分ごとに定められた「みなし仕入率」を使います(国税庁 タックスアンサーNo.6505)。
- 会派とは何ですか?政党とどう違いますか?
- 参議院の解説によると、会派は議院の内部で議員が任意に結成する院内団体で、議院の機関ではありません。2人以上の議員で結成でき、結成や解散、名称変更の際は議長への届出が必要です。委員の割当てや本会議の発言時間などが、所属議員数に応じて会派に割り当てられます。会派の機能が院内に限られるのに対し、政党は社会的な政治活動を行う存在で、構成員が議員に限られない点が異なります(参議院「会派」)。
関連リンク
- Japan In-depthチャンネル(YouTube)
- 泉健太氏回「野党再編 他党とどう組む❓」(2026年9月16日配信)
- 飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱(令和8年9月15日閣議決定)
- 消費税率引下げ特設サイト(国税庁・財務省)
- 第222回国会における高市内閣総理大臣所信表明演説(首相官邸)



























