無料会員募集中
.政治  投稿日:2026/10/5

道路予算を政治家が左右できないEBPMの仕組みを!日本経済をターンアラウンドする!40


執筆:西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表) 

【本稿のポイント】

  • 報道によると、簗和生農林水産大臣の発言をきっかけに、那須烏山市は約6,531万円から約2,426万円へ、那珂川町は約4,934万円から約2,262万円へ、道路予算が減ったと西村氏は紹介している。
  • 西村氏は、国土交通省に評価方法・優先順位付け・最終決定の過程の明確化を求め、社会資本整備総合交付金交付要綱への明記を提案している。
  • 西村氏は、政治家からの要望を記録して公開すれば職員を守ることにつながり、EBPM(証拠に基づく政策立案)の実践にもなると論じている。

NPO法人日本公共利益研究所代表の西村健氏が、簗和生農林水産大臣が2026年5月に栃木県大田原市の会合で、選挙で支援しなかった自治体の道路予算を「大幅にカットした」と発言したと報じられた問題を取り上げた。西村氏は、国土交通省の予算配分の評価基準や決定過程が見えにくいことが疑念を生むと指摘し、評価基準・プロセスの明確化と、政治家からの要望の記録・公開を提案している。

 

簗和生農林水産大臣が、選挙で自身を支援しなかった地元自治体の公共事業予算(道路予算)を恣意的に削減したと発言。それが大問題になっている。2026年5月、栃木県大田原市で開かれた会合での音声が週刊誌で流出した。自身の選挙区である栃木3区(大田原市、矢板市、那須塩原市、那須烏山市、那須町、那珂川町)のなかの那須烏山市および那珂川町を名指しし、「道路予算は大幅にカットした」「那須烏山市は前年比64%、那珂川町は54%減に」と発言したそうだ。この2自治体の首長が簗さんを支援しなかったため、その報復という意味合いと疑われている。

公共事業の選定において政治家が影響力を及ぼさない、という建前にはなっているが、政治家の影響力はそれなりにあることは否定できない。有力政治家が過去、大きな影響力を及ぼしてきた。現在、多少はそういった露骨なことも行われなくなったと思うものの、省庁は公平な評価方法で行ったうえで、鉛筆舐めなめして、いくばかは有力政治家に配慮しつつ決めているのが実情だろう。利権を追求する政治家の多大な影響力という問題を解決しないといけないだろう。

 

■政務官だった簗さんの声は渡りに船?

ほんとうに簗さんの影響力が行使されたのか、それとも、たまたまその割合になったにもかかわらず簗さんが自分の影響力の結果だ!と誇大的に言い張りたかったのか、真実はわからない。調査結果を待ちたい。しかし、簗さんは第3次安倍内閣、国土交通大臣政務官兼内閣府大臣政務官であったから、省内に人脈もあり、それなりにアプローチもしたはずだ。国交省は議員の圧力による配分変更を否定してはいるが、本当のところはどうか。

 

国交省からしたら、政治家から「増やしてくれ」など陳情されたり、依頼される中、逆に「減らしてくれ」なんてことは少ない。多くの要望があり、要求額は過大になり、一方財源は限られている。その中で、なんとか調整するという作業で苦労しているのが通常の風景だろう。そうした中、簗さんから提案があり、その結果として乗ったのではないかと?私に話す情報通もいる。さすがに恫喝まがいのことやったのではないだろう?という見方をする国会議員秘書を務める筆者の友人もいる。国交省は、簗さんからどういった要求があったのか、今回の報告をするべきだと思うし、それ以外にも政治家への忖度をはねのける行政の政策判断を明確にする時期に来ただろう。

 

■社会資本整備総合交付金って何?

社会資本整備総合交付金とは、国土交通省所管の地方自治体向け個別補助金で、簡単に言うと自治体の道路、港湾、治水、水道・下水道、海岸、都市公園、市街地整備、住宅及び住環境整備につかわれるもの。地方自治体は、地域が抱える政策課題を自ら抽出し、定量的な指標による目標を設定した、おおむね3~5年の 「社会資本総合整備計画」を作成し、国は整備計画に対して国費を配分する。那須烏山市も社会資本総合整備計画を作成、公表している。

 

【出典】那須烏山市HP「快適で安全な那須烏山市中心部におけるにぎわいのまちづくり計画」

 

令和10年までの5年で14億が全体事業費とされている。業務の流れは以下のような感じだ。

そして、問題は、大臣官房社会資本整備総合交付金等総合調整室、道路局環境安全・防災課でどのような作業をして、どのような検討をし、評価し、最終的に意思決定をしたか?ということだ。

 

報道によると

・那須烏山市:2025年度 約6,531万円 → 2026年度 約2,426万円 

・那珂川町:2025年度 約4,934万円 → 2026年度 約2,262万円

となってしまったそう。50%以上も大幅に減額されたら、複数の道路工事が着工できなくなるし、予定も狂う。なぜに?と思うのが地方自治体としては思う。

 

・他の自治体の事業が優先された

・事業の費用対効果など評価結果・点数が低く、優先順位が低かった

・当該道路の利用者数が少なく、将来予測的にも疑問がある

・その自治体の財政状況や過去の取組みからして問題があった

・過去の「中間評価」「事後評価」が甘い、計画書の中身の根拠が薄い

といった理由が考えられるが、本当のところはわからない。内定した内容においては減額の理由は明示されないらしく、そのため自治体は諦めざるを得ないそう。

 

■①評価基準の明確化と②政治家からの要求要望のオープン化で国交省職員を守れ!

そこで2つの提案だ。必要なのは①評価基準・プロセスの明確化と②政治家からの要求要望のオープン化だ。

 

①評価基準・プロセスの明確化

・評価方法・点数付けのロジック

・全体における優先順位順位付けのロジック

・個所付けの最終意思決定の決定プロセス

はどのように行ったのかを明確すべきだ。どのようなロジックなのか、点数を付けているのか、最終的にどういった議論が行われたのか、今後の業務に影響を得ない程度には明らかにすべきだろう。具体的には「社会資本整備総合交付金交付要綱」を改正して、どのような手順や方法で行うのかを内容を記載すべきだ。

 

②政治家からの要求要望のオープン化

政治家からの多種多様な要望・要求を記載しておくことだ。名古屋市役所は河村市長時代に、政治家からの要望内容を記載していた。これは職員を守ることにもつながる。

 

地方整備局から上がって来るのを、本省で取捨選択して、鉛筆舐めたりする中で、個別の要望が多少は反映されるのならまだしも、50%というのはちょっと説明がつかない。その一挙手一投足を全部「情報公開せよ」とは現実的とは思わないが、ある程度線引きが求められるはずだ。そして、この2つは国交省を守ることにもなる。のちのち「政治家の影響があったのか?忖度したのか?」を追及された場合、「そんな比例復活の1議員の要望なんて話は聞いたが、参考程度にしかしてない」ということがきちんと証明できれば、国交省の正当性を証明できるし、今後の政策検証にとっても非常に有意義になるだろう。

 

■個所付けの「本音と建て前」

国土交通省は、国の公共事業予算や社会資本整備総合交付金などの「個所付け(配分)」は、客観的な必要性や事業評価に基づいて配分されるとしている。行政機関はまっとうな公平公正な視点で実施されており、EBPM(証拠に基づいた政策形成)を実施していることを胸を張って主張する必要がある。そして、自民党も、個別の地域、案件までは、自民党の部会とか調査会で取りまとめたりはしてないし、政治家からの政府との関係性やルールを明確にする必要がある。

【出典】総務省HP「EBPM」

 

政治プロセスを昭和の高度成長のまま、多くの政治家の予算獲得競争をやっている時代ではない。そんな状態では、国交省の職員も苦労が増えてやりがいもモチベーションも落ちる。民主主義の観点からも、政府の信頼性の観点からも、政治家の過剰な影響力は排除されないといけない。財政がひっ迫する仲、賢い支出(ワイズスペンディング)のためには、行政の公平性を確立する必要があろう。高市政権に期待する。

 

【よくある質問(FAQ)】

Q1. EBPMとは何ですか?
A. 総務省の資料では、政策目的を明確化し、その目的のために本当に効果が上がる行政手段は何かなど「政策の基本的な枠組み」を証拠に基づいて明確にする取組と説明されています。(出典:総務省「EBPMの推進」)

Q2. 社会資本整備総合交付金交付要綱には何が定められていますか?
A. 国土交通省の交付要綱は平成22年3月26日に制定され、令和8年4月7日に最終改正されています。交付対象の基幹事業として、道路事業、港湾事業、河川事業、砂防事業、水道・下水道事業などが定められています。(出典:国土交通省「社会資本整備総合交付金交付要綱」)

Q3. 社会資本整備総合交付金の配分の考え方や事後評価は公表されていますか?
A. 国土交通省のウェブページに、令和8年度の「配分の考え方」と、社会資本整備総合交付金の事後評価一覧が掲載されています。(出典:国土交通省「社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金」)

(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

【出典】農林水産省公式YouTube Ⓒmaffchannel 簗農林水産大臣記者会見(令和8年10月2日) 




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."