高市支持率はなぜ下がるのかー福島伸享氏「自民党が割れるしかない」
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
・福島氏は、水戸・偕楽園の好文亭にある茶室の待合に残る徳川斉昭の言葉「巧詐は拙誠に如かず」を引き、高市首相の発信は巧みな嘘ではないかと国民が感じ始めたことが支持離れの正体だと指摘した。
・飲食料品の消費税率1%への引き下げについて、値段を決めるのは売り手であり2027年4月1日に食料品が7%下がることはあり得ないとし、そこで騙されたと気づいた層から支持率はさらに落ちると明言した。
・野党には政権を取る気概もまとまる気もないと福島氏は言う。政権交代の道は自民党が割れることしかなく、なぜ野党は自民党を割りにいかないのかと問うた。
2026年8月、Japan In-depthチャンネルに前衆議院議員の福島伸享氏が出演した。テーマは「2026年後半の政局を読む」。経済産業省を経て衆院に4期、いまは浪人の身で地元を歩き続けている福島氏の見立ては、高市政権にも野党にも容赦がなかった。高市早苗首相の支持率がじりじりと下がり始めた理由を、福島氏は地元の茶室に残る一枚の額で説明した。
▶ 本編動画(Japan In-depthチャンネル)=https://www.youtube.com/live/5qM8djuYgAo
■ 水戸の茶室に残る言葉が言い当てたもの
福島氏の地元、水戸。偕楽園の好文亭には、茶室「何陋庵」に付属した小さな待合がある。その壁に塗り込められた板の一枚が「巧詐不如拙誠」——巧詐(こうさ)は拙誠(せっせい)に如(し)かず。巧みに飾って人を欺くことは、洗練されていなくとも誠実であることに及ばない、という意味だ。明治18年刊の『常磐公園攬勝図誌』にも、茶説・茶対と並ぶ欅板として記録が残る。園を開いた水戸藩九代藩主・徳川斉昭が、茶の湯の心得として記したものとされる。
高市首相の支持率がなぜ下がり始めたのかと問われた福島氏は、この言葉を引用した。SNSへの連投、次々と公開される動画。発信は活発だが、それは巧詐ではないのか。この人は何のために、誰のために総理大臣をやっているのか——そう疑問を持たれる出来事が続いたと指摘した。
日本初の女性首相という期待で票を投じた層が、あれは巧詐だったのではないか、と思い始めている。無党派層と若年層から先に離れているのはそのためだ、というのが福島氏の見立てだ。巧詐で始まったものが真実になることは絶対にない。一枚一枚、剥がれていく、と。
■ 2027年4月1日、食料品の値段は7%下がらない
剥がれる最初の一枚が、消費税だという。
政府は7月30日、飲食料品の消費税率を令和9年(2027年)4月から2年間1%に引き下げ、その範囲内で所得連動の給付を先行導入する方針を明らかにした。高市首相は2年後には責任を持って税率を8%に戻すと明言している。
福島氏はまず、政治の技としては巧いと評価する。他の野党も減税を掲げていたのに、いまは反対と言わざるを得ない。国会で野党を批判する材料になる、と。
だが効果は別だ。消費税は名前こそ消費税だが、納めるのは事業者であり、実質は売上税である。福島氏自身、浪人中の収入で課税事業者となり、税務署長室で納税額を告げられて初めてそれを実感した。1、2か月分の生活費に相当する額だったという。
値段を決めるのは売り手である。108円で売っているものを101円に下げるインセンティブはどこにもないし、下げろと命じる法的根拠もない。しかも原材料は上がり続け、事業者は値上げを我慢している。上がるときは即座に転嫁され、下がるときは下がらない。経済学でいう価格の下方硬直性である。
だから2027年4月1日に食料品が一斉に7%下がることなど、あり得ない。むしろ、本来上げるべきだったものを取り戻すと言って値段を据え置く事業者が出てくるだろう。そのとき、最も負担感の重い年収500万〜600万円台の層が、騙されていたと気づく——支持率はそこからさらに落ちる、と福島氏は明言した。
■ 「自民党が割れるしかない」――野党への問い
では受け皿はどこにあるのか。福島氏の矛先は野党に向く。
2009年までは、政権交代さえすれば世の中が良くなるという夢があった。だが実際に交代してみて何も変わらなかったと多くの国民が思っている。にもかかわらず、いまも野党は政権交代を唱え続けている。それしか訴えることがないからだ、と福島氏は突き放す。政権交代も野党の結集も手段にすぎない。では目的は何かと問われたときに、国民の共感を得られるものがない。それが最大の要因だ、と。
合流協議も新会派も、福島氏の目には同工異曲に映る。リベラルという看板を掲げること自体が冷戦期の論理を引きずっており、右か左かのレッテルでしか語れない政治への答えになっていない。左派というだけで入る一定の票がある。その固定客で議席を確保するには、それが合理的な行動だからだ、と。福島氏は2012年以降の状況を「ネオ55年体制」と呼ぶ。
ならば、政権交代の道はどこにあるのか。福島氏の答えは明快だった。自民党が割れることしかない。自民党が少しでも崩れたり割れたりする、そこからしか始まらないし、それがなければ何も起こらない——。だからこそ、なぜ野党は自民党を割りにいかないのか、と福島氏は問う。新しい党を作る必要などない、その努力をすればいいのだ、と。
骨のある議員は、野党よりも自民党の中にいる。来年の総裁選に向けて、党内から誰が最初に飛び込む「ファーストペンギン」になるか。国民が見ているのはそこだ、というのが福島氏の読みである。
番組ではこのほか、選挙制度改革を「破れた傘の穴を塞ぐテープにもならない」と切り捨てた理由、23年間で10万軒を歩いてきた福島氏が語る本物の政治家と偽物の政治家の違い、択捉、沖ノ鳥島、ICCをめぐる日本外交への危機感まで、密度の濃い議論が続く。突発的な事態が起きたとき、高市政権はどう動くのか。最後に語られた見立ては、聞いていて背筋が寒くなる。ぜひ本編でご覧いただきたい。
▶ 本編動画(Japan In-depthチャンネル)=https://www.youtube.com/live/5qM8djuYgAo
■番組で語られたそのほかの論点
・[13:37]〜 選挙制度改革はなぜ本丸に届かないのか
・[17:38]〜 本物の政治家と偽物の政治家――1日200軒を歩くということ
・[34:05]〜 国民民主党代表選と、野党第一党をめぐる力学
・[42:00]〜 新興政党に集まる候補者たちをどう見るか
・[47:05]〜 連合と政治家の本来の関係
・[52:00]〜 択捉、沖ノ鳥島、ICC――日本外交への危機感
・[55:01]〜 緊急時に高市政権は対応できるのか
【よくある質問(FAQ)】
Q1.「巧詐は拙誠に如かず」とは?
A.巧みに飾って人を欺くことは、洗練されていなくとも誠実であることに及ばない、という意味の言葉。偕楽園・好文亭の茶室「何陋庵」の待合の壁に、茶説・茶対とともに板額として塗り込められている。番組では、徳川斉昭の言葉として紹介された。
Q2.飲食料品の消費税率1%への引き下げはいつから?
A.政府は令和9年(2027年)4月から2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる方針を示している。1%の範囲内で所得に連動した給付を先行導入し、実質ゼロ化を図るとしており、関連法案は臨時国会に提出される予定。
Q3.価格の下方硬直性とは?
A.価格は上がりやすい一方で下がりにくいという性質を指す経済学の用語。コストが上がれば速やかに価格へ転嫁される一方、コストが下がっても価格はなかなか引き下げられないことを指す。
Q4.「ネオ55年体制」とは?
A.自民党と社会党が対峙した1955年以降の政治体制になぞらえ、福島氏が2012年以降の状況を指して使っている言葉。政権交代の現実味がないまま、野党が一定の固定的な支持層に支えられて議席を確保する構図を指す。
関連リンク
・Japan In-depthチャンネル(YouTube)
トップ写真:福島伸享前衆議院議員 ⒸJapan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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