米中首脳会談で日本は蚊帳の外か 宮家邦彦氏が読む米中の思惑
執筆者:安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【本稿のポイント】
・米中は「接近」してはいない。世界各国、米国との付き合いに苦労する世界のなか、日本はうまくいっている方だと語った。
・ホワイトハウスのファクトシートには、米中が第二次世界大戦で同盟国だったとの記述と、米軍の前方展開が「自由で開かれたインド太平洋」を維持してきたとの記述が並んでいる。
・日本は、ルールに基づく国際秩序を掲げ続け、次のルールをつくる側に入ることが大事。
「米中接近で日本は置き去りにされたのか――」。首脳会談をめぐる報道が熱を帯びるなか、キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦氏は「米中接近」という捉え方そのものを一蹴する。複雑に交錯する米中の思惑、日本のメディア報道の罠、そして激変する国際秩序のなかで日本が生き残るための真の戦略とは何か。2026年10月13日配信のJapan In-depthチャンネルで、外交のリアルを読み解く。
本編動画: 「米中接近 日本は蚊帳の外!?」宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所 特別顧問)
米中首脳会談で日本は蚊帳の外に置かれたのか?
宮家氏は、日本が置き去りにされたとは見ていない。「米中接近」という捉え方そのものに否定的で、米中は日本ではなく互いを相手に、自分たちのゲームをしているにすぎないという(34分10秒〜)。
中国の狙いは、米国と戦争をせずに、中国が大国であることを米国に認めさせることだ。宮家氏は、習近平国家主席の中国は米国に譲歩する気は全くなく、かといって喧嘩を売る気もない、とみる(34分22秒〜)。
米国が大統領自ら空港で出迎えるなど中国の面子に配慮しても、中国から返ってくるのは礼の言葉くらいで、お返しはしない。宮家氏はそう見る(5分10秒〜)。
なぜ日本のメディアは「米中接近」と騒ぐのか?
宮家氏は、日本の外交報道が政局の視点に傾きやすく、報じる素材も必要だからだと見る。
外交記事は総理の動きを受けて政治部の記者が書くことが多く、基本的に政局で見る。総理が動き、そのうえで米中が会い、日本はどうなるのかと問う筋書きだ、と宮家氏は言う(3分13秒〜)。「何もなかった」とは報じにくく、報道の素材がなければ騒げない、という指摘もあった(1分19秒〜)。
宮家氏は自身のコラム(産経新聞2026年10月1日付、キヤノングローバル戦略研究所に再掲)でも、日本メディアに政治部的な「政局」分析が目立つと指摘している。
米国の公式文書には何が書かれているのか?
ホワイトハウスのファクトシート(2026年9月25日公表)には、二つの記述が並ぶ。一つは、米中が第二次世界大戦で同盟国として肩を並べて戦ったと両首脳が振り返った、という記述。もう一つは、戦後、米国の前方展開する軍事力が「自由で開かれたインド太平洋」を維持してきた、という記述だ。
宮家氏は、中国は情報戦を仕掛けているとしたうえで、この並びを、日本側が入れさせたかどうかはともかく、トランプ大統領の周辺がバランスを取るために入れたのだろうと推測する(5分10秒〜、6分51秒〜)。
日本はどこにいるのか。宮家氏は、日本にある米軍基地の価値はこの10年、20年で劇的に変わったとみる。中国が米国を脅かすほど強くなった今、日本の米軍基地なしには立ち行かないからだという(21分47秒〜)。
揺らぐ国際秩序のなか、日本はどう立ち回るべきか?
宮家氏の答えは、ルールに基づく国際秩序を掲げ続け、次のルールをつくる側に入ることだ。
自由で開かれた平等なルールは、大国にはつらくても、日本のような国には一番得だと説き、「言い続ければいい」と言い切る(37分14秒〜)。
そのうえで、今後10年、20年はむちゃくちゃなことが起きるとし、戦略を持ち、目標を見失わず、大義名分を掲げて立ち回れと述べた。各国が同じことをしており、やらなければ置いていかれる、という(38分35秒〜)。
本稿で扱ったのは配信の一部にすぎない。中盤では、ICC(国際刑事裁判所)所長への米国の制裁を、日本国内の受け止めとは別の角度から語った(9分21秒〜)。イラン情勢やホルムズ海峡、11月の米中間選挙をめぐる見立ても聞いた。宮家氏の語り口の温度や間合いは、動画で確かめてほしい。
本編動画: 「米中接近 日本は蚊帳の外!?」宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所 特別顧問)
◆番組で語られたそのほかの論点
・9分21秒〜 ICC所長への米制裁をどう見るか
・15分05秒〜 トランプ政権の台湾政策と「曖昧戦略」
・17分47秒〜 イラン情勢とホルムズ海峡
・23分31秒〜 米国のシンクタンクから出てきた新たな議論
・25分28秒〜 11月の米中間選挙の行方
・32分11秒〜 米国の政党勢力図をどう見るか
・39分19秒〜 日本の政治家は頭を使えているか
【よくある質問(FAQ)】
自由で開かれたインド太平洋(FOIP)とは何ですか。誰が提唱しましたか。
外務省の外交青書2026によると、2016年8月にケニアで開かれた第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)の基調演説で、安倍晋三首相(当時)が対外発表した外交構想です。高市早苗首相は2025年10月の所信表明演説で、FOIPを外交の柱として引き続き推進すると表明しています。
ICC(国際刑事裁判所)とは何をする機関ですか。日本は加盟していますか。
外務省の資料によると、集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪という国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した個人を、国際法に基づいて訴追・処罰する常設の国際刑事裁判機関で、所在地はオランダのハーグです。各国の国内の刑事司法を補完する機関で、関係国に捜査・訴追の能力や意思がない場合に限って管轄権が認められます。日本は2007年10月1日に正式に加盟しました。
関連リンク
・宮家邦彦「米中首脳会談どう評価するか」(キヤノングローバル戦略研究所)
・外交青書2026 第2章第1節 法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の推進(外務省)
・『高市外交の一年を診る』その3 アメリカでの超党派の支援(Japan In-depth)
トップ写真:キヤノングローバル戦略研究所 特別顧問 宮家邦彦氏(右)Japan In depth編集長 安倍宏行(左)
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。












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