[瀬尾温知]<MLB:日本人メジャーリーガーの活躍に期待>青木宣親のロイヤルズが快進撃で首位に
メジャーリーグは、レギュラーシーズンの残りが40試合余りと終盤戦に入った。 青木宣親が所属するア・リーグ中部地区のロイヤルズは8月11日、連勝を8に伸ばし、タイガースを抜いて0・5ゲーム差ながら首位に立ち、29年ぶりの地区優勝を目指して快進撃を見せている。
ロイヤルズは地区優勝した1985年にリーグ優勝も果たし、そしてワールドチャンピオンに初めて輝いた。初の栄冠を手にしてからは長期にわたって低迷、28年連続でポストシーズン進出を逃している。
そのチームが今季、突如として優勝争いをしているわけではなく、前兆はあった。若手が着実に成長し、昨季の後半戦は43勝29敗でリーグ最高勝率をマーク。86勝76敗で2003年以来となるシーズン勝ち越しを収めていた。
ロイヤルズの特徴は「スモールベースボール」。出塁した走者を犠打や進塁打で進めるなど、機動力や小技を絡める攻撃で、大量点は望めないが、着実に得点に結びつける戦い方をする。チーム戦術に適合する青木を獲得して迎えた今季、地区優勝争いをするチームにまで力をつけてきた。
ロイヤルズに3割打者はなく、打率ベスト10には1人も入っていない。チーム本塁打数も両リーグ最少の71本、150本でトップのオリオールズの半数にも届かない。長打力がなく、2桁得点が117試合でわずか4試合だけと猛打は期待できない。ただ、チーム盗塁数は102個で、両リーグ通じて唯一の3桁。足を使う攻撃で得点し、充実した投手力で守り勝ってきた。
青木はナ・リーグのブルワーズからア・リーグに変わり、慣れない投手の研究が続く試行錯誤の移籍1年目だが、リードオフマンの役割を与えられている。開幕から1番ライトで先発し、打率こそ2割6分7厘と、過去2年より2分ほど低いが、安定した守備と走塁でチームに貢献している。
チームは6月17日には首位に立っていたが、青木が左足付け根を痛めて6月21日に故障者リスト入りし、7月10日まで欠場。その間、チームは8勝10敗と調子を落として、首位をタイガースに明け渡し、5・5ゲーム差と逆に離されてしまった。
青木はオールスターゲーム直前にけがから復帰。サヨナラ適時打や今季1号となるメジャー初の満塁本塁打を放つなど、チームに勢いをつけ、リードオフマンが戻ったチームは後半戦16勝7敗と好調、8月11日にタイガースから首位を奪還した。
地区制覇を争うタイガースは、3年連続で地区優勝しており、7月末にはレイズから好投手・プライスを獲得して、バーランダー、シャーザーと、ここ3年のサイ・ヤング賞投手が先発陣に顔を並べる。打線も2年連続でア・リーグのMVPに輝いているカブレーラが引っ張り、投打ともに強力。
ロイヤルズがタイガースとの優勝争いを制するために、気になる数字がひとつある。それは四球の数が両リーグで最少なことだ。打線に長打が期待できないチームなだけに、安打以外で塁に出ることが、得点のチャンスを増やすことに直結する。
青木も「長打が欲しい。相手が怖がる打者になりたい。そうなれば四球も増える」と話すように、いかに出塁数を増やせるかが終盤戦の鍵になる。
29年ぶりの地区優勝を狙うスモールベースボールのロイヤルズか、名立たる選手が揃うタイガースか、興味深いア・リーグ中部地区の優勝争いで、青木のプレーに注目が集まる。
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