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.政治  投稿日:2014/10/28

[古森義久]【日本を非難する人権弾圧国家、中国】~日本の国連外交はどうしたのか?~


古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授) 「古森義久の内外透視」

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中国は自国内で大規模な人権弾圧策を実施しながら、国連では人権理事会で日本など他国の人権問題を糾弾し、自国に批判の矛先が向かってくることを巧みに避けている。

こんな中国批判の報告書がアメリカの政府、議会の合同委員会から発表された。日本政府も中国のいま現在の人権弾圧策を非難せずに、逆に70年も前の事実関係さえ不確実な慰安婦問題で中国に非難されたまま、という卑屈な姿勢を変える契機を思わせる報告書だといえる。

アメリカの政府と議会とが合同して中国の社会や人権の諸問題を提起して、米側の対中政策に反映させることを目的とする「中国に関する議会・政府委員会」は今月、2014年の年次報告書を発表した。310ページ以上の同報告書はこの一年間に中国政府が習近平国家主席の下、人権一般から法の統治まで一段と状況を悪化させたと、総括した。

中国当局は共産党への挑戦をすべて許さず、「社会の安定」の名の下に、言論の自由、結社の自由、信仰の自由、少数民族の権利など、全般に弾圧がひどくなった、というのだ。

その報告書でとくに注目されるのは、中国政府による「人権問題に関する国際的な操作」と題する一章だった。中国は世界でも最も人権弾圧の激しい国の一つだが、国連人権理事会の理事国となって、他国の人権問題を審判し、糾弾する立場にもある。自国の人権問題を非難されることを防ぐ巧妙な外交作戦だといえる。

この国連人権理事会は2013年秋、中国を対象とする人権状況の「普遍的定期審査」を実行しようとした。だが中国政府はその審査のための証人や参考人の登場を妨害し、審査自体を骨抜きにしてしまった。アメリカのこの年次報告書は以上のような趣旨を明記していた。

そんな中国政府は同じ国連人権理事会の毎年の普遍的定期審査では、日本に対し「慰安婦問題に関して謝罪し、被害者に補償をせよ」と求めているのだ。自国の現在の人権弾圧をまったく棚上げにして、日本の70年前の人権問題を主要議題として提起し、日本を叩いているのである。日本の国連外交はどうしたのか、と問いたくなる。

日本側も中国の人権問題に関するこんな狡猾な使い分けの実態を日本国民に知らせ、国連の場で中国の人権弾圧を改めて非難すべきである。

 

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