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経済  投稿日:2014/12/11

[遠藤功治] 【分析:円安と自動車産業の関係】その3~国内販売減少でも海外で収益上げる~

車
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遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

自動車は10年サイクルでの展望が重要です。即ち、今日これから開発を始める新規車種があったとすれば、この新車が実際に市場に投入されるのは4-5年後、そしてその投入時点から更に4-5年販売するのが一般的です。つまり、10年先の市場動向、為替も含めたマクロ要因、技術的動向、デザインの流行といった要素を考慮して開発を始める訳です。結果、5-10年後の為替水準が当初想定の水準と根本的に変化したとしても、容易にその生産拠点をAからBに動かすことは難しい、ということが多々起きる訳です。

それも為替が今回のように、比較的短期間で対ドル80円から120円近辺まで、約50%変化したとしても、それで輸出が右から左にすぐ増えるなどということは、現実的にはあり得ません。若干のブレを修正する、と言う範囲に留まる程度、今後の生産の海外移管のスピードを鈍らせる、という効果があるとしても、輸出を大幅に増やすということは、短期的にはまず困難ということになります。

円安のデメリットその2は、素材価格の高騰です。自動車の素材と言えば、その大半が鉄鋼・非鉄金属・樹脂類となります。大半の素材は輸入品です。一時期問題となったハイブリッド車に使われる希土類などのレアアースは言うに及ばず、原油や鉄鉱石、アルミやゴムなど、相当の部分が輸入品です。

当然のこととして、円安により原材料価格の高騰となります。これも6カ月、ないしは3カ月に1度の値段交渉がありますが、原材料価格の高騰分は、原則、自動車メーカーにとって利益の圧迫要因として後々顕在化してきます。また、現在は原油価格が下落しているためあまり影響はありませんが、このまま円安が続けば、国内でのガソリン価格の高騰が予想され、この場合は国内での自動車販売にマイナスの影響が出てくることは当然でしょう。

円安による国内消費全般への影響は、直接的にそのプラス影響をまともに受けるピラミッドのトップと、相対的にそのプラス面での影響度が残る1次、2次下請けまでがプラス、前述のMultiplier effectはここで大半が消滅、階段を下がれば下がるほど、末端に行けば行くほど、円安メリットが届きにくくなる、ないしは殆ど残らない。そしてその一方で、円安によるガソリンなどの価格高騰要因、素材価格高騰という円安デメリット、これが末端であればあるほど直接的に影響する、というジレンマです。

結局、海外の収益性は円安によって直接的にInflateされるが、国内販売は消費の冷え込み等で更に減少する可能性が高くなります。ただ、国内の自動車メーカーの大半にとっては、実はこれはこれでもいいという考え方があります。なぜなら、所詮国内市場は昔から利益の幅が非常に低い、ないしは赤字で、リストラ対象の範囲とも言えるからです。

一方、収益の大半は米国や中国、東南アジアなどの海外であるという現実です。その利潤の高い海外が円安により更にInflateされるならば、殆ど利潤の無い日本国内が低迷したとしても、別に彼らのビジネスモデルには響かないという実情がある訳です。

 

 

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