<官民ともに日本の自動車産業戦略の見直しを>高い国際競争力を持つ日本製EV(電気自動車)を殺すな
Japan In-Depth編集部
日産自動車と三菱自動車が軽自動車をベースに電気自動車(EV)の共同開発・生産を行うと報道されている。当然の流れだろう。EVで先行している2社だが、走行距離が短いというEVの宿命をユーザーに敬遠され、販売が伸び悩んでいるからだ。2社は、共同開発・生産でコスト・ダウンを図る必要に迫られていた。
実は、日産自動車と三菱自動車は軽自動車を既に共同開発している。今年2月には共同開発第2弾となる新型車を発表・発売している(※日産が「デイズルークス」、三菱自が「eKスペース」と名づけて発売)。
そうした中、今後両社が共同開発・生産する軽自動車EVは販売が2016年になるという。これはどう考えても遅すぎる。そもそも三菱自動車のEVは軽のi-MiEV(アイ・ミーブ)だ。何故、今年春に発売した軽自動車にEVをラインアップしなかったのか?
EVの普及が遅れる中、究極のエコカーとされる燃料電池車(FCV)の開発も着々と進んでいる。FCVは水素を燃料とし、CO2を一切排出しない究極のエコカーで、トヨタ自動車は2014年度内の発売をにらむ。
FCVの予想価格は700万円程度、とEVに比べて3倍近く高い上、水素ステーションの整備も今年度全国40か所足らず、と普及への道のりはまだ遠い。
だからこそのEVであり、普及に向け、官民一体となった取り組みが必要なのだ。しかし、日産、三菱2社の共同開発のスピードは遅く、政府の充電ステーション設置の後押しも今一つ弱い。
走行距離と充電インフラの脆弱さ、さらに価格の高さがEV普及のネックである。走行距離については、日本のユーザーの1日走行距離は100キロにも満たない、という事実をより広範囲に知らしめるしかない。
両社のEVはフル充電で、1日200km程度走行できるのだ。しかし、充電インフラと価格の問題は、政府の戦略的支援がないと解決できない。
一部のメーカーを支援することは自由競争の観点から異論もあろうが、高い国際競争力を持つ日本製EVの普及を促すことは結果として我が国に富をもたらす。
いずれエコカーの主戦場はFCVに移行していくだろうが、だからといって現行最先端技術のEVを殺してしまってはせっかく得られる果実をみすみす棄てることになる。官民、どちらも戦略の見直しが必要だ。
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