[遠藤功治]【米・自動車販売好調の行方 1】~サブプライム問題、再燃?~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
(本シリーズは3日連続掲載、7日、8日と続きます。)
2014年の経済は米国の一人勝ちという様相でした。特に後半は、日本・中国・欧州と景気は失速気味、通貨でも米国ドルのみが他通貨に対し強含みで推移、ニューヨークの株式市場もダウが史上初めて18,000ドルを突破し最高値をつけました。米国GDPの約7割を占めると言われる個人消費、その中でも自動車販売が非常に堅調に推移していることが注目されます。
2014年米国の自動車販売台数は1,653万台と前年比6%増加、これは2006年以来8年振りの高水準です。米国では季節調整済年率換算(SAAR)で販売水準を評価しますが、2014年の10-12月はこれが約1,700万台近い高水準での推移となっており、業界関係者の大半は、2015年も前年比3-6%増の1,700万台から1,750万台程度を予想しています。
米国の自動車市場は現在、中国に次いで世界2位の規模。日本車のシェアは約37%で、日本車にとってはドル箱です。トヨタ・ホンダ・日産といった日本の大手自動車メーカーでは、米国の実質的な利益への寄与度は、全体の30-50%程度とも言われます。
現在のような円安局面では、その利益依存度は更に上がる可能性が高いとも言えます。日本の自動車市場が伸び悩み、国内からの利益寄与度もトヨタ以外殆ど無い。このような状況下では、米国市場というのは、日本の大手自動車メーカーにとっては、最も重要な市場であるといっても過言ではありません。
現在の米国市場の活況さ、その主な要因ですが、次の5点が考えられます。その第1は金余り、第2が個人消費マインドの改善、第3がガソリン価格の大幅な下落、第4が平均車齢の高さ、第5が人口の増加、となります。
その第1の点、金余りですが、所謂ローンが組み易い、リースがし易いということです。米国での自動車販売も現金ではなく、圧倒的にファイナンス(ローンやリース)での購入が多い訳ですが、信用度が低い人でも、ローンを組むことが比較的容易であるという現実です。勿論、2007年当時に問題になったサブプライム問題が懸念事項として再燃する可能性があり、実際、米国メーカーを中心に、足元は一部サブプライム的なローンが増加し始めている模様です。
但し、前回のサブプライム問題で大打撃を受けた各自動車メーカーは、その経験に基づいて、金融子会社などを中心に査定を厳格化していることも確かであり、後々このローン残高の質の問題が前回のように急浮上することは無いとは思います。いずれにせよ、この1の点は、米国自動車販売全体、しいては日本車の販売にとっては当面大きなプラス材料と言えます。
(その2に続く。7日、8日と掲載予定です。)
【あわせて読みたい】
[遠藤功治]【全米騒然、日本車メーカーも狙い撃ち】~タカタ製エアバッグリコール問題 その1~
[遠藤功治]【分析:円安と自動車産業の関係】その1~下請けの賃金上昇に繋がるのか?~
<官民ともに日本の自動車産業戦略の見直しを>高い国際競争力を持つ日本製EV(電気自動車)を殺すな
[清谷信一]【円安デメリット警告しなかったマスメディアの罪】その1~円安で儲けたのは一部大企業と投資家、証券会社だけ~
[加藤鉱]<司法を支配する中国共産党による外資企業の摘発が猛威>中国独禁法当局が日本自動車部品メーカーもターゲットに