[宮家邦彦]【仏テロで欧州は団結したのか?】~キリスト教とイスラームの確執、浮き彫りに~
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー(2015年1月12日-18日)
日本では今週末に民主党の代表選挙がある。去年の総選挙で自公与党が大勝したせいか、どうも盛り上がりに欠ける。新年早々フランスでイスラム過激派連続テロが起きるなど今年は波乱含みだ。健全で政権担当能力のある野党の登場を望みたい。
〇欧州・ロシア
11日のテロ追悼大行進で欧州は団結したのか。実際に起きたのは大規模ムスリム移民受け入れに失敗した欧州各国社会の分裂と両極化ではないのか。勿論、直接の原因は欧州での根強い差別によって非キリスト教移民が疎外されたことだろう。
だが、より根源的な原因は紀元前から続く地中海南北の対立だ。事件の本質は、宗教改革を経て人間の理性を優先するようになった欧州と、宗教改革の意味がキリスト教と根本的に異なるイスラームという相容れない両文明の(衝突ではなく)確執だ。
〇アメリカ両大陸
18日から核疑惑をめぐるP5+1とイランの協議がある。米国の新議会は上下両院とも共和党が支配しており、イランとの妥協はより困難だろう。まさかオバマ政権はキューバに次いでイランとも妥協することはないだろうな。一抹の不安を覚える。
〇東アジア・大洋州
14日には香港の行政長官が政策演説を行う。昨年の学生らによる反政府デモは一体何だったのか。北京政府は全く譲歩する姿勢を見せなかったが、行政長官は何を語るのだろう。結局学生デモは持久戦に持ち込まれ挫折してしまったのだろうか。
〇インド亜大陸
週前半に豪州とシンガポールのビジネス代表団が相次いでインドを訪問する。中国だけではないということか。モディ首相の登場は今後世界経済の機関車が中国からインドに移っていくことを象徴しているのかもしれない。
〇中東・アフリカ
安倍首相の中東訪問だが、今回は漸く「中東和平」関連国を訪れる。特に、イスラエルとの関係は対中東、対米関係など政治面だけでなく、ハイテクや安全保障の分野でも極めて重要であり、この点は強調し過ぎることはないだろう。今週はこのくらいにしておこう。
いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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