[清谷信一]【続報】「皆様のNHK」の誠意に疑問②〜外国メディアやフリーランスに下げる頭はないという本音
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
[①|②]
[①から続く]埒が開かないので、筆者は過去接触したNHKの記者の名刺をみて、代表番号に電話をしてみた。ここでもいくら説明をしても電話交換嬢は頑なに広報へつなぐことを拒否した。結局、政治部の鈴木記者の上司という、イトウなる人物に電話を回された。彼は鈴木記者本人も反省しており、自分も謝るからこれで許してくれという。だが、これは随分と傲慢だ。まずイトウ氏は自分の姓名もなのらず、鈴木記者の上司だというがポジションも名乗らかった。それでこの電話で謝っているだからこれで終わりにしろという。随分と上から目線ではないか。
筆者は当初、鈴木記者が真摯に謝って詫び状を書くのであればこの件を不問にするとした。ところが鈴木記者の「詫び状」は自分が如何に正しいかの抗弁ばかりで、「誤解」をあたえのであれば詫びるというものであった。とても自分の非を認めて謝ったものではなかった。であるから筆者は彼の所属と氏名の公表を行ったのだ。
ここに至ってすでに個人レベルの話し合いは終わっている。ことを大きくしたのはNHK側である。だから筆者は鈴木記者が所属するNHKの報道局の見解を広報を通じて、組織としての見解や謝罪を要求しているのだ。イトウ氏が望んでいたのは、この電話で終わらせれば、証拠は残らず、NHKの体面に傷が付かないとことだろう。
筆者は件の小野寺防衛大臣の記者会見での質問で、防衛省・自衛隊は近年書面で返事をくれと言っても口頭、特に携帯電話で説明する。だが、これは説明内容が残らないということだ。大きな組織では書面に残らないということは「存在しなかった」ことになる。だから書面での回答を要求されたら書面で回答すべきではないか、との質問をした。
これはまさにNHKにも当てはまる。その場でイトウ氏に対して謝罪を受け入れたならば、NHKにとってこの問題は「存在しなかった」ことになる。つまりやり得だ。NHK内部の人間の意識は「皆様のNHK」ではなく、「大NHK」なのだろう。「大NHK」は過ちを犯さず、ましてや外国のメディアやフリーランスごときに下げる頭はない、というのが本音ではないだろうか。
鈴木記者の態度は彼個人のものだけではなく、NHKでは普遍的な態度なのではないだろうか。
NHKはよく不祥事が起こって世間を騒がせるが、それはこのようにトラブルや不祥事が合ったときに、すみやかに広報が組織として対応せずに、現場でもみ消しを図っているのではないか。だが、そのようなことはやがて世間の知るところとなる。初動できちんと対応していればボヤ程度で済む話が、大炎上する。これは当事者意識のない、ダメな会社や組織に共通する性質だ。NHKに先のホテルなどの食品偽装や社保庁などの不正隠しを糾弾する資格があるのか、筆者には疑問である。
NHKは他の民放や報道機関と異なって、視聴者からなかば強制的に徴収した受信料で運営されている報道機関である。であれば、尚更他のメディアよりも高いコンプライアンス意識を持ち、実践すべきだと思うが、当のNHKにはそのような意識がないようだ。
筆者はイトウ氏に対して、口頭での謝罪は認めない。広報を通じて報道局、あるいはNHKとしての見解(そして謝る気があるならば謝罪)を文書で出すように要求した。イトウ氏はおって連絡すると言ったが、自らの直通電話も教えずに電話をきった。そしてこの会話から一週間以上経つがNHK側からの回答は未だ無い。
これが「皆様のNHK」の誠意なのだろうか。
[①を読む]
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