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.国際  投稿日:2015/2/13

[Ulala]【ISIL戦闘員を生む、仏の貧困と差別】~移民問題の解決が鍵~


Ulala(ライター・ブロガー)「フランス Ulala の視点」

執筆記事Twitter | Website

英ロンドン大キングス校過激思想研究センター(ICSR)の調査によると、ISILや国際テロ組織アルカイダなどの外国人戦闘員のうち約4千人が西欧出身であり、一番多いのが約1,200人のフランスだそうだ。

フランスのイスラム教徒の多くは移民で、大半が貧困層に属している。格差が大きく社会で差別を受け仕事もない場合も多く、社会に不満を持っている若者も多い。そういった格差を生み出すフランス社会の原因は、いろいろ多岐に渡って存在する。教育もその一つだ。

フランスでは同じ学校に通っていても、成績に大きな差がでてくることが問題になっている。「移民家庭では子供の宿題を見ることができない家庭がある。」「移民家庭では、勉強する意味を理解していない家庭が多い。」と言われており、そのため「宿題を家でしなくても、学校で勉強がすべて終わる教育」を目指して補習授業を設けるなど活動は始まっているものの、まだ十分ではない。

結局、学力に大きな差がでる一番の理由は「フランスの授業時間が少い」ということだ。日本でもゆとり教育の結果から、授業時間が少なくなることは子供の学力低下につながることは明らかだが、フランスの授業時間数は他のヨーロッパと比べても少ない。

日本と比べるとその差は更に大きくなる。フランスと日本の文部省が出している 年間総授業時数を比べてみても、各学年毎に違いはあるが、平均して約100時間(年間)近い差があり、しかも、フランスの公立では先生が病気で休んでも代行の先生がいないことが多いので、更に年間30~40時間は授業が欠けることになるのだ。100~140時間と言えば、約一か月ほどの授業日数の差になるだろう。

授業数が少ないと言う事は、学校では基礎を習うだけで、十分な練習問題をする時間も、応用問題をする時間もない。しかし各単元のテストには普通に応用問題が出される。テストの内容と授業内容を見比べても学校の勉強内容だけでは足りないのは明らかなので、もちろん足りない分は家で勉強して補うのがフランスの普通の勉強スタイルだ。

しかしその場合、本人が勉強のやり方や意味が分かっていればいいが、小・中学生ぐらいでは一人でできないことも多く、必要な知識を補ってくれる人が近くにいる環境、または家庭教師を雇ったり、もっと面倒を見てくれる私立に行ける財力が必要になってくる。だが、移民家庭の場合、環境も財力もないケースが多いため、勉強する意欲があっても何をどうして勉強すればいいのかもわからず落ちこぼれていくことになるのだ。

学力の差は、中学になると一気に広がりその後の進路に大きく関わってくる。成績によって進学できる高校が決められるが、気が付けば成績優秀の学校にはフランス人が多く、悪い学校には移民系が多くなる。成績の良し悪しで決められた進学のはずが、あたかも人種で区別されているかのような有様だ。そのためこれは国の政策云々ではなく「わざと」移民をブルーカラー労働者にしようとしていると不満を募らせる結果にもなる。

それでも幸いにも子供自体が勉強のやり方を理解し、成績もよく、いい高校に進める人ももちろんいる。しかし高等教育を受けることが出来る段階まで高成績を取っていても、ある日越えられない壁にぶち当たる。奨学金の申し込みをしたが、自分より成績が悪いはずのフランス人が通って自分は通らない。

何度入社試験を受けても、面接まで行って落とされる。履歴書に写真を載せないことにしたり、雇用の際に人種による差別を行わない規則も整備されてはいる。それでもまだ現実には人種による差別が残っていると不満を募らせるのだ。

そういった不平等感が積りに積り重なることで「自分が否定され続けている」「疎外感を感じる」ことになり、たどり着くのが「イスラム原理主義」だったり「イスラム過激派」だったりする。

2005年には、差別や失業のあおりを受けた若者達がパリ郊外で暴動事件を起こした。が、しかし、フランスではその事を教訓としていないかのように、何も変わってない。その結果、若者は暴動にとどまらず自分を肯定してくれる何かを求めて続け、外国人戦闘員が生まれて行く結果を導きだしたとも言える。

ISILのようなテロ組織がいることだけが問題ではないのだ。例え一つの組織が壊滅しても、問題の根本を改善しない限り解決はしない。これからも続いていくフランス内部の問題だとも言えるだろう。


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