[宮家邦彦]外交・安保カレンダー(2013年12月2-12月8日)
宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)
今週はトルコのアンカラでこの原稿を書いている。昨日はトビリシにいた。トビリシと聞いてピンと来る方々は相当の国際派だろう。恥ずかしながら、筆者がジョージアを訪れたのは初めて。ジョージアといっても米国南部ではなく、旧ソ連のグルジアだ。
新しい国を訪問する際はいつもワクワクする。できるだけ先入観を持たず、その国の地理と歴史から入るのが筆者のやり方だ。日本外務省の正式呼称はグルジアだが、最近グルジア人はこのロシア語発音を避け、英語読みのジョージアを好むらしい。
何でそうなのか。地図を見れば一目瞭然、ジョージアには「お気の毒」としか言いようがない。北にロシア、南にはトルコとペルシャという隣国を持つ。朝鮮半島やポーランド以外、これ以上地政学的に不幸な場所はちょっと思い付かない。
これら覇権国家群と陸上国境で接する小国の悲哀は実際に来てみないと分からない。四方を海という自然の要塞に囲まれ、歴史的に外敵の侵入を殆ど経験しなかった日本人に理解することは難しいと直感した。やはり日本は平和国家だ。
今週は米国のバイデン副大統領が東アジアを歴訪する。11月23日に中国国防部が「東海防空識別区」設置を発表した直後だけに、日本にとっては良いタイミングとなった。逆に、中国はなぜバイデンが来る直前にあんな発表をわざわざしたのだろうか。
今週筆者が最も気になるのはウクライナとタイでの政治的騒乱だ。タイでは反政府派が「タクシン元首相体制からの脱却」を主張し、タクシンの実妹が率いる現政権を傀儡と批判する。しかし、最大の問題は政府・反政府側とも決定打を欠いていることではないか。
一方、キエフではEUとの連合協定調印見送りを決めたヤヌコビッチ大統領の退陣を求める大規模デモが12月1日から続いている。ロシアとの関係改善と西側寄り政策の間で揺れ動くヤヌコビッチ政権にとっては最大の試練となる。
タイにせよ、ウクライナにせよ、こうした騒動が続くことは両国の政治だけでなく、経済にも多大な影響を及ぼす。このような事態はタイ、ウクライナに止まらず、民主的政治制度と経済発展の両立を図る他の中進国にとっても共通の課題ではなかろうか。
今週も重要なイベントが目白押しだが、これ以上コメントするスペースがない。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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