[西村健]【芸術文化都市の在り方に疑問1】 ~東京都長期ビジョンを読み解く!その19~
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
センス、クリエイティブ、洗練された立振る舞い、知性と感性、エスプリ、、、都会の文化の香りを十分に味わえ、自分磨きができる豊かなシティーライフとは何か。・仕事帰りに歌舞伎を見て、海老蔵の「にらみ」にこころ揺さぶられる。
・壮大なオペラを見て、テノールの歌声、踊り、舞台のかなでるハーモニーに身震いする。
・コンサートやジャズバーでの演奏を自分なりの味わい方で楽しみ、音と余韻に酔いしれる。
・展覧会を梯子して、様々なアーティストのデザインやインスピレーションに刺激を受ける。
・多くの人がひしめく雑踏も気にならないで、カメラで都会の息吹が感じられる1シーンをシャッターで切り取る。
・土日は、⾃らも芸術⽂化の表現者となって、地域の祭りや伝統芸能を継承に貢献し、先祖に思いをはせる。
東京都長期ビジョン139ページにて「20XX 年 東京はこんな街 誰もが芸術文化に親しみ、アーティストとなる都市」に書かれたイメージを脚色するとこのような生活だろう。
しかし、ロスト・ジェネレーションと言われる世代の私は、芸術文化に興味と関心が強いのにもかかわらず、関連業界にいないこと、激務に追われることもあってそうした経験は少ない。
都市戦略3、政策指針8「芸術文化都市を創造し、日本文化の魅力を世界に発信」では、20年までに芸術文化資源の活用と文化施設のネットワーク化を推進することが政策目標として掲げられている。
そのための政策展開として、具体的には、上野地区での芸術文化拠点としての魅力向上、多摩地域においては都市公園の活用や芸術系大学・首都圏の美術館・博物館との連携、地域に根ざした伝統的な郷土芸能から先鋭的な取組までの次代を担う創造性あふれた活動を発掘・支援、世界に通用する若手人材育成などを行っていくそうだ。
熱の入れようには大変期待をしたい。
その一環として、史上最高の文化プログラムの展開としての多彩な人材・文化資源を活用した大規模なリーディングプロジェクトの展開、公共空間や民間施設のほか、人が集まる交差点や地下街等これまでに例のない場所での事業展開、都市自体を劇場とした先進的で他に類を見ない文化プログラムを実施していく。
「史上最高の」文化プログラム、「これまでに例のない」場所での事業展開、「他に類を見ない」文化プログラム・・・こうした形容詞に心躍るのは私だけではないだろう。
しかし、華やかな世界だけが芸術文化とは言えない。地域社会に視点を移してみると、地域の祭りや伝統芸能が継承できているとは言い難い現実もある。
内閣府「文化に関する世論調査」で「鑑賞を除く文化芸術活動の経験」を回答してもらった調査では「地域の芸能や祭りへの参加」と答えた割合が全国で10.1%、東京都区部では4.9%と相対的に低い(参考:トップ画像グラフ)。
文化芸術施策の現状を振り返り、地域社会における文化芸術のあり方や課題解決の検討に力を注いだほうがいいと思うのは私だけだろうか。