[相川梨絵]【バヌアツで、日本が国際埠頭建設支援】~巨大サイクロン被害から復興へ~
相川梨絵(フリーアナウンサー/バヌアツ共和国親善大使)
「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」
バヌアツは被支援国。日本も、これまでに大きな物では病院、空港、ゴミ処理場、水力発電など国に基盤を作る建設、小さな物では、個人のボランティア活動など数えられないほどの支援をしてきました。そして、現在、多目的国際埠頭の建設を円借款事業として行っています。日本が港の建設費用を低金利で貸し、プロジェクト自体はバヌアツ政府が進めるというものです。
バヌアツにおいて、円借款という形は、この港のプロジェクトが初めての事。
ローンなので、バヌアツ政府は資金を日本に返していかなければなりません。
その為に、計画、設計、建設、運営、管理すべてにおいて、自分達の事として真剣に考え、バヌアツに有意義で長く使えるものにするでしょう。バヌアツ側のモチベーションもあがり、かつ、経済成長が認められた証でもあるとてもいい支援の仕方だと、私は考えます。
実は、この借款という支援は、戦後の日本が大いに受けて、その後の目覚ましい経済成長を引き起こす足がかりとなりました。世界銀行からの合計8億6000万ドルの融資(当時の日本円で3200億円、現在の額に換算すると約6兆円)で、東海道新幹線、東名高速道路、黒四ダム、愛知用水の建設など全31プロジェクトがなされました。どれも、日本経済発展の基礎となった重要なインフラ、および基幹産業です。その後、支援国となった日本ですが、完済したのは1990年のことです。この経験から、日本政府は、東アジアのみならず、各地域の発展途上国に対し60年間以上円借款を積極的に行ってきており、各国の安定と発展に貢献しています。
一方、支援の形という観点で、先日、疑問を感じる光景を目にしました。毎週そろばんを教える為に通っている小学校へ、10代の白人の女の子3人グループがやってきました。彼女達は、先生に挨拶する事も無く、いきなり教室へ入って行き、持ってきたポーチを子供達に配ります。全校生徒が多い学校だったので、ポーチは2クラス分しかなく、それがなくなってしまうと、挨拶もなしに帰って行きました。特に子供達と触れあうこともしません。先生に誰?と聞いても「知らない。ツーリストじゃないか。」と。これは、完全に、自己満足で身勝手な支援です。
彼女達は、かわいそうな子供達にプレゼントを与えて良い事をしたわと満足かもしれません。しかし、果たして、子供達は、かわいそうなのでしょうか?
物が無ければ、他の物で代用するというアイディアが私たちよりも豊富かもしれません。また、なぜ、プレゼントをくれるのか?なぜ、一部の人たちだけそれをもらえたのか?子供達は理解ができないでしょう。こんな事が続くと、旅行客を見たら何かもらえるかもと思うようになってしまいます。
同じような例で、サイクロン後の支援においても、家屋を作る資材が必要だろうと勝手に持ってきて、結局サイズが合わずに使えず、未だに放置されている場所もあります。彼らにとって、支援はとてもありがたい事で、それによって、生活が潤うのは事実です。しかし、全てを受け入れていて大丈夫なのかと心配になります。そんな心配をバヌアツ人の一部も感じているようで、サイクロン被害の大きかったタンナ島の村では、外国から支援をいっさい断った村もあったそうです。
バヌアツの魅力は、物やお金でない価値観です。この国にきて、最初の驚きは物乞いがいないという事でした。逆に彼らは、私たちに食べ物や花などを与えてくれます。それまでの私も、前述した女の子たちと同じように発展途上国=貧しいと勝手に思い込んでいたのです。大小どんな支援であれ、彼らと対話し、彼らを知り、彼らの未来を考えた支援をするのが、マナーなのではないでしょうか。私も、肝に命じて、このバヌアツで生活していきたいです。