.社会  投稿日:2014/1/12

[大平雅美]アマチュアの語源「アマートル(愛する)」を体現した「偉大なるアマチュア写真家」植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ

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大平雅美(アナウンサー/大正大学客員准教授)

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通勤途中で見る東京都写真美術館(東京・恵比寿)の写真広告がずっと気になっていた。

gazou322鮮やかな黄色の枠のなかに、戦闘服のような衣服を着てゴーグルを身につけた二人のモノクロ写真。吸い寄せられるように近づいて行くと、『ジャック・アンリ・ラルティーグ<ビビとマミー、オンフルール>1922年6月』とあった。

間近で見た瞬間、私は勝手に想像して嬉しくなった。これは宮崎駿監督作品『紅の豚』のポルコではないか!(ポルコとその母のようにも見える)私のなかで写真が軽やかに動き出した。

太陽のような黄色い広告に導かれ会場へ入ると温かい空気に満ちていた。フランス、パリ郊外の裕福な家庭に生まれたラルティーグ(1894-1986)と、山陰、鳥取で育った日本を代表する写真家のひとり、植田正治(1913-2000)は、地理的にも文化的にも写真の表現方法も距離がある。しかし、二人の偉大な写真家の作品は、混在して展示されているが違和感はない。なぜなら「偉大なるアマチュア写真家」として生涯アマチュア精神を貫いた二人には共通性があるから。

“写真であそぶ”。

二人にとって写真は遊び道具であり、写真を撮ることが遊びであった。したがって身近にいる家族や自分自身がモデルになったが、特にラルティーグの写真は日常の瞬間を捉えて、どれも屈託なく生き生きとして、そこにいる自然さに満ちている。「今、ここにいる日常」が見る者の心に伝わってくる。

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(ジャック・アンリ・ラルティーグ ビビとマミー、オンフルール1922年6月/Photographie J H Lartigue ©Ministère de la Culture – France / AAJHL)

 

また、植田正治は静的でひかえめだが、家族への愛情をそこに感じ取ることができる。「Amateur」(アマチュア)の英語の意味は、「愛する」という意味のラテン語amator(アマートル)が語源であるが、アマチュア精神とはここではまさに自分が愛するものを撮るアマチュア精神に満ちている。

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(植田正治 パパとママとコドモたち(1)1949年)

 

時を同じくスタジオジブリを撮影したドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』(製作:ドワンゴ 脚本・監督:砂田麻美)を観た。今を大事に生きている人たちがここにもいた。ヤクルトを買い、ラジオ体操をし、毎日アトリエのカーテンを開けては閉め、猫と遊び、ジブリの保育園の小さき人たちに目を細める。そこに存在する宮崎駿は圧倒的な存在感だが、王国の主は彼だけではない。「そこにいるすべての人」に、ゆるやかに光が注がれている。

「幸せって何だと思いますか?」

宮崎駿は問わず語りに、「人はひとりひとりが幸せになることが目的で、自分だけが幸せになることではない」と笑った。

“静かな今とゆるやかな絆、そして遊び心”がここにもあった。

今回の写真展には、両者で176点もの作品が展示されている。特にラルティーグの写真は10万枚に及ぶ中から選りすぐりを公開。どれも見ているだけで日常の幸せに包まれている。会場では、他にも『ハウルの動く城』の荒地の魔女や『魔女の宅急便』のジジの面影などを見つけることができるかもしれない。モノクロームのモデルたちは、思い思いの色を得て生き生きと動き出し、見る者に問いかけてくるようだ。

「身近な人と、今を楽しんでる?」

【開催概要】

会期:2013年11月23日(土)~1月26日(日)10:00~18:00

会場:東京都写真美術館(東京、恵比寿ガーデンプレイス内)

入場料:一般 700円/学生 600円/中高生・65歳以上 500円

http://www.syabi.com/   ※間もなく会期が終了しますので、お早目に。

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