2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
国際  投稿日:2016/10/5

象徴天皇は私たちがつくった その3 日本の政治システムは保持 しない

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 古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)

「古森義久の内外透視」

さてチャールズ・ケーディス氏とのインタビューは4時間近くに及んだ。氏は憲法起草の作業をよく覚えていて、こちらの質問に「もう守秘義務はないから」とごく率直に答えてくれた。この一問一答の記録を私は保管し、現在にいたっている。
 
このインタビューでケーディス氏が天皇や天皇制の扱いについて語った部分を以下、紹介していこう。長い会話の流れでの話題がいろいろ変わりながらのやりとりだったから、断片的な引用ともなる。圧縮や省略も避けられない。そしてその区切りの部分で私なりの解説をつけることとする。
*   *   *
 
古森「アメリカ政府が日本の憲法改正について初めて公式に述べた文書が1945年10月16日付の、バーンズ国務長官から日本の米占領軍最高司令部の政治顧問ジョージ・アチソン氏あてに送られた書簡なわけですね。そしてその書簡に基づいて日本の新憲法への指針を書いた例の1946年1月7日付の『SWNCC228指令』という文書が出てくるわけですね」
 
ケーディス「バーンズ国務長官からのその書簡については私は知りません。見たことがありません。しかしSWNCC228については確かに知っていました。国務省、陸軍省、海軍省の調整委員会だったSWNCCというのは、その三省の名称の頭文字を並べて、当時、われわれは『スワンク』と呼んだものです」
 
古森「私がそのSWNCC228を読んだところでは『天皇制は廃止されるように奨励されるか、あるいは民主的なラインに変革されるべきだ』という趣旨が記述されています。この点は実際に制定された憲法との差があるわけですが、そのへんの事情を記憶していますか」
 
ケーディス「SWNCCで『天皇制の廃止』といっているのはあくまで天皇制のシステムであり、天皇という地位、存在をなくしてしまうということでは決してなかった、と思います。当時、アメリカ本国の統合参謀本部(JCS)はマッカーサー元帥に対し、ワシントンからの新たな命令が届くまでは天皇に関して一切、なにもしないように、という指令をすでに出していたのです。そしてその点での新しい命令は実際にきませんでした」
 
古森「では当時のアメリカの方針は天皇制をあくまで存続させる、保持する、ということだったのですか」
 
ケーディス「天皇制の政治システムは保持しないが、天皇そのものは保持する、ということでした。しかし古森さん、いまあなたが読んだSWNCC文書のうちの『天皇制の廃止』の『天皇制』というのは、われわれが当時、『帝国主義的な制度』と呼んでいたものを指すのではないでしょうか。『民主主義的な制度』に対しての『帝国主義的な制度』という意味で、それは廃止されねばならない。しかし天皇そのものをどうこうするということではなかったのです。とくに天皇自身の身柄についてどうこうするという考えはまったくなかった。天皇の地位でさえ、それが政府の権限を含まない限り、アメリカ側としては廃止などということは現実には考えていなかったと思います」
*    *    *
 
以上の一問一答で主題となったSWNCC文書は確かに天皇の扱いに何度も言及していたが、「これまでの天皇制は民主主義や国民の自由意思表明の原則とは整合していない」というような遠回しの記述が多かった。「天皇制の廃止」という表現を使いながらも、直接にその選択肢を求めてはいなかった。「民主的なラインへの変革」でもよいというのだ。だがその「民主的なライン」が具体的になんなのかというところまでは踏み込んでいなかった。要するに曖昧なのである。
 
その4に続く。その1その2。全5回。毎日午後11時にアップ予定。この論文は月刊雑誌WILL2016年11月号からの転載です。)
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この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「危うし!日本の命運」「中・韓『反日ロビー』の実像」「トランプは中国の膨張を許さない!」など多数。

古森義久

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