2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
国際  投稿日:2016/10/31

投票日直前まで続くサプライズにもはや驚きはない アメリカのリーダーどう決まる? その30

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大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

「アメリカ本音通信」

いよいよ大統領選投票日まで一週間となったが、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプ、どちらの候補にとっても「オクトーバー・サプライズ」が止まない。不在者投票が始まっている州もあり、既に2000万人以上の有権者が投票を済ませているにもかかわらず、である。 
 
最新のサプライズは、28日に連邦捜査局(FBI)長官であるジェイムズ・コミーが、クリントン候補のEメール私用サーバについて調査して来た共和党議員に向けて、新たなEメールが見つかったので、追加で調査を行うと通知したことだ。
 
とは言っても、7月の時点で既にFBIは、クリントンのメールを洗いざらい調べた上で、メールがハッキングされた形跡もなければ、外交機密を私用メールで送受信した形跡は見られないこと、起訴する理由は何もないことを報告済みだ。
 
少し混みいった話だが、新たに見つかった一連のメールがどういうもので、どういう経緯があったのかを説明すると以下のようになる。
 
クリントンの右腕として、長く仕えて来たフマ・アブディンという女性スタッフがいる。クリントンが実の娘のように信頼関係を結んでいる。その彼女は2010年に、民主党下院議員だったアンソニー・ウィーナーと知り合い、結婚した。だが、このウィーナー議員、弁舌さわやか、熱血派リベラルのニューヨーク議員として知られていたが、未成年女性に向けて送ろうとした、下半身モッコリの写真を間違えて公表してしまった。
 
言い逃れも通じず、他にも性的なメール(sext : セクストと呼ばれる)を複数の女性に送っていたことも明らかになり、最初は妻のアブディンはウィーナー議員と離婚には至らなかったものの、同じことをなんども繰り返し、結局、下院議員を辞職、ニューヨークの市長選に出馬した際も同じスキャンダルで撤退した。
 
昨年には、横に夫婦の5歳になる息子が寝ているにもかかわらず半裸の写真を女性に送り、アブディンもとうとう離婚訴訟を前提の別居に至っている。全てアブディンがクリントンの選挙運動で忙しく働いている間に起こったことだ。
 
そして今回、FBIが「新たに見つかったメール」とは、未成年女性にわいせつ行為を行なったカドで調査されていたウィーナー元議員のノートパソコンが押収され、その中に、アブディンもこのパソコンを使って、クリントンに私用のメールを送ったことがわかった、それだけのものである。
 
つまり、クリントン自身が送受信した私用サーバのメールとは関係なく、全て調べてもクリントン側から提出されたアブディンとのメール、つまりそのコピーが残っていただけにすぎない可能性が高い。にもかかわらず、FBI長官がわざわざメールのことを投票日直前になって公表したのは、「連邦捜査局員は大統領選挙に影響を与える行為を行なってはならない」と定めるハッチ法に違反するという声もあるが、要するにコミーは、Eメールの件が自分以外のルートから漏れ、それを公表しなかったと糾弾されたくなかったのであろう。
 
もちろん、トランプ陣営はまるでこのニュースを鬼の首を取ったかのように宣伝している。トランプは、以前から自分の遊説の時も、支持者が「Lock her up!(ヒラリーを投獄しろ!)」と叫ぶのを制するようなことはしてこなかったし、対立候補を「CrookedHillary(悪徳ヒラリー)」呼ばわりしてきた。
 
事前調査でもやは勝てる道は閉ざされつつあると報じられて来たトランプ陣営だけに、これまでに何度も思うような結果が出なかった場合は、それを認めない可能性もあると示唆してきた。要するにアメリカの民主主義の伝統を覆す愚行であり、支持者の中には投票不正を見張ると称して投票者を脅そうとしたり、トランプが当選しなかったら暴力を持って革命を起こすと喚く者も出ている始末だ。
 
こうなると後一週間、どうにか無事に終わってくれることだけを望む有権者も多いことだろう。
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この記事を書いた人
大原ケイリテラリーエージェント

ニューヨークを拠点に日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘するリテラリー・エージェント。ニューヨーク大学の学生だったときはタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指すも、今はバイリンガルで親爺ギャグを飛ばすに至る。

大原ケイ

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