.国際  投稿日:2016/11/26

トランプ“強硬派”人事と利益相反 どこに向かう?アメリカ その2

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大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)

「アメリカ本音通信」

次期大統領となる男はニューヨークの目抜き通り、五番街にそびえる金ピカのトランプ・タワーに篭り、内閣に加えるべき人物を選んでいる。ドナルド・トランプは元々政治家ではないので、その道のベテランとのコネはないし、就任前から最低の支持率を記録した男に声をかけられても断る共和党メンバーもいるだろう。選挙戦の間中、彼がありとあらゆる差別発言を吐いても、忠実にかばい続けた人物に、ご褒美のようにポストが与えられている。

国家安全保障問題担当の大統領補佐官に選ばれたマイケル・フリン。アフガニスタンやイラクでの戦争で軍歴は積んだが、引退後の元軍部からの評価は「感情的」「攻撃的」と芳しくない。過去にCIAと衝突してアメリカ国防情報局長の座を追われている。共和党大会では対立候補を「投獄しろ!」と聴衆を煽ったり、カネのためにプーチンと並んで晩餐会に出たりと脇が甘く、イスラーム国に対して徹底抗戦をしないのは失策だと常にオバマ政権を非難してきた男だ。だが、トランプには軍の知識も外交の経験もないので、フリンはただのアドバイザーとしての役割を超えた影響力を持つであろう。

司法長官に指名されるジェフ・セッションズ上院議員。20年もアラバマの議員を務めているが、常に移民に対して厳しい一票を投じてきた。軍拡大好きの超タカ派。国債増加にも大反対なので、国内のインフラ整備に予算を割くと公言したトランプの計画にも反対しかねない。さらに過去の公聴会で選挙妨害や黒人差別問題が浮上して連邦裁判官になり損ねた過去を持つ。承認委員会でまた過去の差別発言が問題になりそうだ。

CIA長官に選ばれたマイク・ポンペオ。カンサスの保守派下院議員。お茶会派の台頭とともに当選したが、イランとの和平条約に反対、グアンタナモのテロリスト容疑者の強制収容所の拡大に大賛成、米国民の傍聴・監視にも積極的だ。そしてクリントン国務長官がリビア大使館襲撃事件に関わっていたと何度も執拗に攻撃し続けてきた。CIA長官も上院の承認が必要なので、ここでも一悶着あるかもしれない。

この他、トランプの大統領選の後半を仕切り、最高戦略責任者となったスティーブ・バノンが首席補佐官になるのでは?というニュースは、いくらなんでも「アルト・ライト」運動(注1)の中心人物を据えるのは世論が許さないとトランプが判断したのだろうか、共和党全国委員長のラインス・プリーバスが起用された。

トランプが自分でもわかると思っている商業などの分野は自分の言うことをおとなしく聞く人物、自分が不得手とするその他の多くの分野には強硬派を登用し、公務を丸投げするための人選が次々に決まっていく。

だが、いちばん大きな問題は、子どもや娘婿たちをブレーンに加えるのかということだ。ホワイトハウス入りするのに、不動産やカジノなどのビジネスはイヴァンカら子どもで「ブラインド・トラスト」(利益相反を防ぐために、どう経営されているのかトランプにわからない組織)を作ると言っているが、日本の首相に会うのにも娘のイヴァンカや娘婿のジャレッド・クシュナーを同伴させては「ブラインド」にならない。

かといって選挙戦の段階から、重要問題の最終判断には常に家族に頼ってきたので、彼らなしでは何も決められない。トランプは納税記録も公開せず、一切の政府機関の経験もなく当選した型破りの大統領だ。子どもたちのこともゴリ押しするだろう。こうして独裁政権となっていく。

先日もマスコミ陣をトランプ・タワーに集め、人選の発表でもするのかと思えば、20分間も「報道がまちがっている(というより自分の思う通りの報道をしない)」と文句を言い続けた。マスコミどころか、ブロードウェイの俳優たちが観劇に訪れた副大統領にお礼を言っても、コメディー番組が茶化してもツイッターでいちゃもんをつけている。

注1)

アルトライト運動(Alt-Right Movement)

“Alternative Right(従来の右とは一線を画した右)”の略で、極右的なイデオロギーを標榜するグループ。白人至上主義、反多様文化、反移民、反ユダヤ主義、白人国家主義などが挙げられる。

(この記事は2016年11月22日に執筆されたものです)

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この記事を書いた人
大原ケイリテラリーエージェント

ニューヨークを拠点に日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘するリテラリー・エージェント。ニューヨーク大学の学生だったときはタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指すも、今はバイリンガルで親爺ギャグを飛ばすに至る。

大原ケイ

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