2017総選挙ファクトチェックプロジェクト
社会  投稿日:2017/1/31

60代も夢中「キノコホテル」とは?(上)

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清谷信一(軍事ジャーナリスト)

キノコホテル」、というガールズバンドをご存知だろうか。全員がマッシュルームカットのヘアスタイル。そしてお揃いのGS(グループサウンズ)風ミリタリールックのミニのワンピースという出で立ち。

音楽的には昭和な香りのするGSやエレキ、サイケといった要素を取り入れ、いつか視たような既聴感を憶える、ありそうでなかった独自な曲でコアなファンを掴んでいる。

最近音楽を聞かなくなった、あるいは最近の音楽はつまらないといった、40〜50代の読者にはぜひ一度聞いて欲しいバンドだ。実はライブには50〜60代と見られるファンも結構多い。昭和なテイストが、彼らがファンになる間口を広げているのだろう。実際筆者も昭和のガールズポップのCDを探しているうちにキノコホテルにたどり着いた。

キノコホテルを率いるのは年齢不詳の謎の美女、マリアンヌ東雲(しののめ)。キノコホテルは「キノコホテル」というホテルで、メンバーはその「従業員」マリアンヌ嬢はその支配人、ということになっている。コンサートやライブは「実演会」、ファンは「胞子」と呼ばれている。そして「実演会」の最後の曲はキノコホテルのテーマ曲、「キノコホテル唱歌」で終わる習しとなっている。

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そのマリアンヌ嬢のキャッチフレーズは「あなたの心の支配人」だ。キノコホテルのコンセプト、作詞作曲、電気オルガンも担当しており、実際にキノコホテルの「支配人」といえる。ドSなキャラクター(自称時々ドジっ子)で、ボンテージファッションやスケバン的なセーラー服姿になることも。 

キノコホテルはインディーズ時代から活動開始から数えて今年で創業(デビュー)10周年、メジャーデビューからでも7年を迎える。キャリア的には中堅どころだ。マリアンヌ東雲本人もライブで「いつまで『ガールズバンド』と言っていられるかしら?」と自虐的なコメントもしているが、今年は大きなコンサートや海外演奏も控えている。「創業10年」を迎えた「謎のバンド」のリーダーにインタビューを試みた。

キノコホテルをご存じなかった方は、インタビュー本編を読んで頂く前に事前に以下の動画をご覧になることをお薦めする。

「おねだりストレンジ・ラヴ」(2016年)

https://www.youtube.com/watch?v=6ZQLeTn8OUk

「キノコホテル唱歌」(2012年実演会)

https://www.youtube.com/watch?v=qbMJN7Di6i0

清谷:キノコホテルはGSやサイケ、エレキとか昭和な音楽に大きな影響を受けています。マリアンヌさんは年齢不詳ということですが、リアルタイムではああいう昭和な音楽は聞いていたはずは無いのに、まるで当時聞いていたかのように、これらの音楽を消化しているように思えます。人間は幼少期に聞いた音楽に強く影響されるかと思います。インタビュアー(54歳)の世代ように当時子どもで、なんとなくでもそういう音楽に親しんできた人間なら自然に馴染んでいるということもあると思うのですが、どうして昭和な音楽にそれだけハマったんですか。

マリアンヌ:さすがにね、同世代ではなくってよ(笑)

その頃は勿論、まだ生まれていないわ。ワタクシの場合は子供時代、少女時代に過去の時代のCDが次々に再発されて、入手しやすくなっていた事がきっかけでしょうか。当時流行っていた音楽に余り興味がなく、レコード屋さんにいって自分の感性に引っかかる面白い音楽を探す中で再発ものの存在は大きかったです。

父や母は勿論リアルタイムでその時代に相応の年齢でしたけども、母は殆どクラシックしか聞かない人間だったので、クラシック以外は聞けない雰囲気がありました。ですから直接的に親からはポピュラー音楽の影響は無かったですね。

子供時代はバイオリンを習っていたんですが、譜面を読むのがとにかく嫌いだったもので、課題曲のCDを買って耳コピするのが日課になっていました。そのためにレコード屋さんに行き始めて、クラシック以外のCDをあれこれ漁るようになって。それがきっかけで父親が懐かしがるようなGSとかの音楽を聞いたりして。

清谷:音楽よりもむしろマンガに影響を受けていたということですが、それも竹宮恵子さんとか、これまた50代以上の人間が好きそうな作品がお好きだそうで。メジャーデビュー前の音源を使ったアルバム、「クラダ・シ・キノコ」の表紙のジャケットとマンガもご自身の作ですが、昭和な少女漫画調ですよね。

マリアンヌ:そうですね。それもまたバイオリン教室の影響で。隣に古書店があって、そこで古き良き昭和の漫画を沢山知りました。小学校から高校の途中まではマンガとか絵ばかり描いていましたね。ミュージシャンだと、その時代に影響を受けたアーティストに憧れて音楽を始めた人たちが多いんだけど、それが無かったですね。いわゆる「ロックの洗礼」的な体験が無い。思春期に自分を形成した要素の大半はマンガや文学だと思っています。

幼少の頃は、親からのいい子であれ、というフラストレーションはそれなりにあったかしら。いい成績をとっても、それが当たり前という「圧」をいつもどこかで感じていて。厳しい家でしたからあまり子供時代には戻りたいと思わない。ある意味グレたわけですね(笑)

清谷:「パタリロ!」の魔夜峰央にも影響を受けたとか。

マリアンヌ:魔夜峰央先生のおかげで人生狂ったようなものよ。魔夜峰央のマンガの画風を真似たりして細密な絵を描いていて、それを見た親から気がふれたかと思われたり(笑)

どちらかと言えば、オタクですよね。でも最近の「ロリ顔、ロリ声、巨乳」みたいなのは生理的に無理。でも昔のオタク文化にはシンパシーを感じていたと思います。もっとも同人誌を作ってたりまではしませんでしたけど。友人に誘われてそういうイベントに行った事はあったかしら。魔夜峰央先生にはいつかジャケットのイラストを描いて頂きたいなと思っているんです。お忙しいでしょうけど。

清谷:大学時代はどんな女子大生だったんですか。

マリアンヌ:いわゆるギャル的な女子大生ノリとは全く縁がないタイプ。合コンとか行ったこと無かったし。服装や髪型は派手で、美大生や服飾学校の生徒に間違われる事が多かったです。でもマインド的にはオタク(笑)ある意味不思議な人だったのかも。オタクの人って基本的に垢抜けていなくてモッサリしているでしょう。少なくとも当時はそうだった。彼ら特有のださいファッションが嫌でしたね。なので自分はいつもオシャレしていたし。オタク特有のイケてないファッションとか、ノーメークとかは許容できなかったわ。

そんなわけで当時、オタクではあったけどオタクの人たちとはツルんではいなかったですね。かといって周りの大学の同級生とも話が合わないわけですよ。好きな映画や音楽を薦めても、「変わってる」とか「なんか不気味」なんて言われてしまう事が多くて。学生らしく飲み会に行ったりもしましたけど、趣味はひとりで楽しんでいましたね。一つのジャンルのグループに入りたくても入れなかった感じですね。

清谷:なにか、コミュニティに入るとアウェイ感があると。

マリアンヌ:そうですね。今はミュージシャンをやらせて頂いていますが、音楽仲間でツルんだりとかもない。そもそも業界内でのキノコホテルの立ち位置もちょっと不思議なところにあるような気はしています。やはり子供の頃から、似たような人たちでツルむのが苦手だったんですね。ひとりで楽しむのが楽しいのかしら。わりと浮いた存在でいることが満更でもない、むしろ心地良いところがありますね。浮くの、嫌いじゃないですね。

清谷:マリアンヌさんには何か中央線的な匂いを感じるんですけど、気のせいですか。

マリアンヌ:それは気のせいかと・・・(笑)

でも学生時代は中野ブロードウェイにいったり、高円寺に古着買いに行ったり、あの辺りをウロウロしていたわねえ・・・。

清谷:声がすごく昭和な歌にマッチしていて、オリジナルの昭和の歌手よりもむしろ昭和な雰囲気があるかと思うのですが、あれは意図的にやっているのですか。

マリアンヌ:一番無理をしない歌い方があれなのだと思います。

清谷:実際に結構昭和な歌[真夜中のエンジェル・ベイビー(平山三紀)、ピーコック・ベイビー(大原麗子)、恋は気分(ポピーズ)、謎の女B(曽我町子)、かえせ! 太陽を(『ゴジラ対ヘドラ』のテーマ、麻里圭子)など]をカバーしていますよね。それがオリジナルよりもオリジナルな感じがします。

マリアンヌ:キノコホテルがやったらこうなる、という部分を強く意識してやっているところがあります。カバー曲だけど元ネタを知らない人が聞いたら、キノコホテルの新曲だと思うような、そんなところは狙っていますよね。人様の曲をやるときにはオリジナリィを出せなければ意味がない。カバーの醍醐味はそこですね。

清谷:昨年の10月に鶯谷でのライブに初めて行ったんですが、ファンが意外でした。お客さんが若い女性ばかりで、男性が少なくって、ぼくが最高齢だったら嫌だぁ〜と思いつつ行ったのですが、自分より年上、しかも男性の方が思いの外いらして安心しました。ファンは若い女性の女の子ばかりかと思っていました(笑)

マリアンヌ:70手前の団塊世代の方とか、家族三世代で観に来られる方もいらっしゃるし、お客様の層は幅が広いですよ。小学生からもたまにファンレターとか頂きます。ただ、実演会(ライブ)を見に来るお客様がウチの客層をそのまま反映しているわけでは無いようです。

実演会はオジ様ばかりで行きにくい、という女性のファンもいますし。そんなわけで、女性限定の実演会もやってきました。CDは聞いているけど、実演会はちょっとハードルが高いという女性向けに今年は久しぶりに何かやりたいですね。

清谷:年配の男性ファンが多いのは昭和なテイストがあるから、敷居が低いのでしょうかね。

マリアンヌ:それもあるのかも知れません。最近のバンドは皆似ていてよく解らないけれど、キノコホテルなら聴ける。という方が案外いらっしゃるみたいで。

清谷:ヒカシューともライブを一緒にやられたこともあるかと思いますが、キノコホテルのロックの世界でのポジションは、80年代のヒカシューのポジションではないかと。実はぼく大学時代にヒカシューの事務所に出入りしていたことがありまして、直接彼らを存じあげているので尚更そう感じます。

マリアンヌ:あら、そうなの。ヒカシューと同列とは恐れ多いですけどね。ワタクシはヒカシューからも大きな影響は受けていますね。初めて聞いた彼らのアルバムは先ほどお話したいわゆる再発もののQ盤CDでした。一聴して、これこそまさに自分が探していたものだ!(笑)と衝撃を受けたのを覚えています。自室に籠ってそういうものばかり聴いていましたから、家族からは変人扱いされていました。

清谷:80年代当時、ヒカシューはニューウェーブのカテゴリーに入れられたり、テクノとよばれたりしていましたが、実はどこにも収まらない。ヒカシューはヒカシューだと思っていたのですが、キノコホテルも同じように、カテゴライズできない、独特な存在感があるバンドだと思います。

マリアンヌ:勿論リアルタイムで80年代のヒカシューは知らないですけど、当時の映像を見たり、ヒカシューのリーダーの巻上(公一)さんからその当時のお話を伺うと、「テクノ御三家」だなんて言葉でくくられて居心地の悪さを感じてらしたみたいで(笑)巻上さんのあの強烈な歌声!誰が聞いても彼だとわかる。今のJポップ界でいないでしょう。ああいう方って。キーボードの井上さんのご子息が、一時期動画の方のカメラマンとしてキノコホテルのお手伝いをしてくれていたこともあって。親子二代でお世話になりましたね。

清谷:巻上さんは元々演劇の出身です。当時ライブのMCで「ぼくたちはいつまでミュージシャンの真似をしているんだろう」みたいなことを仰っていました。マリアンヌさんも元々はミュージシャンになりたかったわけではなかった、というところも共通点かと。

マリアンヌ:そうですね。あの方は自分がミュージシャンだという狭い括りで考えたりしていないですよね。ワタクシはお芝居の経験はありませんけど、自分が何者なのか未だに良く解らない部分もあったりしまして。元々プロとして音楽の道でやっていくだなんていうビジョンは全くなかったですし、それが実際に出来るとも思っていませんでした。

清谷:マリアンヌさんは演劇の素養がある方だと思っていました。キノコホテルがそもそも演劇的な感じだし、曲中の早口のセリフも極めて滑らかに、立て板に水で喋ってらっしゃる。演劇の訓練を受けていないとできないことだと思うのですが。

マリアンヌ:いえいえ、全く演劇の経験なんてないですよ。あんな根気のいる作業はとてもワタクシには出来そうもありません。多分音読が好きだったからでしょうね。昔から小説を読むときに音読とか朗読するのが好きで。小学生のころは学校でよく朗読は褒められました。でも、まったく原稿にないことを喋るのは苦手ですよ。

ナレーションや声の仕事とかはたまにさせて頂いてますけどね。こっそりと(笑)

(下に続く)

 

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この記事を書いた人
清谷信一軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家

日本ペンクラブ会員

日本コスト評価学会会員

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 1962年生。東海大学工学部卒。

軍事関係の専門誌を中心に、総合誌や経済誌、新聞、テレビなどにも寄稿、出演、コメントを行う。

08年まで英防衛専門誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー(Jane’s Defence Weekly) 日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関「Kanwa Information Center 」上級顧問。

軍事を主たるフィールドとし、海外取材活動(欧州、中東、南アフリカなど)を活かした国際的な見地に立った著作活動を行う。内外の具体例に基づいた防衛省・自衛隊批評や提言は元防衛庁長官、石破茂氏にも影響を与え、石破氏が長官時代の防衛庁改革ではその指摘の是正が少なからず実現した(三自衛隊の統合運用や特殊部隊、狙撃部隊の創設、陸自の旅団導入、空自の基地警備、海自の地方隊の縮小など)。

自ら起業して、貿易や小売業を手がけており、起業家の視点からの執筆も多い。またサブカルチャーにも造詣が深い。90年代初頭からアニメやマンガなど日本のサブカルチャーの世界進出をいち早く予見、これを国益の観点から論じた。著書「ル・オタク フランスおたく物語」はこの分野の基礎文献となっている。

専門誌はもちろん、右は「正論」から左は「週刊金曜日」まで幅広い媒体にイデオロギーにとらわれず寄稿。また、日経ビジネスオンラインや朝日新聞のWEBRONZA+などのネット媒体にも寄稿。

〔著作〕

  • 国防の死角(PHP)
  • 専守防衛 日本を支配する幻想(祥伝社新書)
  • 防衛破綻 「ガラパゴス化」する自衛隊装備(中公新書ラクレ)
  • ル・オタク フランスおたく物語(講談社文庫)
  • 自衛隊、そして日本の非常識(河出書房新社)
  • 弱者のための喧嘩術(幻冬舎、アウトロー文庫)
  • こんな自衛隊に誰がした!―戦えない「軍隊」を徹底解剖(廣済堂)
  • 不思議の国の自衛隊―誰がための自衛隊なのか!?(KKベストセラーズ)
  • Le OTAKU―フランスおたく(KKベストセラーズ)

など、多数。

〔共著〕

  • 軍事を知らずして平和を語るな・石破 茂(KKベストセラーズ)
  • すぐわかる国防学 ・林 信吾(角川書店)
  • アメリカの落日―「戦争と正義」の正体・日下 公人(廣済堂)
  • ポスト団塊世代の日本再建計画・林 信吾(中央公論)
  • 世界の戦闘機・攻撃機カタログ・日本兵器研究会(三修社)
  • 現代戦車のテクノロジー ・日本兵器研究会 (三修社)
  • 間違いだらけの自衛隊兵器カタログ・日本兵器研究会(三修社)
  • 達人のロンドン案内 ・林 信吾、宮原 克美、友成 純一(徳間書店)
  • 真・大東亜戦争(全17巻)・林信吾(KKベストセラーズ)
  • 熱砂の旭日旗―パレスチナ挺身作戦(全2巻)・林信吾(経済界)

その他多数。

〔監訳〕

  • ボーイングvsエアバス―旅客機メーカーの栄光と挫折・マシュー・リーン(三修社)
  • SASセキュリティ・ハンドブック・アンドルー ケイン、ネイル ハンソン(原書房)
  • 太平洋大戦争―開戦16年前に書かれた驚異の架空戦記・H.C. バイウォーター(コスミックインターナショナル)

〔ゲーム・シナリオ〕

  • 現代大戦略2001~海外派兵への道~(システムソフト・アルファー)
  • 現代大戦略 2002 ~有事法発動の時~(システムソフト・アルファー)
  • 現代大戦略2003 テロ国家を制圧せよ(システムソフト・アルファー)
  • 現代大戦略 2004 ~日中国境紛争勃発!~(システムソフト・アルファー)
  • 現代大戦略 2005 ~護国の盾・イージス艦隊~(システムソフト・アルファー)

 

清谷信一

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