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.国際  投稿日:2014/2/19

[朴斗鎮]北朝鮮・有名俳優40名が大量粛正に〜張成沢に連動して、受難続く北朝鮮の芸能人


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)|執筆記事

粛清の嵐が吹きすさぶ北朝鮮では、張成沢(チャン・ソンテク)の痕跡を消し去る作業が必死に続けられている。北朝鮮に軍を動かし米韓軍事演習に対抗する余裕などない。

内部からの情報によると、北朝鮮の国家保衛部は12万人を調査対象にピックアップし、張成沢との関係洗い出しに総力を挙げているという。この情報を裏付けるように、有名俳優40人あまりが張成沢の関係者に分類され、咸鏡北道淸津市(ハムギョンブクド・チョンジンシ)の25号政治犯収容所に収監されたと「ラジオ自由アジア」(RFA2月12日付)が報じた。この中には、牡丹峰(モランボン)楽団の中心歌手であったリュ・ジンアなども含まれているらしい。

リュ・ジンアは、モランボン楽団初の功勲俳優であり、金正恩の妻の李雪主(リ・ソルジュ)が歌手の時代に同僚だった女性だ。RFAは張成沢の恋人だったという理由で粛清されたと伝えている。

モランボン楽団といえば、金正恩の肝いりで結成され、ロッキーのテーマ曲をバックにミッキーマウスを登場させて大きな衝撃を与えた楽団だが、昨年にも監督の玄松月が解任され粛清された。日本ではテレビなどでAVビデオ製作がらみで処刑されたと報道されているが、これは韓国メディア報道を鵜呑みにした誤報である。解任の理由は「私が活躍していた頃、李雪主は平凡な歌手だった」と漏らしたことだったという。

中心俳優と監督が粛清されたモランボン楽団は、事実上消滅したに等しい。このモランボン楽団に代わって登場しているのが「功勲国家合唱団」など軍の影響下にある楽団だ。17日に金正恩参席のもと金正日誕生72周年を祝って公演したのもこの楽団だ。北朝鮮では芸能人が権力者の都合で使い捨てされることが多い。これまでも「ポチョンボ楽団」「ワンジェサン楽団」「ウナス管弦楽団」などが次々と姿を消し、そのメンバーはさまざまな悲哀を味わっている。

金正恩肝いりのモランボン楽団までも姿を消した状況の中に、現在の北朝鮮内情を読み解くカギがあるかも知れない。

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【プロフィール】

朴_写真朴斗鎮(パク・トゥジン)コリア国際研究所所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。主な著書に、「北朝鮮 その世襲的個人崇拝思想−キム・イルソンチュチェ思想の歴史と真実」「朝鮮総連 その虚像と実像」など。その他論考多数。

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