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.政治  投稿日:2017/10/15

目を光らせよ、民進「再結集」と「M資金」


        

安倍宏行(Japan In-depth 編集長・ジャーナリスト

「編集長の眼」

【まとめ】

・民進党所属の参議院議員が立憲民主党や民進党出身の無所属議員らと「再結集」を目指している。

・M資金=民進資金、すなわち民進党の政党交付金の行方が不透明だ。

・有権者は耳当たりの良いフレーズに惑わされることなく、各候補者の資質を見極めるべき。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=36713で記事をお読みください。】

 

分かりにくい選挙だ。野党が分裂したおかげで、序盤戦から与党有利となっているのはみなさんご承知の通り。自民単独過半数、自公で3分の2超、の文字が紙面を飾る。

自民が233議席取れば単独過半数、275議席取れば自公で憲法改正の発議に必要な3分の2(310議席)を握ることになる。

こんなことになったのも小池百合子都知事が「希望の党」を立ち上げ、前原誠司民進党代表と組んで民進党の議員が散り散りになったからに他ならない。極めつけは小池氏が衆院選不出馬で総理への道を自ら封印し、「希望の党」に吹く・・・・・風を強制終了させたことだ。民進党内の左派リベラルが立憲民主党を立ち上げ、まんまと民進党議員の純化に成功したかに見えた。

 

民進党ロゴ

画像)民進党ロゴ   出典)民進党HP

 

希望の党ロゴ

画像)希望の党ロゴ  出典)希望の党HP

しかしここにきて有権者“真っ青”の仰天作戦が永田町を駆け巡っている。それが、コードネーム「再結集」。どういうことかというと、民進党の参院議員が、ばらばらになった同党の前衆院議員に再結集を呼びかけているというのだ。

事の発端は、民進党の小川敏夫参院議員会長が、民進党所属参院議員の多くは衆院選後に「希望の党」に合流しない、と明言。さらに、立憲民主党や民進党出身の無所属議員らと再結集を目指す意向を表明したことだ。元々参院民進党は衆院の民進党と一枚岩ではなかった。今回の前原代表の下の分裂劇を冷ややかに見ているのは明白だ。

小川敏夫

写真)小川敏夫参院議員会長  出典)小川敏夫HP

よくよく考えてみれば、リベラル結集はある意味当然ともいえる。もともと共産党との選挙協力を決めた民進党だ。純粋なリベラル勢力が民進党の名の下に再結集しても何の不思議もない。立憲民主党の枝野幸男代表も明確に否定はしていない。仰天する必要はさらさらなかった。

立憲民主党ロゴ

画像)立憲民主党ロゴ  出典)立憲民主党HP

 

枝野

写真)立憲民主党枝野幸男代表  出典)立憲民主党HP

 

もうひとつ。今回の選挙で投票するにあたり、知っておくべきことがある。それが俗に、M資金(民進資金)などと呼ばれていわれるものだ。M資金と聞けば、いわずとしれた旧日本軍の埋蔵金をネタにした悪質な詐欺を思い出す。これまで多くの人がこのたちの悪い詐欺に引っかかって痛い目を見ているにもかかわらず、未だに無くならないのがこれだ。

さて民進資金とは、民進党の政党交付金(注1)のことを指す。2017年度予算で年間87億円の政党交付金が決まっている。(前年度の繰越金は54億円)同党の収支報告書を基に試算すると、現時点で推定約100億円の資金が同党の手元に残っているとみられる。

今回、民進党の前職、元職、新人には政治活動費として1人当たり1500万円が支給された。当然希望の党は民進党の残余資金の還流を期待しているだろう。菅義偉官房長官は(2014年に解散した)みんなの党は解党時に政党交付金を国庫に返還した例を引き合いに出し、民進党から希望の党に金が流れることをけん制したが、民進党は解散したわけではないので、話がややこしい。立憲民主党もこのお金をあてにしているふしがある。

こうした中、金庫番の前原氏が選挙後も代表の座にとどまっているかも不透明で、M資金がどう使われるのか見通せないのが現状だ。これまた有権者がスッキリしない原因の一つとなっている。

人が金と地位に目がくらむのは世の常。とはいえ、政治家はそうあってはならないはずだ。いずれにしても、政治家の離合集散が加速する中、我々有権者だけは、しっかりと候補者の資質を見極めたい。ゆめゆめ、候補者の「見かけ」や「耳に心地よいフレーズ」に“惑わされては”ならない。

 

注1)政党交付金 

政党活動資金として国が支給する交付金。政党助成法により毎年約320億円が政党の国会議員数や国政選挙の得票数に応じて分配される。

(1)国会議員が5人以上いる

(2)前回の衆院選、もしくは前回か前々回の参院選の得票率が2%以上

のどちらかを満たすと政党に認定され、交付金を受け取ることができる。制度に反対の共産党は交付金を受け取っていない。企業・団体献金が政治腐敗の温床だとして1995年に導入されたもので国民1人の負担額250円となっている。

 

参考1)政党助成法

第四条 国は、政党の政治活動の自由を尊重し、政党交付金の交付に当たっては、条件を付し、又はその使途について制限してはならない。

政党は、政党交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに特に留意し、その責任を自覚し、その組織及び運営については民主的かつ公正なものとするとともに、国民の信頼にもとることのないように、政党交付金を適切に使用しなければならない。

 

参考2)平成29年分政党交付金 総務省

自由民主党   17,622,636,000 円

民進党     8,718,970,000 円

公明党     3,135,369,000 円

日本維新の会  1,009,566,000 円

自由党     398,676,000 円

社会民主党   395,368,000 円

日本のこころ  493,098,000 円

 

参考3)平成28年分政党交付金使途等報告の概要

政党交付金

 

トップ画像)民進党前原誠司代表・希望の党小池百合子代表街頭演説 2017年10月13日 東京・大井町駅前 出典)民進党 HP


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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