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.国際,.政治  投稿日:2017/12/6

司法妨害の疑いどこ吹く風トランプ氏


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2017#49 (2017年12月4-10日)

【まとめ】

・フリン元大統領補佐官、FBIへの虚偽供述容疑で起訴、ワシントンの連邦地裁で有罪を認める。

・しかし、トランプ氏は「フリン氏を解任した理由は、彼が副大統領とFBIに嘘をついたからだ。」とツイート。司法妨害の疑いも。

・トランプ氏がエルサレムをイスラエルの首都と認める可能性がありとの報道も。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=37291でお読みください。】

 

 今週もトランプ氏が絶好調だ。先週12月1日にNSC担当だったフリン元大統領補佐官がFBIへの虚偽供述容疑で起訴、ワシントンの連邦地裁で有罪を認めた。この司法取引により、フリン氏は特別検察官の捜査に協力する見込みだ。

今後は政権の中枢にまで捜査が及ぶ可能性がある。当然、ワシントンは大騒ぎだ。

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写真)マイケル・フリン元大統領補佐官
出典)Michael Flynn (@GenFlynn) Twitter

 

 ところが、何を血迷ったのか、トランプ氏は12月2日、「フリン氏を解任した理由は、彼が副大統領とFBIに嘘をついたからだ。彼はその嘘について有罪を認めた。残念なことだ。」などとツイートした。これが事実なら、トランプ氏は今年2月の段階でフリン氏がFBIに嘘をついた事実を知っていたことになる。

 

△12月2日のドナルド・トランプ大統領のTwitter

 

 おいおい!当時トランプ氏はフリン氏解任理由として「副大統領に対する嘘」にしか言及していない。しかも、その頃彼はFBI長官にフリン氏に対する捜査を打ち切るよう働きかけていたとの疑惑がある。更に、事実関係を混乱させたこのツイートは何とトランプ氏ではなく、彼の弁護士が書いたものだそうだ。トランプ政権は一体どうなっているのか。これが司法妨害でなくて何なのか。疑問は尽きない。

 

更に、トランプ氏は近くエルサレムをイスラエルの首都と認める可能性があると報じられた。こうした中で、トランプ氏の支持率は下がるどころか、再び上昇したという。「慣れ」だとすれば、実に恐ろしい。

 

 〇欧州・ロシア

 

 12月4日に英国首相が欧州委員会委員長と会談する。同日、ベルギーの判事がスペインのカタルーニャ「大統領」の引き渡しについて判断する。カタルーニャ自治州の州議会選挙は12月21日に予定されている。世論調査によれば、独立を望む同州住民は24%であるのに対し、スペインに残留する合意を望む人が71%に上ったそうだ。

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写真)2017年10月独立デモ中に対立する警察官と抗議者
出典)catalonia vote ©lagarder81

 

この他にも欧州では重要な会合が目白押しだ。今週の欧州は忙しい。もうすぐクリスマス休暇が始まるからだろうか。一方、12月4-8日に米国務長官がベルギー(EU)、オーストリア、パリを訪問し、5日にはEU諸国外相との会談が予定されている。それにしてもティラーソン氏はいつまで国務長官をやるのだろう。

 

〇東アジア・大洋州 

 

 12月4-8日に米韓空軍による共同演習が行われる。過去最大級というが、北朝鮮の態度は変わらないだろう。5-8日に日EU経済連携協定交渉が開かれる。3-7日にはカナダ首相が訪中する。8日にはモロッコ国王がインドネシアを訪問する。目立たないが、こういったイスラム圏の外交があることも忘れてはならない。

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写真)米韓共同訓練に参加する米国のステルス戦闘機F35
出典)アメリカ空軍

 

〇南北アメリカ

 

 最近の報道にトランプ氏は相当苛立っているそうだ。日本の一部には、トランプ氏が「疑惑の“目くらまし”のため、北に対して軍事オプションを選択する恐れ」があり、「『予防的先制攻撃』に打って出る危険性」があると見る向きもある。だが、推測だけで、あまりいい加減なことは言わない方が良い。

 

 「予防攻撃」は国際法上、正当化が難しい。米国がこうした攻撃で生ずる最悪数十万人もの犠牲者につき主たる責任を負うような事態をマティス、ケリー、マクマスターの3将軍が容認するとは思えない。米国の軍人は、日本の自衛隊と同様、意外に法的な詰めはきっちりやる、というのが筆者の経験則だからだ。

 

〇中東・アフリカ 

 

 12月5-6日にトルコ首相がロシアを訪問し、ロシア首相、大統領と会談する、このところ、ロシアとトルコの関係改善が進んでおり、今回は経済問題を話し合うのだろう。7-8日にはトルコ大統領がギリシャを訪問する。一方。5-6にクウェートがGCC首脳会議を主催するが、カタルとサウジは一体何を話すのか。

 

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 写真)プーチン露大統領とエルドアン トルコ大統領 2015年
出典)ロシア大統領府

 

〇インド亜大陸

 

 特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 

トップ写真)ドナルド・トランプ米大統領
flickr : Gage Skidmore

 


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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