.社会 投稿日:2014/3/11
[為末大]<価値観と不幸せ感>自分を包む価値観に無自覚なほど、幸福感が低くなる
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
人間には誰しも価値観があるけれど、その事に自覚的かどうかでは随分と違うと思う。
「人に感謝される事は幸せである」と「人に感謝される事は幸せであると私は考えている」は随分違う。自分を包む価値観に無自覚なほど、幸福感が低くなる可能性がある。
価値観に無自覚だと、例えば「人生の成功は社会的に認められる事である」という価値観を持った人が、仮に社会的な評価を受けられなかった場合、人生にずっと敗北感がつきまとう。自分がそう決めているという事に気づかず、そうでしかないという世界にいる。
フラストレーションを抱えている人は、価値観が固定化されている場合が多いように思う。成功・失敗がかっちりと定義されていて、「こうなるべきだった」、「こうなるはずだった」という想いが強くある。自らの根強い価値観で自らの人生を裁き続けている。
映画『マトリックス』で、自分のこれまでの人生はケースの中での夢の世界だったと気づく描写がある。生まれた時に既に価値観がそこにあるから、自分がその価値観の中にいる事すら気づかない。井戸の中に生まれれば、そこが全てだと思う。
幸福感はいつも価値観で裁く前にある。自分の価値観で、今の自分とこれまでの自分の人生を責め立てる。自分で自分を蔑んだ時から始まっている。
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