<介護職の離職率は高くない?>離職率が高いと思われがちだが他の業種と変わらない実態
石川和男(NPO法人社会保障経済研究所理事長)
しばしば、介護職は離職率が高いと言われている。だから、介護人材を確保していく上での大きな課題の一つに、離職率をいかにして減らしていくかということがいつも挙げられる。
だが実際には、平成23年度の厚生労働省の調査では、産業計での離職率は14%台、介護職での離職率は16%台となっている。これを見ると、介護職だけが他の業種に比べて特別に高い離職率ということでもなさそうだ。
それはさておき、資料1と資料2を見比べると、介護職の離職理由は一般的な離職理由とそれほど大きな違いはないように思われる。これらの調査では、離職理由の分類に限界があるので違いがわかりにくいというのもあろう。
どのような職種であれ職場であれ、離職率が高いことが問題だとするならば、離職率を下げる工夫は必要だ。 しかし、離職率が高くとも問題ないのであればその必要はない。
介護保険サービスの場合には、介護保険財政との関係を常に念頭に置いておくことが肝要だ。 介護の職種には様々なものがある。定着させるべき職種もあれば、必ずしも定着させなくともよい職種もある。それらを全て含めた介護職全体の離職率を嘆くのではなく、職種に応じた離職率を前提とした制度づくりを選択していくべきだ。
労働需給全体に占める非正規労働比率が4割に達しようとしている昨今、常勤・定着型の種づくりと、そうでない職種づくりの二兎を追っていく必要がある。労働市場実態に合わせた職場環境を創っていくことが、労働需給の安定に繋がる。
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