[大橋マキ]ソーシャル・ファーミングが地域の介護を支える〜誰もがアクションする当事者として10年、20年先の地元を創造する①
大橋マキ(アロマセラピスト)
空の広いところがいい。そんなシンプルな思いから逗子葉山に越して6年になります。週に4日ほど横須賀線で都内に通って仕事をしていますが、都内での稼働時間は往復2時間半の移動を差し引いた4時間ほど。でも、人は、便利になればなるほど、忙しくなってしまうもの。「移動」という、いい意味での強制力のお陰でスイッチオン・オフがしやすく、いつでも海に会える暮らしが気に入っています。
海があり山があり、時間がゆっくりと流れる地元では、ライフスタイルの価値観を共有する仲間が自ずと増え、気がつけば、年齢や性別を越えた地元でのプロジェクトが増えています。プロジェクトといっても、都会のスピーディなビジネスとはまったく別物で、お互いに無理ない範囲で、得意分野を持ち出しあって、地元を育てる活動です。
逗子葉山は、そのコンパクトな町のサイズ感からか、住民が町づくりに積極的です。たぶん、大人たちにとっても海山が現役の遊び場だからこそ、地元愛の強い、遊び心いっぱいのプロジェクトが次々と生まれるのでしょう。そんな大人をみて、子どもたちも育っています。
私が関わっているプロジェクトの一つに、葉山のソーシャル・ファーミング(編集部註:社会的農業)があります。3年間の構想を経て、2013年3月からスタートしました。アロマセラピストとして6年間、都内病院や在宅介護の現場で高齢者へのアロマトリートメントを行い、タッチングや香りのもたらす影響力や可能性を感じながらも、一方で、セラピストとクライアントという一対一の関係の向こう側、クライアントが日常に戻ってからが気がかりでした。
私たちは、老いも若きも、肉体的・精神的に可能である限り、家庭や仕事場、あるいは地域で、その人らしい役割を担い、意思決定や判断を重ねていくことで、生きがいを持ち、ひいては心身の健康に繋がっていくのでは、と考えます。
まさにそうした地域活動が心身の健康づくりに役立つという考えで、フィールドワークを続けていらっしゃる慶応義塾大学准教授、秋山美紀さんの著書「コミュニティヘルス」にも、WHOの国際生活機能分類が紹介されています。心身機能や身体構造、生活活動、社会参加などの要素が、互いに関連しあって健康状態をつくっており、心身機能が活動や社会参加に影響を与えるだけでなく、活動や社会参加が制限されることで心身機能が低下することもあるという双方向性が示されている、と。
(②に続く)
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