[染矢明日香]子どもへの性教育、第一歩を踏み出すタイミングは?
染矢明日香(NPO法人ピルコン・理事長)
先日、“子どもの性とどう向き合うか”というテーマの某番組が各方面で話題になりましたが、皆さんは子どもに必要な性教育について、どう考えますか?
番組でも取り上げられた、日本の子どもの性の現状はと言うと、
- 性経験のある人の割合は、女子高校生は4人に1人、男子高校生は7人に1人、女子中学生で20人に1人、男子中学生で25人に1人(2011年日本性教育協会調査報告より)
- 日本の10代の人工妊娠中絶は一日およそ57件。(2012年厚生労働省統計より)
- 高校生で性経験があるおよそ10人に1人が性感染症(国立保健医療科学院調査より)
データからも、お子さんも持つ人なら対岸の火事ではないという状況が分かります。 インターネットや街のコンビニ、広告、漫画でポルノ情報があふれる中で、日本の学校における性教育は十分とは言えません。そんな今、子どもを守るために重要となるのが家庭での性教育ですが、始めるのに最適なタイミングとはいつなのでしょうか?
アンケート調査(注1)によると、性教育を始めるべきタイミングとして、社会人男性の25.1%が13歳くらいと回答。12歳くらい、10歳くらいと続きます。性的関心を持ち始める思春期が性教育の始めるべき時期、と思う人が多いようですね。
一方で、多くの性教育の専門書籍では、「家庭での性教育は幼児期からが理想的」とするものが多いのは知っていますか? たとえば、カナダや日本で性教育の講演活動を行うメグ・ヒックリングさん著『メグさんの女の子・男の子からだBOOK』では、
“親というのはどうしても、「うちの子は性の話をするにはまだ小さすぎる」と思ってしまいがちです。実際には、子どもが3〜4歳くらいから話し始めるのがいちばんいいのです。(中略)性交についても、この年齢に教えるのが実はいちばん簡単なのです。”
性教育評論家の高柳美知子さん著『ママ、パパ、教えて!―パパにはオッパイはないの?赤ちゃんはどこからくるの?』では、
“からだや性についてのヘンな先入観をもってしまう前に、できるだけきちんと答えてあげると、子どもは安心します。”
“大脳生理学によれば、8歳くらいまでに、からだや性に対するすこやかな感性やイメージが育っていれば、あとからそれをゆがめるような情報が入ってきても、自分でバランスよく判断できるようになるとも言われています。”
と紹介されています。
もちろん、幼児期を過ぎた性教育には意味がないわけではないですし、「性教育」=「セックスが何か、を教えること」だけではありません。男女での性器の違い、性器の洗い方、いつか起こる月経や射精、恋愛のこと、妊娠・出産のこと、性暴力などなど、性にまつわるテーマは多岐に渡ります。
子どもが小さい頃からその疑問を受け止めて答え、子どもの不安を事前に解消していくことで、その後の性教育でドキドキ、オロオロする可能性を減らせる、ということです。 そのためには、丸腰では少し不安ですよね。まずは、性教育関連書籍で親自身も知識を身に着けるところから始めてみてはいかがでしょうか?
(注1)マイナビウーマン「男性に聞いた! しっかりした性教育を受けさせるべきだと思う年齢は?」http://woman.mynavi.jp/article/140311-13/
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【プロフィール】
1985年生まれ。正しい性知識の啓発を行うNPO法人ピルコン理事長。 自身の経験から日本の望まない妊娠・中絶の多さに問題意識を持ち、慶應義塾大学在学中より「避妊啓発団体ピルコン」を立ち上げ、学生向けのセクシャルヘルスセミナーや、イベントへの出展を行う。「無関心層を関心層に」をテーマに若者が参加しやすく興味関心のテーマに沿った正しい性の知識や男女間のコミュニケーションスキルの啓発イベントを数多く開催。医療従事者の監修のもと製作・無料動画サイトに投稿した「パンツを脱ぐ前に知っておきたいコンドームの付け方」動画は2012年10月のアップ以来、100万回以上再生され、NHKやBSスカパー!、日経WOMEN、毎日新聞などのメディアにも数多く出演。