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.社会  投稿日:2023/3/15

【ポケット避妊教室】若者に優しいケアや支援を学ぼう


Japan In-depth編集部(横塚愛実

【まとめ】

·3月10日に最新版「ポケット避妊教室」の紹介と「ユースフレンドリー講座」の体験会が開催された。

•イベントはNPO法人ピルコンが主催。若者が相談しやすい環境や支援づくりについてディスカッションが行われた。

·誰もが歓迎されていると感じる場所を作る事、価値観を押し付けない支援のあり方が求められる。

 

 3月8日は、女性の権利や社会参画を考える「国際女性デー」だ。これを記念し、3月10日に緊急避妊薬啓発キットの2023年度版お披露目イベントが行われた。加えて、若者に優しい支援やケアについて学ぶ「ユースフレンドリー講座」の体験会やワークショップも開催された。

 本イベントはNPO法人ピルコンによって主催され、若者が性について相談しやすい情報提供のあり方や社会づくりについて、参加者同士で交流する場でもあった。

 NPO法人ピルコンとは、若者と共に、誰もが性の健康と権利を実現できる社会を目指す非営利団体。

 今回性をもっとオープンにシリーズの第5弾として、このイベントに参加し、実際のワークショップ内容を取り上げる。

 

【ポケット避妊教室2023年度版】 

 緊急避妊薬や性の健康などについて、実際にサンプルを見たりさわったりして学べる啓発・教材キット「ポケット避妊教室」2023年版が完成した。

「ポケット避妊教室」とは、海外の“Contraceptive Kit(避妊キット)”と呼ばれる、養護教諭や薬剤師、助産師、保健師、看護師など支援者が、相談・支援等の際に使う資材をモデルに作られた教材キットだ。

「性をもっとオープンに」シリーズの第二弾でも、この「ポケット避妊教室」を手掛けた「なんでないのプロジェクト」代表の福田和子氏にインタビューし、このキットについて紹介した。

 今回、箱の強度や耐久性を改善するとともに、キットを傾けても内容物が提示できるように改良され、2023年度版となったという。

 改訂版は、1000キットを作成。全国の学校を中心に、性教育をしている団体などに広めていくつもりだ。

写真)2023年度版のポケット避妊教室

出典)Japan In depth編集部

 また、避妊法、性暴力、性感染症、相談先・情報サイト等を掲載した初版のカード型資材が、各キットに20部の冊子として提供されるという。「カードではなく冊子にして、絵を増やして分かりやすくなるように改善した。現場での使いやすさが一番重要。」と福田氏は語る。

 現在、これらの啓発資材を導入する学校や医療機関等の募集も着々と進んでいる。

 

【ユースフレンドリー講座】

  「医療従事者・若者の相談支援者のためのユースフレンドリーなケア提供のためのオンライン講座(略称:ユースフレンドリー講座)」は、緊張や不安を抱いて相談に来た若者が、「来てよかった!」「また相談したい!」と思える情報の伝え方や、多様な背景を持つ若者との向き合い方について学ぶ講座となっている。

 日本の医療・支援に関わる方や若者へのヒアリング調査により、日本の文脈に合わせ、オンラインで受講可能な講座としてピルコンが開発した。若者の相談支援に関わる人であれば、無料で受講することができる。

 イベントでは、実際の講座で使われているリーフレットなどを見ながら「支援者ができるユースフレンドリーな伝え方とは」「若者がもっと質問しやすい雰囲気を作るためには」などを議題に、グループごとにディスカッションが行われた。

 若者のヘルスケアを支援する活動をしていく上で大切なのは、「自分が歓迎されていると感じられる場所」を作ることだ。多様性を尊重し、様々な背景を持つ相談者がいることを念頭に、想像力を働かせて支援していく必要がある。

 また、「価値観を押し付けない」というのもキーワードだ。大人から若者に一方的に知識を与えるという認識ではなく、若者一人一人に寄り添い、安心してなんでも相談できるような雰囲気づくりをすることが大切だと説明があった。

 学生や医療従事者、大学の教員、性教育に携わっている人など様々な立場のメンバーが集まり、「ユースフレンドリー」についてそれぞれの思いや意見を交換した。

 その中でも、イベントに参加していた薬剤師の田中さんは「薬局が若者の相談の場になるのでは」と提案していた。昔の薬局は、軽医療の場であったという。

 地域の中に根付いた存在であり、田中さんも親に相談できないことは薬剤師の人に相談していた。そのような昔の薬局の姿を復活させることができるのではないか?というわけだ。

 ドラッグストアは全国でも17000店舗以上ある。このような身近な場所は、若者が気軽に悩みを相談できたり性教育を広めていく場所になりうるのではないか。

今までこのシリーズでは、若者の相談しやすい場所としてユースクリニックを新設する取り組みについて紹介してきたが、このように「既存の薬局を若者のヘルスケアについて相談しやすい場所にする」という考え方もあるのだ。

写真)イベントでのピルコン理事長染矢氏と福田氏

出典)Japan In depth編集部

 ピルコン理事長の染矢明日香氏はイベントの最後に「若者が「自分で決めること」が大事。その子のためだと思って代わりに決めてしまっていないか?支援者だからこそ繊細に考える必要がある」と話した。

 ユースフレンドリー講座を受講した人には、修了証がもらえるのだという。現在ピルコンは、受講済みのユースフレンドリーな支援者がいる場所を全国の地図にマッピングし、若者が相談したいときにひとめで「支援者がどこにいるか」を探せるような仕組みを作っている。

 若者が悩みを相談できる場所を確保していくだけでなく、その場でどれだけ若者に寄り添った支援ができるかが非常に重要だ。

トップ写真:実際のワークショップの様子

出典:;Japan In depth編集部




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