[染矢明日香]<避妊に失敗した時の緊急避妊法>夏休み中に増加する望まない妊娠を防ぐために
染矢明日香(NPO法人ピルコン・理事長)
「夏休み明けに、生徒からの妊娠の報告や相談が多いんです」とおっしゃる学校の先生は少なくありません。夏になって開放的な気分になること、長期休みで自由な時間が多いことから、夏の恋が燃え上がった結果、予期しない妊娠につながるケースが後を絶たないようです。
今回は夏休みというシーズンにあわせ、緊急避妊の最新情報を取り上げたいと思います。
日本では、避妊に失敗した後に妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬があります。緊急避妊ピル、アフターピル、モーニングアフターピルとも言いますが、実際に緊急避妊をしたい時にどうしたらいいのか、その流れを見ていきましょう。
[1] 病院を調べる
緊急避妊ピルは、産婦人科・婦人科で処方されるお薬です。避妊の失敗があってから72時間以内、つまり3日以内の服用が効果的とされているので、できるだけ早く病院を見つけましょう。日本家族計画協会HPから全国の緊急避妊ピルを取り扱っている医療機関が検索できます。思春期・FPホットラインという電話の問い合わせ窓口でも紹介してもらうことができます。
[2] 病院に問い合わせる
緊急避妊ピルは病院によって薬や料金が異なるので、事前に確認するのがおすすめです。通常「ノルレボ」という薬が使われ、価格は1万円~1.5万円ほどが多いようです。ちなみに性犯罪にあった場合は無料で処方されます。必要な場合は、予約をしていきましょう。
[3] 病院を受診
予約した病院を受診します。緊急避妊ピルは自費診療で、保険が使えない薬ですが、念のため保険証は持参しましょう。基本的に問診のみで内診は必要ありませんが、本人の希望や、主治医の先生が必要と判断した場合は内診を実施することもあります。ピルの副作用を心配される方も多いかと思いますが、最新の緊急避妊ピルでの吐き気の報告は服用者の10%ほどに抑えられています。もし吐き気が強い場合には車酔いの薬で改善されます。万が一、緊急避妊ピル服用後、2時間以内に吐いてしまった場合には主治医に問い合わせて下さい。
[4] 経過を確認
緊急避妊ピル服用後、一般的には3〜7日後に、通常の生理よりも少量の出血が起きます。避妊に失敗した日から2週間経過した時点で、市販の妊娠検査薬で妊娠が確かめられます。もちろん、検査薬で反応が陽性に出たら婦人科を受診して下さい。パートナーと今後の避妊方法について見直すことも大切です。
緊急避妊ピルは正しく服用すれば8〜9割ほどの確率で避妊に成功すると言われています。逆を言えば、1〜2割は失敗してしまう可能性があり、性感染症の予防効果はないので「ナマでやるための薬」ではなく、あくまで緊急時のお助けアイテムということを心に留めておきましょう。
また、性感染症は種類により潜伏期間や症状が異なりますが、自覚症状があれば医療機関を受診するのはもちろん、自覚症状がなくても性行為から3ヶ月経った時点で保健所や医療機関・検査キットなどでの検査をおすすめします。
[編集部註]本記事は、執筆者の活動を通して得られた情報から、執筆者の責任により執筆されています。執筆者の活動や考え方を知ってもらうため、避妊や性教育に関する知っておくべき参考知識として掲載している記事であり、Japan In-Depth編集部は内容に関する一切の責任を負いかねます。また、Japan In-Depth編集部として緊急避妊薬の服用を推奨するものでも、その効果効能・データを保証するものでもありません。妊娠の可能性がある方は、医師の正しい診断を受けることをお勧めします。
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【執筆者プロフィール:染矢明日香(そめや・あすか)】
1985年生まれ。正しい性知識の啓発を行うNPO法人ピルコン理事長。 自身の経験から日本の望まない妊娠・中絶の多さに問題意識を持ち、慶應義塾大学在学中より「避妊啓発団体ピルコン」を立ち上げ、学生向けのセクシャルヘルスセミナーや、イベントへの出展を行う。
「無関心層を関心層に」をテーマに若者が参加しやすく興味関心のテーマに沿った正しい性の知識や男女間のコミュニケーションスキルの啓発イベントを数多く開催。 医療従事者の監修のもと製作・無料動画サイトに投稿した「パンツを脱ぐ前に知っておきたいコンドームの付け方」動画は2012年10月のアップ以来、100万回以上再生され、NHKやBSスカパー!、日経WOMEN、毎日新聞などのメディアにも数多く出演。