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.社会  投稿日:2014/4/24

[為末大]<生まれか育ちか>いわゆる「社会的成功」はどういう要因で決まるのか?


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

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60年前の新生児取り違え事件のことをテレビで見た時、いろいろと考える事があった。興味深かったのは二つ。一つは兄弟がこの兄は取り違えられた兄じゃないかと疑問を持った点。もう一つは取り違えられてたその兄が現在、家業を継いで社長をやっているという点だ。

育った環境というけれど、それでも何か違いがあったのだろう。本人が会見で、自分の足の指だけ兄弟の指の形と違っていたと話していた。生来の骨格や性格などは、ある程度環境に影響されても残っていて、しかもそれに気づく人もいた事の不思議。

一方で、片方は裕福な家庭、もう片方は生活保護を受けるほど生活が苦しかった家庭。違う環境で育った二人は、片方は大学を出て家業を継ぎ、片方は定時制高校を出てトラック運転手をやっていた。環境が決めるものも大きい。

裕福であり、学歴がいい、などの「いわゆる社会的成功」はどういう要因で決まるのか。持って生まれた能力も影響するだろうけど、育つ環境も影響する。スポーツのような骨格面の影響が大きいものですら、育った環境が勝負強さに影響しているように思える。

私がメダルを取った理由を本当に突き詰めて考えると、どの程度自分の努力のおかげなのかというのがいつも疑わしくなる。たまたま足が速く生まれ、遊びに寛容な家庭で育ち、地域に陸上クラブがあり、いい指導者に巡り会った。その影響は想像しているよりも大きい。

成功は努力で決まると考える社会は、社会保障に厳しくなり、成功は環境で決まると考える社会は、社会保障が手厚くなるのだと思う。そのバランスを昨日は随分考えた。

 

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