[為末大]<子供の夢は周囲の大人が決める>「努力すれば夢は叶う」と「努力すれば叶いそうな夢を持つ」は違う
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
夢はひとそれぞれだし、成功の基準も人によって違う。本質的にはそうなのだけれど、実はここに至るのはなかなかに難しい。なぜなら人は他人から評価されたいし、裕福でいたいし、他者に抜きん出たい。その欲求をコントロールできて初めて自分の成功基準を持てる。
努力が報われるのはある程度本当で、ただそれは努力を始めた当初の成功基準ではないもので報われる。ある目的の為に努力する。頑張って頑張ってそれでも限られた数%が成功する。夢破れた時、実はその道のりでかけがえのない大事なものを得ている事に気づくという意味では報われる。
成功は人それぞれと口では言っても、実際に社会的に評価を得ていたり、裕福であったりする人に、羨ましいという感情を捨てきれない人はある種の所謂社会が決めた成功から逃れられない。これでいいんだと思っていても、隣の芝生が青く見える。
狐の前においしい葡萄がある。その横にさほどおいしくない栗がある。葡萄が食べたいと何度もジャンプしそれでも届かない。横から誰かがジャンプし葡萄を食べた。狐は言った「僕は葡萄じゃなくて栗が食べたかったんだ」。
狐の心は本当の事を知っている。
子供達の夢の多くは、親や周囲の大人によって決まる。私達は成功のものさしの中に生まれてくる。本当に自分の人生を生きるには、この自分がとらわれているものさしを克服できないまでも客観視して、知る事が大事。実はまだ自分で成功を決めてない人もいる。
努力すれば夢は叶う、と努力すれば叶いそうな夢を持つ、は随分違う。知っていて敢えて後者になれた人はいいけれど、後者なのにその事に気づかず前者であるかのように考える事を私は危惧する。
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