<問う事のクオリティー>問う対象を外にではなく、自分に問うことの重要性
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
自由な発想で考えて、答えを出しているようでいて、我々は想像以上に制約がかかっている中で考えているように思う。だから答えや途中の分析よりも、僕はどういう問いを持つかという事の方が重要ではないかと考えてい る。
例えば”なぜそれが問題なのか”という問いと”なぜそれを問題だと思うのか”という問いは随分違う。前者は 対象が問題である理由を考え、後者は対象を問題だと思っている自分について考える。問題と決める価値観がいなければ問題は存在しない。
僕自身は、比較的疑問がおおい子供ではあったと思うけれど、人生において大きく影響されたのはインタビューと何人かの大人。彼らから質問されてそれに答えようとする中で随分様々な事を考えた。そしてどう答えればいいかではなく、どう問えばいいかを学んだ。
問いを突き詰めていくと最後に自分を追いつめる時がある。いろいろとこねくり回しているけれど全ては自分の劣等感、コンプレックスが現れたものだと気づいたりする。特に年齢を重ねていればいるほど、それに耐えられない。だから意識的に問えなくなっている人もいる。
問い方の癖は、自らへの問いにもなり、それが答えになり、人生の方向になっていくのだと思う。黒柳徹子さんの子供の頃の先生の口癖は”恥ずかしくありませんか”だったらしい。昔、競技で負けた事のいい訳をした時言われた言葉だった。今も迷うと自分に問いかける。
“本当に自分の人生はこのままでいいんだろうか”毎朝真摯に自分に問いかければ人生は変わると思う。苦しさに耐えきれなくて人は問いかけるのをやめる。
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