[為末大]<ゴール報酬型の人生>取引で生きる人は「ただ与える事」ができず、全てはリターンを得る為にやる
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
モチベーションには「二つ」あると僕は考えている。
一つはゴールで報酬を受ける為に今頑張るというもの。もう一つは好きな事をやっている今自体が報酬化しているもの。簡単には区切れないけれど、この二つをうまく扱いながら競技をしていた。
ゴール報酬型は、努力は投資で将来のリターンを得るというモデル。努力は辛い苦しい、でも頑張っていればいつかは報われる。確かにそれで報われた場合はドライブしていいかもしれない。ところが報われなかった場合、あんなにやったのに報われないという恨みが残る。
愛される為に愛する人は見てわかる。親切をされている最中も「これだけやったのだから、わかってるわよね」という重圧を感じる。取引の世界を生きている人は「ただ与える事」ができない。全てはリターンを得る為にやる。愛情すらいつか返ってくる為にそそぐ。
努力も愛も注ぎたいなら自由にすればいい。返ってこなくても自分がしたくてした事だと納得できる。取引で生きている人間はこの自己納得感がない。努力も愛も基本的にギャンブルだという事がわかっていない。
取引の努力しかできない人は、つまり主体的な自分の人生がまだ始まっていない。リスクもわかった上で、自分がやりたくてやっている事だという根本の納得が無い。自分が選んだという意識が無い努力ほど、取引になりやすい。
本当の信仰とは報われなくても構わないと悟る事ですとお坊さんがおっしゃっていた。努力も同じように思う。そして努力をしているそれそのものを愛せるかどうかが、皮肉な事に成功と関係してくると私は思う。
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