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.経済  投稿日:2013/10/21

[安倍宏行]「ソーラーエナジー」がもたらすモノ


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Japan In-Depth編集長

安倍宏行(ジャーナリスト)

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太陽光=ソーラー・エナジー。再生可能エネルギー(エナジーを日本語で言うとエネルギー・・・)の代表格である。震災直後は、原子力による電気は全部太陽光でまかなえばいい、と主張する人が結構いた。今もいるだろう。

そんな中、日本経済新聞17日朝刊の経済教室、山口光恒東京大学客員教授の指摘は実に興味深いものだった。曰く、「太陽光買取制、改正を」このタイトルを見て、再生可能エネルギー買取制度は正しい方向に向かっていると思っている人なら、「え?」と感じただろう。なにしろ、鳴り物入りで政府が導入した(民主党政権下であったが)再エネ普及の切り札だと思われていたからだ。しかもまだ去年7月にスタートしたばかりである。一体、山口氏の主張はどのようなものなのか?

固定価格買取制度(Feed In Tariff : FIT)というのがこの制度の名称だ。この制度は、太陽光など再エネで発電した電力を一定期間、一定価格で買い取る事を保証し、再エネの普及を強引に加速させようとするものだ。自由主義経済とは真逆で税金を使い、強引に再エネ発電に新規事業者とカネを呼び込む政策である。実はFITは欧州で先行して実施され、スペインで2007年に高値買取政策により太陽光バブルが発生した事はつとに有名だ。またドイツも2000年からFITを導入し、総発電量に占める再エネの割合は2012年で23%に達したが、電気料金が大幅に値上がりし、問題となっている。これは、FITという制度が、高値買取するコストを電気料金に上乗せして徴収する仕組みだからだ。

自宅に届く「電気料金使用料のお知らせ」を良く見てみよう。請求予定金額の下に内訳がある。その中に「再エネ発電賦課金等」という項目があるだろう。これがそうだ。多くの人が知らないうちにしっかり買取制度の原資を徴収されているのだ。

そして、山口氏は、日本のFIT制度により、補助金総額が20年間(日本のFITの買取機関は20年)で約14兆円!になると試算している。電気料金は税金と同じで、誰もが払わざるを得ないものである。月100円や200円なら我慢できても、もし電気料金が倍になると言われたら誰もが反対するのではないだろうか。つまり再エネ普及と電気料金はトレードオフの関係なのだ。

山口氏は、太陽光買取価格の引き下げなどを提言しているが、それはそれで、再エネ普及のスピードを遅らせることになる。痛し痒しだ。

じゃあ、どうしたらいいんだよ!とツッコミを入れたくなるが、答えはそう簡単ではない。再エネの問題は原子力発電をどうするのか、という問題と切り離して考える事が出来ないからだ。今は原発総てが停止している状況である。火力発電所を目一杯稼働しているため、我が国は年間およそ4兆円もの国富を石油やLNGなどの燃料費に費やしている。産油国は笑いが止まらないだろうが、当然のことながら、原発を再稼働させれば、その出費は減る。何を優先させるかだ。

明確なのは、

  • 原発を止めておいたまま、火力発電で電力需要を賄おうとすれば莫大なお金がかかり、かつCO2排出量が増える。
  • 再エネを早く普及させようとすればするほど電気料金は上がる。

ということだ。

そうした大前提をしっかり踏まえないと、いつまでたっても不毛な議論をグルグルやる羽目に陥る。

2020年いや、2030年・日本のエネルギー・ミックスはどうなっているのだろうか?

節電意識がすっかり薄れてきた今こそ、エネルギーについて、改めて考えてみたい。

 

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