朝日新聞慰安婦誤報問題〜小池百合子議員が初の国際発信〜
古森義久(ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
朝日新聞の慰安婦問題報道での訂正が日本側だけでしか伝えられず、肝心の国際社会への発信がないことをこの連載コラムで書いてきたが、インドの有力新聞にその「朝日新聞の訂正」の事実が明確に掲載された。しかも日本側からの発信である。私の知る限りでは、朝日新聞の大訂正が外国の英語のメディアできちんと伝えられたのは、これが初めてのようだ。この種の対外発信が日本にとっていかに重要であるか、説明の要もないだろう。
インドの有力経済紙『ミント』8月28日付は寄稿ページに「東アジアの歴史戦争を終わらせる」という見出しの論文を掲載した。その冒頭部分には以下のような記述があった。
「1990年代に朝日新聞は元日本軍将兵の吉田清治の『慰安婦』についての証言に基づく一連の記事を掲載することで日本国内と韓国で大騒動を起こした。この『慰安婦』というのは第二次世界大戦中に日本軍によって強制的にセックスの奉仕をすることを強いられたとされる朝鮮女性たちのことだった」
「だが朝日新聞はこの8月に、この吉田という人物の告白はまったく根拠がなかったことを認め、慰安婦についてのこれまでの一連の記事を支えた核心の証拠を取り消した。この取り消しはいま日韓両国にその当初の一連の記事が起こしたと同じような当惑や外交的いがみあいを引き起こしているようだ」
「しかし日韓両国とも歴史の政治的あるいは不注意な乱用を許して相互関係をさらに荒立たせるべきではない時に、この朝日新聞のずさんな報道は最悪のジャーナリズムという以上に、北東アジア地域での外交関係に新たな危険な要素を持ち込んでしまった」
以上のように、この論文は朝日新聞の慰安婦問題報道の今回の取り消しについてはきわめて明確に書いていた。この論文の筆者は衆議院議員の小池百合子氏だった。小池議員は周知のように防衛大臣、環境大臣などを務め、現在は自民党広報委員長のポストにある国際派政治家である。
調べてみると、この小論文は小池氏の個人の資格で「プロジェクト・シンジケート(Project Syndicate)」という国際的な意見発表のジャーナリズム組織を通じて英文で発表されていた。プロジェクト・シンジケートは世界各国のオピニオンリーダーや各界専門家が加わる配信網で、受け手側には合計154カ国約500の新聞と雑誌が加盟している。記事は英語が主体だが、アラビア語、中国語などにも訳されるという。
小池氏はこの論文で日韓両国が慰安婦などの歴史問題で争うことの危険性を指摘し、両国が過去よりも未来をみすえて進むことを提案していた。時宜を得た対外発信の珍しい実例として紹介した次第である。なおこのインドの新聞に掲載された小池論文へのリンクは以下となる。
【あわせて読みたい】
- <97年の増税後の慢性デフレを忘れるな>責任のない官僚の勧める増税こそが財政収支悪化の元凶という現実(田村秀男・産経新聞特別記者/編集委員)
- <日本の巨額援助で中国が軍拡>日本の援助で作られる中国共産党の独裁統治と反日宣伝(古森義久・ジャーナリスト/国際教養大学 客員教授)
- <もう隠しきれない地方議会の実態>議会の実情を一番よく知る議員自身が議会のことを発言しない本当の理由 (水野友貴・千葉県我孫子市議会議員 )
- <日本人の範疇>僕が期待をしているのは東京五輪でハーフや見た目が外国人の方が活躍する事(為末大・スポーツコメンテーター/(株)R.project取締役
- <日本に韓国パク大統領とつきあう覚悟はあるか>海難事故に見るパク大統領の反近代的対応(藤田正美・ジャーナリスト/Japan In-Depth副編集長)