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.国際  投稿日:2014/10/7

[宮家邦彦]【長期化する香港の民主化運動】~市民の過半数は冷ややか。世代間の温度差も~


宮家邦彦(立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(10月6-12日)」

執筆記事プロフィールblogWeb

 

今週も世界の注目は香港とISISのようだ。先週930日にNew York TimesWashington Postが社説で香港の民主化運動を取り上げて以来、デモ参加者の強制排除を行わず、対話による平和的解決を模索するよう北京に求める声が高まっている。デモは予想以上に長期化しつつある、というのが筆者の正直な感想だ。

この問題については英語日本語でそれぞれ論点を既に指摘しているので、ここでは繰り返さない。要するに、日本のメディアの香港民主化運動に関する報道はちょっと及び腰過ぎるのではないか、ということに尽きる。

他にも指摘したいことがある。例えば、世論調査の結果だ。香港で今騒いでいるのは主として若者であり、香港市民の過半数はこうした民主化運動を冷ややかに見ている。少なくともCNN報道にあるような興奮は現場の雰囲気とは違うようだ。

もうひとつは香港内部の世代間の温度差だ。民主化運動を冷ややかに見るのは中高年層、中でも中国の改革開放政策から経済的恩恵を受けたグループだという。これに対し、そのような幸運に恵まれなかった現在の若者が騒ぐのも当然なのだろう。

しかし、そもそも香港の人々は本当の民主主義を知っているのか。確かに香港には一定の言論の自由はあったが、それでは民主主義の伝統など本当にあったのか。大いに疑問である。

英国だって決して誇れたものではない。今の中国に香港民主化を求めるのは良いが、それでは英国が香港を植民地化した際、民主主義で統治でもしたというのか。何のことはない、返還直前に英国が民主選挙を実施しただけのことではないのか。

ISIS関連で最も笑ったのはバイデン副大統領のハーバード大学での発言内容だ。これにはトルコとUAEが強く反発しているらしい。バイデンは「友人であるトルコ首相がISIS戦闘員志願者たちのトルコ通過を認めた」とか、UAEの「財政的支援が結果的にISISに流れた」と述べたそうだ。

一体何が問題なのだろう。シリア問題へのトルコ、カタル、UAEの介入は公然の秘密ではないか。バイデンはそれを不用意にも学生に喋ってしまっただけだ。中東では本当のことを喋る側が常に批判される。本当のことが知られると具合が悪いからだ。

その意味では、トルコもUAEも天に唾する話なのだろうが、そのくらいで引き下がるほど彼らはナイーブではない。問題の根本的解決は相当先になりそうだ。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

http://www.canon-igs.org/blog/security/

 

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