[相川梨絵]【バヌアツゴミ処理場満杯危機】~美しい自然を守るために。先進国のサポートが必要~
相川梨絵(フリーアナウンサー/バヌアツ共和国親善大使)「相川梨絵のバヌアツ・ニュース」
今回は、バヌアツのゴミ事情をご紹介します。首都があるエファテ島には、福岡メソットと呼ばれる低コストで機能的な、他の太平洋諸国のモデルになっているほどすばらしい埋め立て式のゴミ処理場が唯一あります。バヌアツのような小さな島では、焼却炉を作るより埋め立てたほうがコスト面で有効なのだそうです。この埋め立て処理場は、2006年、日本のJICAの支援によって福岡市と同じシステムで作られました。
地中に管を通し、通気性と流水性をよくしたものです。地中の微生物がゴミを分解し、その時に出るガスや水をできるだけ早く排出させることで、衛生的になり、且つ、メタンでなく二酸化炭素が発生するため温室効果ガスの軽減にも繋がります。2年前、初めてこの施設を見学させてもらいました。確かにイメージするゴミ処理場とは違いました。ハエも少なく、臭いもそんなに気になりません。
しかし、今月、再びこの施設を訪問すると、その変化にびっくり。この2年間で埋め立てスペースにはゴミがいっぱいになっています。ここ数年、人口増加や観光地化でゴミの量が急速に増えているそうです。そして、さらに眼を引いたのが、積み上げられたゴミの山から、使えそうなものをピックアップしている人達。近くに住んでいる人達で、缶やビン、金属などは集めて売り、洋服などは、自分たちのものとして再利用しています。彼らは直接的な利益を得、処理場にとってもゴミを分別して持っていってくれる。どちらにとってもプラスなので、放任しているのだそうです。
処理場は、48ヘクタールという広大な敷地。2ヘクタールずつ分割されており、現在エリアⅠ、Ⅱしか使われていません。つまりまだ44ヘクタールも残っています。しかし、最初に使われたエリアⅡは、いっぱいになるまでに7年かかりましたが、今使われているエリアⅠは4~5年で使えなくなりそうとのこと。このままゴミの分別をしなければすぐにこの処理場はいっぱいになってしまうでしょう。
そうなのです。バヌアツはまだ、ゴミの分別がないに等しい状態なのです。一部の村などでは、生ゴミを家畜のえさにしたり自分達で燃やしているのですが、その他大半のゴミは、燃えるゴミも、プラスチックも瓶も缶もすべてこの処理場に集められます。バヌアツへ来た当初は、とても罪悪感がありました。世界中でエコの意識が高まっているなか、こんなことをしていいのだろうかと。
リサイクル会社も一社あるのですが、利用者はまだ一握り。缶、瓶、金属などをキロ単位で買ってくれます。商業施設には、回収車でとりにいくようですが、個人は自ら持って行かなくてはならないので、なかなか浸透していないのが現状です。あとは、大手ガソリンスタンド一社が産業用の排油を回収したり、一部の商業施設やマーケットの生ゴミを、提携農家が肥料や飼料として使っていたりするくらいです。
リサイクルに回っている廃棄物は極わずか。ゴミ処理場にやってくる7割が生ゴミなので、これをすべて以前のように家畜や畑に返せば、どれだけこの国の廃棄物は減るでしょうか。植民地以前、ここの人たちは、自然と共存して生きていました。ゴミはすべて土に返るものばかり。家畜の餌や肥料になり、彼らの村を豊かにしました。
植民地化で、プラスチックや、瓶などがやってきても、彼らは、以前と同じように、ゴミを捨てます。いらないものを、捨てて何でいけないの?という感覚で、豊かな自然を汚しているということがわからないのです。首都ポートヴィラの海の色はとても綺麗です。娘を泳がせたいと思うのですが、砂浜には、割れたガラス片がいっぱい。ビールやジュースの瓶をそのまま捨ててしまった残骸です。非常に残念です。
でも、彼らは悪くないと思います。植民地時代に、きちんとゴミの教育をしなかった先進国の責任です。近代化が進んだ今、バヌアツ人たちは、少しずつ気づき始めました。このままでは、自分達の財産、自然が危ないと。そして、少しずつですが、変わり始めています。サント島では、週に一度、市役所が主体となって町を掃除しています。ポートヴィラでは、黄色い指定のゴミ袋を作りました。
そんな彼らを、先進国の私達が、サポートしていかなければなりません。日本も現在、積極的に支援しています。地球全体で取り組まなければならないゴミ問題。残された、地球の財産「自然」を末永く、未来へ残していけるか、今その分岐点にいると私は思うのです。
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