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.国際  投稿日:2015/1/7

[遠藤功治]【米・自動車販売好調の行方 2】~ガソリン安で日本車人気に翳り?~


遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)

「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」

執筆記事プロフィール

(この記事は6日掲載の「1」の続きです。3回完結、最終回は明日8日掲載です。)

米国自動車市場が好調である第2の要因、当たり前の話ですが、「景気が良い」ということです。

昨年12月に発表となったミシガン大学の消費者信頼感指数は93.6。10月の86.9、11月の88.8から着実に改善しています。低金利下、実質賃金が上昇、失業率が低下、インフレが抑えられ、今後の景気や所得増に対する期待感が膨らみ、消費マインドが改善している訳です。

後述しますが、最近のガソリン価格の大幅な下落や市場最高値を更新た株式市場なども、新車販売には非常に良い影響を与えていることは間違いありません。持ち家のローン支払いや医療・保険を除いた実質消費支出の中で、自動車関係の支出は米国で約20%を占めます。

ちなみに日本は10%強。この自動車関係支出とは、自動車の購買・補修・ガソリン代などですが、自動車関係の支出・消費が堅調ということは、米国GDPの約7割を占める個人消費に多大な影響を与える所以です。ガソリン価格の下落により、今まで平均よりもより永く乗っている車の代替需要、より高い新車への代替、複数車所有への増車、或いは中古車から新車への乗り換えといった行動の変化も顕在化しているハズです。

さて、自動車販売が好調な理由の第3は「ガソリン価格の大幅な下落」です。今年1月4日の段階で、米国のレギュラーガソリン価格の平均値は1ガロン当たり、2ドル18セント、この半年で40%以上下落しています。リーマンショック直後、2008年以来の低水準です。好景気にも拘わらずガソリン価格がここまで下落しているのは、原油価格の大幅な下落やシェールガス革命の影響、ドル高などが要因として考えられますが、永らく1ガロン当たり、3ドル半ばで安定していたことを考えると、直近で1ドル以上価格が下落したという事実は、自動車の購入を考えている消費者にとっては大きな朗報です。

結果的に、最近の自動車販売の傾向として、燃費が比較的良い乗用車ではなく、相対的に悪いとされるピックアップトラックやSUV(Sports Utility Vehicle)の販売が特に好調となっています。こういった車は、歴史的に米国のBIG3が強く、そのブランド力も非常に高いため、米BIG3のシェアが上昇することとなります。

反対に日本車が強いハイブリッド車などの販売は低迷、2014年の米国でのハイブリッド車の販売台数は約45,000台で、前年比0.4%減、全体に占めるシェアは僅か2.8%です。ただそうは言っても、日本車の合計シェアは約37%、米国BIG3は約42%、韓国車は8%、欧州車は10%。日本車の競争力が落ちシェアも弱含みとの声も聞きますが、依然として米国では、日本車人気は顕在です。

(最終回3に続く。8日掲載予定)

 

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