[遠藤功治]【米・自動車販売好調の行方 3(最終回)】~日本車もヒスパニック系住民に大人気~
遠藤功治(アドバンストリサーチジャパン マネージングディレクター)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
好調な米国自動車販売、その第4の要因ですが、「動車の平均使用年齢の高さ」挙げられます。米国では約3億台の自動車が走っていますが、その平均年齢は約11年強と言われており、これは米国の歴史上、最も高い(即ち古い)年齢となります。
日本ではこれが8年程度です。米国で古い車から新しい車への代替需要が堅調であろう所以です。自動車の耐久性が高まり、依然よりも長持ちする、という理由もあるにはありますが、これ以上に2008年のリーマンショック以降、その経済的環境により、米国で車の買い替えが滞ったことが大きく影響しています。
また、米国における中古車市場の大きな存在も、要因の1つです。新車・中古車販売全合計のうち、中古車が占める比率は、日本では約4割ですが、米国では約7割です。つまり、米国では新車販売の規模に対して、相対的に中古車販売の規模が大きい訳です。
その分、当然、車の平均年齢は高くなります。ここ数年の好調な新車販売のお陰で、新車の比率自体はやや上昇していますが、やはりなお、米国では10年どころか、15年、20年以上経った車もまだまだ多い訳です。
新車と10年以上経った車と、何が一番違うかと言えば、品質・装備と燃費性能でしょう。GMがChapter11を申請し、実質的に倒産した2009年より前に生産されたGM車と、その後政府の援助により復活、最近販売されたGM車を比較した場合、その品質の向上と燃費性能の改善は明らかです。
前述のように、ガソリン価格は大幅に下がっている訳ですが、燃費が改善されているのに越したことはありません。品質やデザイン、安全装備やナビ・通信装備などもまた然りです。現状の11年強という平均車齢を考えれば、古い車から新しい車への代替需要は、まだまだ相当に残っていると思われます。
そして第5の要因は「人口の増加」です。米国の総人口は3億人強、かつ毎年約1%前後で増加しています。この人口増加率、中国は0.4%程度、日本は微減です。
米国の自動車普及率はざっと1人に1台、即ち増加した人口分だけ、自動車の保有台数も増える計算です。様々な調査結果がありますが、米国の人口は2040年頃には4億人を突破すると言われています。つまり、今後25年間で1億人の人口が増える、ほぼイコール1億台の自動車が増える、という計算です。
そしてその人口増の中心母体は2つ。1つは“Generation Y”と呼ばれる18歳位から25歳位までの若者人口、ベビーブーマーの子供たちです。もう1つは移民です。現在米国全体の約60%が白人ですが、所謂マイノリティーで最も多いのがヒスパニック系住民で全体の約17%を占めます。
このヒスパニックを中心とした移民の流入が今後も続くものと予想されています。非常に興味深いのは、このヒスパニック系住民の間で歴史的に日本車のシェアが非常に高いという事実です。ヒスパニック系住民の中でのシェアは、1位がトヨタの18%、2位がホンダで13%、3位が日産の11%、4位にようやくシボレーとフォードが共に9%で並んでいます。
将来の人口動態の変化を考える時、人口増加が続く米国市場は引き続き成長市場であり、その中でも特にヒスパニック系住民に強い日本車は、まだまだ米国で伸びる可能性が高い、最も利益寄与が大きい地域が今後も拡大する可能性が高い、日本車にとっては非常に心強い国なのです。
(このシリーズ、終わり)
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