[サンドラ・ヘフェリン]【日本の温泉、タトゥー許可を望む】~東京オリンピックとタトゥー問題 3~
先日笑ってしまったのは『冷奴』の二文字のタトゥー。これを目にした時、「どうして食べ物のタトゥーを肌に刻むのかな?」なんて一瞬思ってしまったのですが、『冷奴』を「僕ってクールな奴!」という意味だと信じてしまったがために彫ってしまったと聞いた時は、納得すると同時に、ごめんなさい、笑ってしまいました。
同じく「冷」(クール)つながりでは、『冷え性』というタトゥーもありました。腕に「冷え性」と彫っていた人を実際に目の前にして筆者は言葉が出ませんでした。ところが本人に「ホラ見てみろ。コレって日本語で『俺って、クール』って意味なんだろ?」と話しかけられてしまい、なんというか、その空気というか誇らしげな雰囲気に負けてしまい、筆者はとうとう最後まで『冷え性』の本当の意味を教えてあげることはできませんでした。
「やっぱり本当の意味を教えてあげればよかったかな」と今でも罪悪感が残っていたりしますが、よく考えると「自分はクール」と信じて止まない人に対して、下手に真実を教えてあげるよりも、引き続き信じさせてあげることが「優しさ」なのかもしれません。少なくとも真実は教えないほうがお互いの平和が保てるのは間違いありません。
タンクトップの、肌の見える部分に「浪人」と刻んでいる人もいました。これはシュールで中々いい味を出している気もします。が、本人が「浪人って職のないサムライと学生って意味だろ」と信じているとなると話は別かもしれません。ちなみに「保護者」というタトゥーもお見掛けしましたが、筆者はこのようなタトゥーを見ると「この人の保護者の顔が見たい!親の顔が見たい!」とお説教じみた気持ちになってしまいます。
逆に「混乱状態」と刻まれた腕を見た時は「そのとおり」だと思ってしまいました。少なくともタトゥーを入れた時、色んな意味である種の混乱状態だったのだと思われます。中には、何の小細工もしていない「そのまま」のタトゥーもあります。たとえば「外人」というタトゥー。こちらに関してはあまりに「そのまま」(ありのまま?)であるため、「もっと捻り(ひねり)のきいたタトゥーはなかったのだろうか?」と考えてしまった筆者です。それに比べると、「主役はだれですか」というタトゥーはなんだか哲学的な雰囲気です。誰かに問いかけている感じが中々いい味を出していると思いますが、皆様はどう思われますでしょうか。
しかし、どうせ入れるならば「五十歩百歩」のような、現実的でかつ自分に対して「活」を入れられそうなものを入れたほうが人生の役に立つのではないかとも思います。近年、日本では「ブラック企業」が問題になっていますから、どうしても日本語のタトゥーを入れたい場合は、「有給休暇」と四文字熟語(?)を入れてみるのも良いかと思います。こういうタトゥーを入れて日本の街を闊歩すれば「日本はもっと有休を増やせ」と暗に社会に訴えかける事もできますし、ある意味社会を変える運動の一環だと説明もつきそうです。そして偶然にもブラック企業の社長さんがこのタトゥーを見てくれたとしたら…反省はしないまでも「ドキッ」としてくれるかもしれません。ブラック企業を牽制する意味でも意義あるタトゥーだといえるでしょう。しかしどうせなら思い切って「ブラック企業は反対です」と入れてみるのが潔いというものです。これぞ、ある意味「身体を張った抗議」だといえるでしょう。
色々と筆者の独断と偏見で「タトゥー」について書いてしまいましたが、本当に皮肉だと思うのは、「日本語の漢字のタトゥーを入れた欧州人」が、それがたとえ、冒頭のようなおかしな意味合いの漢字ではなくても「タトゥーを入れている」ということで「日本で温泉には入れない」可能性が高いことです。「せっかく日本語のタトゥーを身体に刻んだのに、日本の温泉には入れない」なんて本当に皮肉ですね。実はこの発見は多くの欧州人にとっては衝撃的だったりします。「タトゥー」に対する考え方は、それだけ欧米人と日本人の間では「温度差」があるのですね。
個人的には2020年の東京オリンピックまでに、前述のようなおかしな日本語の「勘違いタトゥー」が減ることを祈ると同時に、ニッポンの温泉施設やレジャー施設側にも柔軟さを求めたいところです。2020年までに「日本の全ての温泉がタトゥー可能」となるでしょうか?もしかしたら無理かもしれませんが期待はしたいところです。
※筆者は個人的な理由からタトゥーが好きではないためタトゥーは入れておりません。
(この記事は
【刺青禁止で大混乱?日本の温泉】~東京オリンピックとタトゥー問題 1~
【日本人もビックリ!外国人の爆笑タトゥー】~東京オリンピックとタトゥー問題 2~
の続きです。本シリーズ全3回)