[相川俊英] 【議会リコールに大前進、三重県松阪市】~市長と議会の対立深刻、市民走る~
相川俊英(ジャーナリスト)
「相川俊英の地方取材行脚録」
まさかと仰天している議員がほとんどではないか。市長と議会の抜き差しならぬ対立が続く三重県松阪市で、予想外の事態が起きた。議会リコールを問う住民投票の実現に大きく動き出したのである。執行部提案の否決を重ねる松阪市議会に対し、山中光茂市長は「古い体質が残る今の議会では執行部責任を果たせない」と任期途中での辞任を表明した。この決断に納得できない市民が、6月19日から市議会解散を求める署名集めを始めていた(細かな経緯は5月19日の記事を参照)。市政停滞の責任は市長ではなく、議会にあると判断したからだ。
議会リコールの直接請求は住民が持つ権利のひとつだが、有権者の3分の1以上の署名を集めねばならず、しかも、氏名・住所・生年月日・印までも記載しなければならない。1ヶ月の期間内に規定数の署名を集めるのはきわめて困難で、本請求までたどり着けないケースがほとんどだ。本請求となった場合、議会解散の是非を問う住民投票が実施され、過半数の賛成で議員は全員失職。出直し議員選となる。
署名集めを進めていたのは「市議会改革リコール市民の会」(以下市民の会)で、ごく普通の一般市民が実際に署名を集める受任者となった。大きな組織や団体とは無縁で、住民に寄り添う行政を進める山中市長を評価する人たちが自発的に動き出したものである。山中市政の継続を願ったり、議会を変えなければ、松阪は良くならないといった思いからである。
当初、2000人を目標としていた受任者はみるみる増え、最終的に3500人にのぼった。こうした署名集めに市長が音頭をとったり、裏でコソコソ動いたりといったことはなかった。名古屋市のケースのように市長自らが街頭演説したり、署名集めすることもなかった。
松阪市の議会解散に必要な署名数は約4万5000人分である。署名期間を7月19日に終了し、署名簿を回収中の市民の会は21日、手元に集められた署名数が規定の約4万5000人分を超えたことを明らかにした。24日までに全ての署名を市選挙管理委員会に提出し、審査を受けることになる。
審査期間は20日以内で、名前の重複や虚偽記載や記載漏れなどは署名数から除かれることになる。審査後の署名数が約4万5000人分を超えていれば、7日間の縦覧や異議申し立てなどを経たうえでやっと本請求となる。松阪市で起きている二元の縺れの結末がはたしてどのようになるか、予断は許されない。
*写真:三重県松阪市「市議会改革リコール市民の会」事務所。
撮影: 相川俊英 ©相川俊英