児童虐待死ゼロへの対策を法案に NPO法人シンクキッズ後藤啓二代表
「細川珠生のモーニングトーク」2016年4月9日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(Aya)
毎日のように目にする児童虐待のニュース。子供の虐待や性犯罪をなくすために活動しているNPO法人シンクキッズの後藤啓二代表に話を聞いた。
三月末に、児童虐待の対策を拡充するための児童福祉法改正案が閣議決定した。これについて後藤氏は、「児童福祉法の理念を明確にした。児童虐待の発生予防、虐待されている子供たちの自立支援など幅広いテーマに取り組んでいて評価されている。」と述べる一方、「一番やらなければいけないことは虐待されて殺される子供をできるだけゼロに近づけること。そこにフォーカスした対策が抜けている。」と指摘した。
毎年100名もの子供が虐待によって亡くなっている。中でも、児童相談所が知りながら防げなかったケースは10年で150名。「この原因を分析して対策をとらなければならないが、今回の案にはそれが含まれていない。」と後藤氏は述べた。
後藤氏は、虐待死を防げない原因の1つに、警察、児童相談所、市町村の連携が取れていないことを挙げる。児童虐待が起きたとき、法律上は児童相談所が第一義的に対応すると定められているが、現実には、子供の泣き声に気付いてから警察に110番する人が多い。
警察が現場に駆けつけ、虐待だと思えば児童相談所に通告するというように、実際は児童相談所と警察が両輪で対応している。「問題は、警察が把握した虐待は児童相談所に通告するが、児童相談所から警察には通報されない。児童相談所が知りながら、警察が知らないことが多い。」と後藤氏は述べ、情報共有がなされていないことが大きな問題だと指摘した。
児童相談所が虐待を把握している家に通報があり、警察が行ったが、虐待の事実を児童相談所より共有されていなかったため、夫婦喧嘩だと言われ、子供の体を調べずに帰ってしまったケースもあるという。その後、その虐待を受けていた児童は死亡してしまった。「ここをなんとかしないと同様のことが起こってしまう」と細川氏は述べた。
後藤氏は、「児童相談所と警察と市町村が情報共有し、連携して活動すれば、かなり虐待死は防げると思う。死に至らなくても虐待のエスカレートを防げるかもしれない。」と述べ、法案に入れることの重要性を強調した。
では何故連携が取れないのか。警察庁出身の後藤氏は、その原因が各組織の縦割り意識の強さにあると指摘する。「法律に書かないと、役人は情報共有すらしない。法律が必要だと考えている。」と述べ、今国会で情報共有に関する修正を入れて改正法案を成立させて欲しいという意向を示した。
これまで、後藤氏は厚労省や警察庁に働きかけをしてきたが、なかなか進まなかったという。「役人がやろうとしないことをやるのが政治の役割。政治家の方々にお願いしたい。」と、法案成立へ意欲を見せた。
シンクキッズでは、「子ども虐待死ゼロを目指す法整備」を求める署名運動を行っており、誰でもホームページやFacebookから参加することができる。「どうやったら子供の虐待を防いで命を守れるか、具体的な手段がわからなくても、署名に参加することで法改正につながるので、役に立てたと思う方は多いと思う。是非多くの人に見て欲しい。」と細川氏は述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2016年4月9日放送 の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。