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.経済  投稿日:2016/4/13

「死に至る病」と関西 その2


山口敦産經新聞大阪本社 社会部次長

「Osaka In-depth」

 

■「5大市」でなくなった神戸

大阪、神戸、京都と、関西を代表する三都の中で、今回の国勢調査の結果に一番ショックを受けたのは、神戸市民かもしれない。

平成7年の阪神大震災で減少したものの、その後増え続けていた人口は、今回初めて0.4%減少し、153万7860人に。5.1%増で153万8510人となった福岡市に抜かれ、政令市中5位から6位になり、大正11年以来(当時は東京市も含めた「6大市」)、震災時などを除いて守ってきた「5大市」の座を譲ることになった。

福岡が九州の中心地として進学や就職の受け皿になっているのに対し、神戸市の場合、首都圏だけでなく、大阪など近隣自治体への転出超過も人口減の要因になっているとみられるという。

兵庫県全体でみると、状況はより厳しい。

同県は、関西2府4県では唯一、日本海から瀬戸内海まで本州を縦断する。淡路、播磨、但馬、丹波、摂津の各地域を含み、「五つの顔を持つ」(『県民性』祖父江孝男著)とも言われる関西最大面積の県だ。

しかし、今回、神戸市の中心部以外で人口増となったのは、高級住宅地で知られる芦屋2.4%、大阪への通勤圏として人気がある西宮1.1%、明石市0.9%など一部に限られ、日本海のカニ漁で知られる香美町-8.2%、兵庫県最高峰の氷ノ山がある養父市-8.3%、南あわじ市-5.8%など、山間部や淡路島などではほぼ軒並みに急減。

県全体でも、総人口は553万6989人で、前回から5万1144人減少した。人口減少率は0.92%で、阪神大震災があった7年を上回り、過去2番目に高かった。

 

■目立つ大阪市中心部の人口増

今回初めて人口減少に転じた大阪府で目立ったのは、大阪市中心部の人口増加だ。

大阪市全体では、前回平成22年の国勢調査に比較すると1.0%の増加に止まっているが、中心部の中央区の18.2%をトップに、浪速区12.8%、北区12.0%、西区11.3%と、中心部の6区(北、中央区、西、浪速、福島、天王寺)を中心に12区で増加した。

高層マンションが新住民の受け皿になっているとみられ、日本一高いビル「あべのハルカス」など大型商業施設開業が相次いだ阿倍野区も今回、増加に転じた。

一方、日雇い労働者の街として知られた、あいりん地域があり、高齢化した元労働者が生活保護を受けるケースも多い西成区は、ハルカスに隣接するもののマイナス8.2%。運河に囲まれる沿岸部に位置し、交通の便が比較的悪い大正区が同6.2%と、これに続く減少率になっている。

府全体で見ると、吹田5.3%や島本3.6%、箕面2.7%、茨木1.9%、摂津1.6%、豊中1.3%-など、転勤族などにも人気がある北摂と呼ばれる府北東部での人口増が目立つ。

一方、パナソニックなどの企業城下町として知られる門真市は製造業の海外移転などの影響を受けマイナス5.7%。府南部の泉南地域の高石市同5.2%、府東部の河内長野同4.8%、富田林同4.6%-などと、府東部、南部の多くの自治体で減っている。平成18年に、政令市に移行したばかりの堺市も、0.2%の減少に転じた。

府全体が人口の減少局面を迎えるなか、府北部と、南部・東部との「南北格差」が拡大している。

*トップ画像:高層マンションそばのベンチに設置された老人像©山口敦

「死に至る病」と関西 その3に続く。「死に至る病」と関西 その1の続き。全3回)


この記事を書いた人
山口敦産經新聞大阪本社 社会部次長

平成7年、産経新聞入社、松江支局配属。12年から大阪社会部。高槻通信部、南大阪(動物園)担当、大阪府警捜査一課担当、大阪府庁担当、大阪市役所担当、府警担当サブキャップ、府庁キャップ、京都総局デスクなどを経て現大阪社会部デスク。大教大附属池田小の児童殺傷事件やJR福知山線の脱線事故、地方自治、人権・同和問題取材などを担当。20年、取材班とともに「生活保護が危ない~『最後のセーフティーネット』はいま~」(扶桑社新書)を出版した。

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山口敦

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