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.国際  投稿日:2016/11/13

突破口を求め苦悩する韓国の保守 その2


朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

(この記事は2016年11月7日に入稿したものです。)

2 朴政権に対する対応で選択迫られる保守層

韓国の保守層はいま大きな混乱に陥っている。中堅の中核的支持者の間では今後の対応について侃侃諤諤の議論が行われている。その中身は次の3つに大別される。

1)朴槿恵をどこまで支えるべきか

2)保守劣勢の突破口をどこに求めるか

3)尾ヒレハヒレをつけたデマにどのように対処すべきか

 

1)朴槿恵政権をどこまで支えるべきか

この問題については、あくまで朴大統領を支えるべきだとの意見と、すでに崔順実(チェ・スンシル)氏との関係を認めて国民から見放された朴大統領を擁護していくのは無理があるとの意見に分かれている。朴大統領も4日の談話で「大統領の任期は有限だが大韓民国は永遠に続かなければならない」とした。

現在の状況では、このまま朴大統領を擁護していくのは無理があるとの意見が大勢を占め始めている。その理由としては、この事件があまりにも稚拙であるばかりか朴槿恵大統領の心の問題と結びついているということと、そしてその根が40年もの長きにわたったものであるということなどがあるが、何よりも大統領自身が崔順実氏との関係を一部認めて謝罪していることが決定的だ。

朴大統領は、10月25日の1回目の謝罪記者会見で崔順実氏について「私がつらかったときに助けてくれた」とし、「(2012年末の)大統領選挙の際に主に演説、広報分野で私の選挙運動が国民にどう映っているかについて個人的意見を伝えてもらっていた」と明らかにした。その上で「一部の演説文や広報物も表現などの面で手助けを受けたことがある」と認めた。

また11月4日の談話でも「崔氏が私物化した疑いがある文化支援財団「ミル財団」とスポーツ支援財団「Kスポーツ財団」については、「国家経済と国民の暮らしに役立つとの思いから進めた事業の過程で、特定の個人が利権を確保し、さまざまな違法行為まで犯したことは非常に遺憾であり、惨憺(さんたん)たる思いだ」と語った。

崔順実氏との関係を明らかにし、かつ崔氏が「さまざまな違法行為まで犯した」とまで大統領自身が断定しているのだから、その責任から免れるのは難しい状況だ。

こうした状況で与党の韓国セヌリ党はどうなっているのか?所属の議員40人が10月31日、同党の李貞鉉(イ・ジョンヒョン)代表の辞任と非常対策委員会の立ち上げを要求した。同じ内容の連判状にはより多くの議員が名前を連ねているという。またセヌリ党の金武星(キム・ムソン)前代表は11月7日、国会で緊急会見を開き、朴槿恵大統領の親友、崔順実容疑者が職権乱用などの容疑で逮捕されたことについて、「憲法を破壊して国政を運営した」として、朴大統領に離党を求めた。

現在の混乱は朴大統領と大統領府幹部らの責任が大きいのはもちろんだが、セヌリ党の親朴グループもそれに劣らず大きな責任がある。このグループがこれまでやってきたのは朴槿恵という特定の人物を守り、その見返りを独占するだけの集団に他ならなかった。大統領の意向となれば、それが正しかろうが間違っていようが関係なく、反対する人間に目を付けては「裏切り者」のレッテルを貼り排除してきた。

セヌリ党が国会議員選挙で大敗した際には党執行部まで掌握し、ミル財団やKスポーツ財団の真相解明を妨害するなどしてきたのだ。その結果、最近は与党支持者の間からも「やり過ぎ」といった批判の声が出るほどだった。

セヌリ党の現状について現場の担当者らは「実際は党を支える組織の20-30%はすでに崩壊したとみており、以前からの熱烈な支持者たちさえ政権維持への期待が弱まり、党の求心力は急速に失われている」と述べ、セヌリ党の悲惨な現状を認めた(朝鮮日報日本語版2016/11/07 )

これまで国会議長などを務めた朴寛用(パク・クァンヨン)、キム・ヒョンオ、鄭義和(チョン・ウィファ)氏らセヌリ党の重鎮らは、朴大統領が完全に第二線に退くこと、つまり内政から完全に手を引くことを要求している。(朝鮮日報社説2016/11/01 )。

朴大統領と手を切ることでセヌリ党の生き残りを図ろうというものだ。この方向は中堅保守層の考えともおおむね一致している。

                         

その3に続く。その1。全5回)


この記事を書いた人
朴斗鎮コリア国際研究所 所長

1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。著書に『揺れる北朝鮮 金正恩のゆくえ』(花伝社)、「金正恩ー恐怖と不条理の統治構造ー」(新潮社)など。

朴斗鎮

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