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.国際  投稿日:2016/11/8

数十年に一度の内政地殻変動 米大統領選投票8日


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(11月7日-11月13日)」

今週8日は米大統領選挙の投票日だが、何故か今回の選挙は興奮しない。昨年夏以来、トランプ候補に振り回されてきたためか、どうも気分が高揚しないのだ。そりゃ、そうだろう。トランプが勝てば、どれほど多くの人が落胆することか。その衝撃は予想外だったBREXIT(英国のEU離脱)の比ではなかろう。

一方、ヒラリーが勝っても、状況は変わらない。彼女の勝利は有権者による祝福の結果ではなく、恐らく多くの人にとっては、「トランプ大統領」を阻止するための緊急避難でしかないからだ。この点については今週の産経新聞「World Watch」と週刊新潮のコラムに詳しく書いたので、時間があればお読み頂きたい。

筆者の関心は、大統領選挙の結果以上に、トランプ候補の各州での得票数、各州での知事及び上院・下院議員選挙の結果だ。これら全体を見た上でないと、今回の大統領選挙の結果を正確に分析評価することは難しいからだ。今回は数十年に一度の米国内政地殻変動が起きている可能性があるので要注意だ。

本日、突然NYTから電話インタビューがあった。質問は「今回の大統領選挙を日本はどう見ているか」だったので、筆者はこう答えた。

「米国は国際関与を続けるか、それとも孤立主義的傾向に流れるかの分岐点にいる。勝者が米外交政策コミュニティの主流に近いヒラリーであれば、日本は付き合い方を心得ている。逆にトランプであれば、日本だけでなく、世界中の米国の同盟国に共通する大問題を惹起する。その場合は、日米問題ではなく、米国対同盟国連合の大問題となるだろう。」

「米国民がトランプを選び、トランプ大統領が同盟国を蔑ろにするなら、各同盟国は独自にそれぞれの国益を最大化すべく対応せざるを得なくなる。そのことを米国民は正確に理解する必要がある。今回の選挙は米国の国のあり方を決める選挙となるかもしれない、云々・・・・」

米国民の良識を信じたいところだが、あの英国民ですら、Brexitでは彼らの良識が発揮されなかったではないか。民主主義は短期的に正しい判断を下すことを必ず保証する制度ではない。あくまで、長期的に見て、間違った判断を下す可能性の最小化を保証するだけだ。このことを我々は肝に銘じるべきである。

 

〇欧州・ロシア

6-8日に中国の李克強・国務院総理が訪露しプーチン大統領と会談する。偶然かどうかは知らないが、7日はロシア革命99周年の記念日だ。9-11日には韓国とカザフスタンの高官が経済協力について話し合う。12日にはモルドバで大統領選挙の第二回投票がある。

 

〇東アジア・大洋州

8日には財務大臣を団長とするミャンマーの経済使節団が訪日する。9-10日にはかの暴言王ドゥテルテ比大統領がマレーシアを訪問する。10-12日にはインドのモディ首相が訪日する。日印首脳会談では経済と防衛協力について議論されるそうだが、進展は見られるだろうか。

 

〇中東・アフリカ

7日からモロッコのマラケシュで国連気候変動枠組み条約関連の第22回会合が開かれる。10日からはロシアのメドベージェフ首相がイスラエルとパレスチナを訪問するそうだが、一体何を話すのだろうか。13日にはロシア連邦院(上院)議長がイランを訪問してイラン議会のラリジャニ議長と会談する。これも一体何を話すのか、興味津々だ。

 

○南北アメリカ

8日の米国大統領、上院下院議員、知事選挙以外に特記事項なし。

 

〇インド亜大陸

6日から英国のメイ首相が訪印する。8日にはインドが中国とのテロ対策協力に関する合意に調印する。中印関係でもこうした実務的関係は進んでいるらしい。

今週はこのくらいにしておこう。

いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

 


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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