[安倍宏行]都知事選挙8万8936票の家入一真は本気なのか? 〜優しい革命と新東京計画とは?
Japan In-Depth編集長
安倍宏行(ジャーナリスト)
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2月15日(土)のニコ生『【Japan Indepth】チャンネル』と、16日(日)のインターネットラジオ、『soraxniwa ドロップアウト!by Liverty』に、都知事選に立候補し敗退した、家入一真氏を招いて話を聞いた。家入氏はおよそ89000票余りを得票し、第5位という結果だった。選対は、20万票を目標としていたというから半分も取れなかったわけで、惨敗は惨敗だろう。
しかし、家入氏はめげずに早速「新東京改革」なるものをぶち上げた。今回番組に招いたのは、その本気度を確認するのが大きな目的だった。結論から言おう。「彼は本気だ。」
私が初めて彼と会ったのは2012年の秋ごろだったと思う。2回りも年の違う家入氏はひょうひょうとして掴みどころのない人物という印象だったが、いつも周りに仲間がいて、彼を中心に様々なビジネスを立ち上げていた。又、リバ邸と称して、行き場の無い若者たちの「駆け込み寺」的なシェアハウスを運営しており、その趣旨に賛同した若者がどんどん各地に「リバ邸」を設立し始めていた。それも不思議な影響力だなあ、と思って見ていた。
自分にも影響し始めたのは、2013年の春、家入氏と高木新平氏が、「風評被害に苦しむ東北の人達を元気づけたい!」と言い始め、「解放食堂」なるイベントを始めた時だ。「東北の生産者さんを紹介してくれる人いませんか」なる家入氏のツイートに反応し、被災地取材を通して知り合ったコメ農家さんらをつなげ、第1回目の解放食堂開催に漕ぎ付けた。
それから、この活動は去年、東京で3回、大阪で1回開催された。今年も各地で数回開催されるだろう。これを見ても分かるように家入氏のアイデアは、絶えず「弱者」の視点に立っているがゆえに、それに呼応してボランティア的に人が集まるという「求心力」を持つ。
選挙が終わり、「新東京計画」の柱の一つに、公約として掲げた「#僕らの政策」120のうち、出来るものからどんどん実現していく、というのがある。具体的に何を手始めに取り組むのか聞いた。
家入氏が挙げたのは:
- 高齢者と若者が同居し、お互いに助け合うシェアハウスを作る。
- 高齢者に若者がiPadなどの使い方を教え、インターネットを使えるようにする。
等だ。
デジタルディバイドを解消し、これから増え続ける高齢者と生きがいを感じられない若者たちを結びつけ、人に優しい社会の実現に向けた政策と言える。「ぼくらというのは主権者ということなんです。若者と高齢者を分けるつもりなんでない。インターネットの恩恵を一番受けるのはお年寄りなんです。」彼はこう強調し、こうした活動の総体を「優しい革命」と呼ぶ。
こうした活動は今すぐにでも出来る。行政の動きは遅い。民間で出来る事は民間で、と掛け声は勇ましいが、実際、目に見えるものは少ない。ならば、家入氏のインターネッ党なのか、ボランティアの人達なのか分からないが、まずは行動に移す事だろう。89000人の支持を得たのだから、彼らの意思を実際に形にすることだ。この事に関し、家入氏は真剣にかつ迅速に取り組む考えを表明した。
そして、何より大切なことはこれらの活動を、単なるボランティア活動に終わらせず、ビジネスの形にすることだ。でないと、持続可能にならないからだ。これに関しても氏は、どんどん若者に(そうした活動を事業化し)社長になってもらう、と明言した。期待したい。
さらに「新東京計画」のもう一つの柱、「東京23区の総ての区長選に候補者を立てる」だが、筆者が既に書いたように、市区町村の議会選挙にも候補者を立てるべきだ、という点についても、氏は前向きな態度であった。ただ、既存の議員の中に、氏の考えに近い人がいれば連携も考えているようで、今後は各基礎自治体の議員との公開討論会などを行い、意見交換を通じて「優しい革命」の実現に向けて活動を加速させる考えだ。
簡単ではないだろうが、これまで誰もやろうとしてこなかった氏のこうした取り組みにどれだけの人が共鳴し、参画してくれるのか。大きな注目点である。
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