[山田厚俊]舛添要一東京都知事が誕生〜勝者と敗者の決定的な違いとは何だったのか?
山田厚俊(ジャーナリスト)
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舛添要一東京都知事が誕生した今回の選挙、今後もjapan-indepthでさまざまな角度からの検証がなされることと思うが、ぼくは勝者と敗者の決定的な差を示しておきたい。
舛添氏の勝因は、自民党の裏方の“我慢強さ”に尽きるだろう。実は昨年12月下旬、第1回目の党の世論調査をした時点で、菅義偉官房長官の腹は舛添氏支援で固まっていた。調査結果で舛添氏が突出していたからだ。
ところが、自民党都連は他の候補を模索。石原慎太郎、猪瀬直樹と、都連推薦の候補を15年間も擁立できずにいたことの忸怩たる思いがそうさせた。さらに、「自民党の役割は終わった」との捨てゼリフを吐いて新党に走り、除名処分とした舛添氏を安倍晋三首相も許していなかった。
だから、年明けまで女性候補者の擁立に期待を寄せていた。このまま強引に推し進めれば、必ず綻びが生じて選対はバラバラになる。菅官房長官の“極秘指令”を受けた衆院議員の一人は、都連幹部たちが音を上げ、安倍首相も女性候補を諦めるまで粘り強く待ち続けた。それぞれの担ぎ手の気持ちが一つになるまで待つ。出来るようで、なかなか出来ないことだ。
基礎票があるからといって、それをまとめるのは困難だ。自民党支持層の10%以上が田母神俊雄氏に流れたことでも分かる通り、基礎票イコール得票にはならない。それを知っているからこそ、裏方が一枚岩になることに腐心したことが大きいのだ。
一方、細川護煕氏の陣営は、最初から“空中戦”を想定していた。いわゆる、風頼みの選挙だった。しかし、基礎票を固めていく“地上戦”より、空中戦の方がよりシビアな戦略、シナリオが要求される。ところが、そのシナリオライターが不在。無策で2人の元首相に寄りかかっていたのでは、勝機も逃げていくのは当然だと言える。選挙終盤、選対がようやくまとまったが時すでに遅し。したたかな“選挙のプロ”がいなかったことが悔やまれるだろう。
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